watcher 1
FC2小説で連載しておりましたが、こちらで見たいという要望に負けてしましました。
書いてみたら更新中はブログの方でUPするのが簡単だと気が付きました。
数日で考えが変わる優準不断さお許しください。
PWもかけられないみたいですし(^_^;)
今頃気がつくかなぁ。
本日よりブログに移転です。
オリキャラ公平君を主人公にしたサイドストーリーです。
公平君ファン必見!と勝手に思っています。
*「法廷で会おう」
検事の俺と弁護士になったあいつ。
握手を交わして別れてからの歳月。
そう簡単に会えるほどこの業界も狭くない。
すれ違ったのが裁判所の廊下だというネタばれはドラマ的には落第点の舞台だろうか。
目の前に見覚えのあるシルエット。
仕上がりのいい淡いオレンジ色のスーツ。
背筋をピンと張って歩く軽やかな足取り。
男性の視線を釘つけにすると言うほどの色気はないのは相変わらずだ。
じっと観察してるのは俺くらいのもんだ。
後姿だけで分かるなんて俺もまだあいつを思いきれてないらしい。
結婚したいと思える相手に巡り合えないのもこいつに一因があると思える。
未だにわかってないよな。
牧野つくし。
じゃなかった・・・道明寺つくしだッ。
「公平」
人を一瞬で引きつける優しい満面の笑顔。
警戒心なんて全くなくて学生の頃から変わらない魅力は備えてる。
「偶然だね」
「久しぶりだな。かわってないね」
わざとらしく右手で顎をなでながら視線を足音から頭のてっぺんまで移す。
「それ褒めてるの?」
とがらせた口元がすぐにクスッと形を変えた。
「もう終わったのか?」
「まあね。公平は?」
「俺も終わり」
「時間ある?」
当たり前の様に誘いをかけたのはつくしの方だった。
「大丈夫なのか?」
遠慮がちに聞き返したのはこいつの嫉妬深い旦那への遠慮から。
司法修習の頃に殺されそうな目で睨まれたのは今でも覚えてる。
「今はだいぶ大人しくなってるから」
俺の気持ちを察知したようにつくしがほほ笑む。
連れだって裁判所を出た夕暮れ時。
紅く染まる夕焼けがビルの合間に見える。
「ここでいいかぁ」
通りにいくつも並ぶ飲み屋の店。
一つの店先の前でつくしが足を止める。
自分で言って納得してずんずんと先にくぐる焼き鳥の暖簾のかかった店。
こいつ・・・
こんなに積極的に話を進めるタイプだったか?
どちらかというと意見を述べて皆の考えをまとめるタイプだったと記憶にある。
「ここでいい?」
ようやくここで振り返ったあいつに俺の意思を確かめられた。
反対する理由はもともと何もない。
10人も座れば満杯のカウンターの片隅に二人並んで腰を下ろす。
「洒落たレストランとか連れていかれるかと思った」
「そんなところに行ったらどこで知り合いに会うかわからなしね。
こんなところじゃその可能性はゼロでしょう」
うまそうに鳥のモモ焼きの串にかぶりつくのは世界有数の富豪の奥方。
その食いっぷりからは予想もつかない。
「本当に変わってないな」
それがうれしくて、昔に帰った様な気がした。
「それじゃ再会を祝して」
重なったビールのジョッキがカチャッと軽く音を立てた。
店の中は平日にも関わらず、満席の賑わいを示してる。
俺達に気に留める者は誰もいない。
つくしのはしゃぐ様子は騒がれないそのことに起因するのか・・・
俺との再会を喜んでの事なのか・・・
どっちなのだろう・・・。
後者だと思いたいというのは心の底の奥に少しだけ残る想いの先に隠す。
「フゥー」
息をはきながら漏れる声。
「5年ぶりだね」
素直に懐かしく思う音色。
耳元に優しく響く。
「そんなになるか?」
きっとお前より過ぎる月日を数えてたのは俺のほう。
そんな事はおくびにも出さない強がりを示すのは残された俺のプライドだ。
「公平は転勤で居場所変わるから」
連絡を入れなかったのは俺だけのせいだとでも言いたい口ぶりだ。
「そっちは俺より忙しそうじゃなかったけ」
弁護士1年目で妊娠、出産、育児休暇、あの辺からこいつに会う機会は減少してきた。
旦那の横で寄り添うつくしの姿をとらえた写真を今でも時々目にする。
弁護士に復帰するなんてできないだろうと思っていた。
「子育てに忙しかったからね。今でも忙しいのは変わらないけど」
つくしが口もとに幸せそうに笑顔を浮かべた。
「つくしも母親かぁ。子供3人だっけ?」
「よく知ってたね」
本気で驚かれるような事か?
確か長男が生まれた時は道明寺王国に後継ぎ誕生って全国的なニュース扱いだった。
日本中、いや世界中に噂は広がったはずだ。
子供の顔は警備の理由というやつでシークレット扱いで公には公表されていないが、一度見た長男坊は司ジュニアとすぐわかる生き映しだった記憶がある。
あのまま育っていれば結構目立つ家族の写真が出来ると想像はしやすい。
「大きくなっただろう?今いくつだ?」
「今年から一番上が小学生」
「相変わらずだわ英徳は」
不服というか不満そうな横顔。
「小学校に入学するのにいくらかかるか知ってる?」
「一応出身だからね」
小学校を卒業して大学に編入するまでま外国で過ごした俺。
あのまま大学に編入しなければつくしを知ることもなかったはずだ。
もしも・・・
なんて考えは愚問以外のないものでもない。
人間なんて弱いものだからとそれもしょうがないと気をとり直す。
自分を自分で慰めて失笑気味に緩む口元。
英徳の序列の違いは親の寄付金の違い。
子供に持参金付けて預ける様なもの。
未だにF4の寄付金が最高で、超えるものはないと噂されている。
「自分がされた以上のことは駿にしてやるってあのバカ張り切っちゃって」
今度はその息子の入学でそれを超えるのだろうかと思い浮かべた時に響くつくしの声。
俺の予想も少なからず当たってるみたいだった。
日本は道明寺で持っている。
そんな評価もあながち嘘じゃない活躍を見せる道明寺総帥もつくしにかかればバカと評価される。
「このモモ焼き一生毎日食べても食べきらないわよ」
比べる単価が違うと思う。
そんなことを思いながらつくしらしいと思い浮かぶ昔の記憶。
一緒にいるだけで想いが掘り起こされていくみたいだった。
つくしが気なった瞬間。
好きだと気が付いた自分の気持ち。
そして彼氏がいると知った瞬間。
告白する前に失恋していた。
そして隠し通して来た自分の心。
「俺、お前のこと好きだった」
懐かしいと語るにはまだ時間が必要らしい。
「公平はどうなの?」
「俺?」
「結婚は・・・してなさそうだけど・・・」
俺の薬指をしっかりと確認しての質問。
「結婚する相手がいなくてね」
「若くてかっこいいって弁護士仲間では有名だけどね?」
「そこに有能も付け加えてくれるとうれしいけどな」
残りのビールを流し込んで、空のグラスもお代りをカウンター越しに注文する。
それ以上深く質問されても答えようがない。
「この前知り合った子に同期だっていったら切実な目で訴えられたわよ。合コンできませんか?って」
「お前に合コン頼むってどんな奴だよ」
「私が道明寺と関係あるなんて大々的には言ってないからね」
「付き合いがあまりない子は情報が入るまで時間がかかるのよ」
悪戯っぽく笑った口元は「興味ある?」と軽く動く。
「ねぇよ」
不機嫌気味に答えてしまってた。
途切れることなく続く会話。
とめどもなく話したいことが湧き上がる。
とはいっても俺はほとんど聞き役に徹してる。
「ここで公平と再会できるなんて運命かな」
勘違いしそうな台詞をさらりと口にする。
大抵の男なら誘われてると喜ぶところだ。
そんな気がさらさらないのを知ってはいても心がドクンと波を打つ。
「俺で遊ぶなッ」
心の中で呟いた。
「俺との再会が運命な訳ないだろう」
「お前の運命の相手は仕事中か?」
本心は口にするのも億劫な意味合い。
「しばらくはこっちにいるみたいだから淋しくはないけどね」
心は完全に俺からそっちに移った様に愛しい思いを浮かべる表情へと変わる。
あいつを思っているときにしか見せないやわらかい表情。
そこに見せるわずかな色気。
濃艶じゃなくて優しさの空気が漂う。
その雰囲気をこの手で抱き寄せてみたくなる。
愛されないと分かっているのに愛しいと思う心。
今はその想いだけがここにある。
それがつらくはないのだからどうしようもない。
きっと俺は・・・
道明寺を真っすぐに愛してるつくしのすべてをひっくるめて好きになったのだから。
「ごめん」
わずかに漏れて聞こえる音楽。
映画のスターウォーズに流れていた曲。
学生の頃から道明寺からだってバツの悪そうな顔を浮かべてた。
バックの中から慌てて携帯を取り出すつくし。
すぐに会話を終わらせて携帯を切った。
「もう、この前にいるって」
「えっ?なんで?」
さすがにそれには驚いた。
「お前連絡する暇なかったよな?」
お前の旦那にあう心の準備は出来てない。
「今はGPSって便利すぎる機能が有るでしょう」
「携帯で連絡取る前にすぐに居場所を探されるから」
嫌そうな口ぶりは建前だってすぐにわかる。
「嫌そうなわりにはやけにうれしそうな顔してるよ」
「うれしいわけないじゃん」
照れくさそうに笑いながら身体をわずかにひねって店の入り口へとつくしが視線をむけた。
この居酒屋には似合わない上品そうなグレーのスーツに身を包んだ男性が入口に入ってきた。
ふぉっ~と漂う空気が黄金に変わった。
瞳を隠すサングラスは整った顔立ちを強調する作用しか持ってない。
タダそこにいるだけで視線を集めるオーラ。
存在感から違いを見せつけられているようだ。
「相変わらず目立つな」
夜にサングラスの異様さもそれほど気にならないスマートな立ち姿。
「そうかな?」
「つくしはいつも見慣れてるから慣れてるだけだろう」
周りの客は口を動かすのも忘れた様に視線をその男に引きよせられている。
俺もその一人というのは情けない。
視線を全く無視するように俺達に男性が近づく。
「久しぶりだな」
相変わらず凄みのある声。
威圧的だが以前みたいな冷たさを前に押し出すとげとげしい感情は見当たらない。
「とったらダメだって」
サングラスに手をかけた道明寺をつくしが慌てて静止する。
「ばれたら困るでしょう」
サラリーマンの風の客の中では聞こえない囁きが少しづつ広まりを見せている。
サングラスくらいでは隠しようがない端整な顔立ち。
それに輪をかける存在感。
世間に知られ過ぎてる有名人。
きっとこの中で道明寺司を知らないという人間を探すのは砂漠の中に
落としたダイヤを見つけるより難しいはずだ。
ばればれだろう。
今さらサングラスを取る取らないは大した問題じゃないはずだ。
観点が完全にずれてないか?
サングラスにかけたこの手をどうするんだみたいな態度の道明寺を
そのまま早く座れとでも言う様につくしが腕を取って引き寄せながら自分の隣の席に座らせた。
つくしを真中にして3人で並ぶ。
以前なら絶対俺とつくしの間に割り込んで座ったはずの道明寺。
今はそこまでの嫉妬は見せないらしい。
道明寺が俺に見せる嫉妬が楽しんでいた修習時代。
落ち着いた態度を見せる道明寺に時の流れを感じていた。