幸せの1歩手前 21

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静かに1日が流れる。

道明寺と顔を合わせるのは朝と夜のひと時。

会社では忙しいいのか私とすれ違ってもそそくさと足早に去っていく。

立ち止まって話す時間もないと言わけじみた態度。

屋敷に帰ってもそわそわと今一つ落ち着かない道明寺。

挙動不審なんですけど・・・

今のところは責めずに様子を見ている。

私にちょっかい出してこないのは正直ありがたいと思う気持ちは90%。

後の10%は、ほんのりとした淋しさが心を占める。

弁護士の仕事も順調に覚えてる。

司法修習の実習でも半年いたおかげですっかりなじんでる事務所の仲間。

結構かわいがってもらってる。

私の失敗に対しての指摘も手を抜かないのは玲子さんも甲斐さんも同様で落ち込むのは新人としては仕方がない。

仕事から帰ってもやることは山積みだと一人で自分の部屋にこもって机に向かう。

午前0時過ぎ隣の部屋の主の帰宅した気配。

ゆっくりとドアノブをまわして自分の部屋から隣の部屋に続くドアを開けた。

「お帰り」

「まだ起きてたのか?先に寝てていいぞ」

ネクタイを緩めながらソファーにドカッと座り込む道明寺。

「・・・忙しそうだね」

「今週はこの調子だ。俺に合わせる必要はねぇぞ」

「私もいろいろすることあるから」

待ってるわけないでしょうなんて結婚前なら言ってたセリフも今は影をひそめる。

ここ数日の睡眠時間は数時間。

いくら道明寺でも身体を壊さないか心配になるのは当たり前。

「クソッーーー、あと三日か」

ソファーにもたれながら首を後ろに倒して叫んだ道明寺と目があった。

「なに、三日って?」

「ん?あぁ、この忙しさのこと」

隣に座れと視線で合図を送られた。

それに従って道明寺の横に回って腰を下ろす。

こんな動作も素直になった。

肩に回された腕の重さを心地よく感じる。

道明寺の肩にもたれかかる様にそっと頭を乗せた。

「落ち着けば少しはゆっくり時間が取れる」

「それまで辛抱な」

唇の柔らかな感触と温もりが耳元に伝わる。

「こうしてるだけでも私は幸せだけど」

「相変わらず欲がねえやつ」

笑みを深めた瞳が目の前に迫る。

鼓動がキュンと鳴った。

眠気なんて空の彼方に追い出されて消えてなくなってしまってる。

道明寺の手が緩く動くたびにジンと身体の中心に熱が集まってくるようだ。

「もう遅いから・・・寝なきゃね・・・」

胸元に手を動かして道明寺を押しとどめる様に力を入れた。

「・・・だな、寝なきゃな」

軽く触れた唇はそのまま首すじを伝って肌を吸い上げる。

その・・・

なんだ・・・

意味が・・・違うって。

朝早いし・・・疲れてるし・・・夜遅いし・・・。

熱くなってきそうな吐息を隠すのが精いっぱいな状況。

「男って疲れてると欲望が強くなるって知ってるか?」

「知るわけないでしょう」

震えがちに漏れる声。

「教えてやるよ」

熱くなってると自覚する頬を大きな手のひらが包み込む。

言葉を発する間もなく唇を塞がれた。

小鳥のさえずりと朝の日の光がまぶしい清々しい朝。

機嫌のいい道明寺の横で寝不足気味の重い頭を身体に乗せた状態の私が出来上がっていた。

今日は帰りなんか待ってないんだからッ。

決心したのは言うまでもない。

終わらせようと思いながらなかなか終わりません。

中途半端なところで終わらせてしまってますが、どうしてこっちの方に行くのだろう(^_^;)

次で終わらせないとなぁ・・・。