幸せの1歩手前 18

朝の目覚めで触れる柔らかな唇。

甘い吐息に包まれて終わる1日。

そんな時間が過ごせる日々。

これを幸せと呼ぶのなら今の俺は間違いなく幸せだ。

確かめる様に腕を伸ばす。

触れるはずの温もりは空振りしてわずかにシーツに残る温かみだけを指先に伝える。

寝ぼけたまま抱きしめて確かめる夜の余韻。

これが楽しいんだぞ。

楽しみたい相手はするりと抜け出て側には見当たらない。

最後に食べようととっていた好物を横取りされた気分だ。

時計で時間を確かめてまだあいつが出勤する時間じゃないことだけが心の救いだ。

一緒に寄り添って俺の目覚めを待つ。

そんな心遣いはないものか。

「ベットから抜けられなくなる」

拗ねる仕草のあいつを想像する俺。

今が夜ならなぁ。

「やっと起きたね」

ベットの上で腕を伸ばしてあくびをする俺の前には身支度を完全に整えたつくしがほほ笑む。

反応するように伸ばした腕がつくしを引き寄せた。

倒れ込む身体は形ばかりの抵抗を見せる。

「俺が起きるまで待ってろよ」

「待ってるじゃん」

小さな空間を胸元で作る様に置かれる腕。

俺から抱きしめられるのをしっかりと否定するように動く。

10センチの妨げも俺の肌の火照りをしっかりと伝えてるはずだ。

「違う。ベットの中でってことだ」

「待ってたらベットから抜け出せなくなる」

想像してた表情と寸分たがわぬ拗ねた表情が俺を覗き込む。

ドクンと心音が飛んだ。

「もう、出かける準備したんだから、乱さないでよね」

太ももに伸ばした手の平をキュッとつねられた。

「テッ」

恥ずかしそうに「いや」って漏れる声は発せられそうもねぇ。

以前ならもっと・・・こう・・・

本気で照れて・・・。

免疫ができたかつーか慣れてきた反応。

しょうがなくつねられた手のひらを大げさに摩る。

立ちあがったつくしはごみを払うみたいにパンパンとスーツの乱れを正す。

そこまでするほど触ってねぇぞ。

ベットの中での甘えた仕草はどこいった?

引きずってるのは俺だけだと明白。

きり変わりが早過ぎだ。

「今日は事務所の方で仕事したいから呼びつけないでよね」

「お前が一緒に出社すればな」

拒否権なしの命令。

「ったく」

ゆっくりと俺に近ずくつくしの顔。

首に軽く回された腕。

「早く起きてよね」

しょうがないといいたげな表情は子供みたいに屈託なく笑う。

「チュッ」と俺の頬が音を立てた。

やっぱり・・・。

今の俺は・・・。

最高に幸せだ。

PWのお話の余韻の残るお話です。

読まれてなくても話はつなげていますが、PWのお話を読んだほうが浸れるのかな。

どうなんでしょうか?

お粗末でした。