LOVE AND PEACE 7

*

「なぁ、もう泣くな」

「だって~」

ぐずる様に鼻をならす牧野。

「あいつらもなんとも思っちゃいないよ」

「そんな訳ないでしょう。花沢類なんて高校の時の最悪な出来事まだ覚えていたもん」

慰めになってないとソファーの上のクッションを投げられた。

聞き様によっては今日の出来事より昔、類に見られたことを覚えられていたのがショックがあったように感じるのはなぜだろう。

すーげー気分悪い。

「顔洗ってくる」

立ち上がると重たい足取りで洗面所へと向かう牧野を俺は静かに見送った。

そのままの流れで牧野を抱き寄せるって事にはいきそうもない。

俺の部屋に帰り着くまでの高揚感に期待感!

ビューと空気が抜けて風船がしぼむように無くなった。

「着物はいいぞ、全部脱がせる必要はない」

総二郎からの電話。

「牧野、今日お前んちだろう」

ここから始まっていいこと教えてやるって言われた。

さすがの俺も周りに人がいないことを確かめた。

総二郎には散々今までもしょうもないこと聞いて呆れられてる俺。

俺と牧野の事はほとんど筒抜けだ。

それが原因で牧野にすねられたこと何度もある。

そしてお預け状態になる俺。

今日もこのパターンか?

「おい」

落ち着けなくなって洗面所へと向かった。

帯を解いて着物を脱いで見えた薄桃色の肌襦袢姿の牧野。

「見ないでッ!」

「プッ」

頭の上から牧野が投げた着物にスッポリと視界を遮られた。

さっきの下着よりましだろう。

牧野の長襦袢姿・・・。

着物より色っぺぇかも。

着物から鼻をくすぐる牧野の移り香。

甘く俺の男の部分を刺激する。

視覚と聴覚を刺激されあと触覚刺激されたら収まんなくなる。

「見てるの俺だけだぞ」

「俺のもん見てなにが悪い」

「今でもさんざん見てるし、お前の裸」

「テッ」

かぶっていた着物から頭を出した途端に鼻先に飛んできたのは歯磨きチューブ、ついで石鹸。

よける間もなく顔に当たった。

「出てけ!」

牧野に身体を押されて洗面所から排除されて目の前でドアをバンと閉められる。

そして「カチャ」とカギが閉められた。

「おい!こら!ここは俺の部屋だ!」

明日にでもこの部屋のカギ全部なくしてやる!

しょうがなく一人ソファーに座り牧野が機嫌を直すのを待つ。

俺の目の前にようやく現れた牧野は素通りしてベットルームに向かう。

しっかり着物からパジャマに着替えてた。

「寝る」

俺の耳に聞こえた2文字。

俺を誘うにしては色気がない。

色気がないのはいつもの事。

「一緒に寝たい!一緒に寝よう!」

最低5文字は欲しいとこだ。

慌てて牧野を追ってベットルームへ向かう俺。

「なぁ」

抱きたいんだけど・・・

「なに」

背中を向けたまんまの声は機嫌は直ってねぇ。

「まだ、怒ってるのか?」

俺が悪い訳じゃないだろう。

全部お前がすっころんだのが原因。

「私の事、気にしなくていいから」

気にするなって、気にしないでいられるわけねえだろう!

やる気の俺の横で本気でスヤスヤ寝息立てるつもりなのか?

こいつならあり得るから困る。

「ほっといて」

肩に手を置いた途端に身体を揺さぶられて手を振りはらわれる。

ここで無理強いすると「キライ&大っきらい」になるんだよな。

スキって言いなおさせる自信はあるけど。

「俺のせいじゃねえだろう」

「道明寺が変なこと思いつくからでしょう」

ガバッと布団をはいで起き上がった牧野がようやく俺を見た。

「どうしたら機嫌直る?」

「自分でも分からないよ」

「道明寺にも分かんない事言ってるし・・・」

「さんざん見てるとか・・・なにっ言ってんだろう。恥ずかしい」

目の前の顔がまた泣きそうにゆがむ。

「怒ってないと涙がこぼれそうになるんだもん」

「大丈夫だから」

胸の中に抱き込むように牧野の後頭部に腕を回す。

牧野が泣きやむまでそうしていたい。

そんなやさしい気持ちになる。

お前の泣き顔も怒った顔もすべてが好きで愛しくて、それでも笑った顔が一番見たいと思うんだ。

「・・・あのね。今日このまんまがいい」

「このまんま?」

「抱きしめてもらってたら眠れそうだから」

くすぐったくなるような照れた笑顔。

抱きしめて?

・・・いるだけ?

なにもなし?

身体ポンポンしてやって寝かせつけるのか?

道明寺の胸の中、暖かいってそのまま体を預けてきた牧野。

そのままベットに二人で横たわる。

笑った顔が一番見たいって思ったの取り消す。

そのなんだ、喘いだ表情、感じる声それがいい!

どうせ抱き合うならすべて終わった後の方がぐっすり眠れるぞ?

・・・って、もう寝息立ててる。

「おい!こら!起きろ!」

牧野の身体をゆする。

「・・・んっ、・・・すき」

わずかに寝返りを打った身体は深く俺の胸の中に入りこんでその口元が呟いた。

え?お?

どんな夢見てんだ?

素直じゃん。

そのスキって俺だよな?

んでなにもできねェってなんの罰だ!?

罰にしてはすげー拷問。

慣れてると言えば慣れてるが・・・。

最近は久しぶりッ。

起こしてやる!

パジャマのボタンに手をかけて・・・

予定では指先を着物の襟元から差し込んで・・・の予定だった。

今さら考えてもしょうがない。

あどけない寝顔が目の前で・・・。

寝息でわずかに開く口元。

牧野の寝息を飲み込むように唇をそっと重ねた。

いつもだと蛇のナマ転がしなんですが・・・(^_^;)

たまには起きてやりなよつくしちゃん。

と言う事でお話は続きます。

結局帯シュルシュルの司君の希望は今回も夢に終わったようで・・・

お粗末でした。