玲子さんの婚活物語 4

 *

「今日は、仕事が終わるの早かったんだね」

「お前が会社に来てるの知ってたからな」

西田さんに無理を言ったのがなんとなくわかる。

朝の出かけの時は帰りは20時を過ぎると言っていたのに2時間は早い。

「事務所に連絡入れたらもう帰ったって甲斐が教えてくれた」

なんで教えるのよッ!

って、甲斐さんは悪くない。

「トラブルか?」

「えっ?」

「珍しく松山と真面目な顔で話し合っていたろう?」

お前が真面目な顔してるの滅多に見ねぇしって、それじゃ、いつも私がアホズラしてるみたいな言い方だ。

普段なら拗ねてるところ。

今日はそんな余裕が心にある訳ない。

「難しいと言えば難しいかな・・・」

ウソは言ってない。

「それでね。しばらく玲子さんに付き合うことになったんだけど、いいかな?」

「仕事の事で俺に遠慮するって初めてじゃないか?」

道明寺の考える素振りにドキッとなる。

仕事じゃないから遠慮してるとは言えない。

下手に道明寺が頭を働かせると困る。

私の挙動には必要以上に敏感に反応する人だから。

「今までほとんど駿と二人で司の帰り待っていたでしょう?いないと心配するといけないから・・・」

我ながらうまくにっこりとほほ笑んだ。

「無理するなよ」

目の前でやさしい光を持った瞳を細めて見つめられて・・・

どうしよう!!!!!!

訝しく、不機嫌に「しょうがねぇ」と渋めの顔を作られた方がどれだけ楽かわからない。

やさしくしないで!

いつもとは違う感情を言葉に出来る筈がない。

屋敷に向かう車の後部座席。

車にしたら広い空間も今日はやけに狭く感じる。

これが明るい部屋の中ならきっと私は泣きそうな表情で司を見つめていたに違いない。

私が結婚相手を探す訳じゃないから・・・

玲子さんの付き添い・・・

頼みが断れないくて・・・

すぐに玲子さんの相手を見つけて終わらせる。

だから、許して!

ばれたら・・・

どうなるんだろう?

今までみたいに怒ってもお前らしいって、抱きしめて許してくれるかな?

「なぁ・・・・」

「なっ?なに」

なにか気がついたか?

機嫌は悪くなってないと司の表情を読み取る。

まだばれてない・・・。

言わなきゃ結婚相談所に入会するなんて誰が思いつく。

「甲斐は一緒じゃないんだよな」

「玲子さんと二人だけです」

思わず強調するように声がいつもより高音で飛びだした。

「なら、安心か」

甲斐さんは私に言わせれば人畜無害に分類されると思う。

それが解かっていても司にとっては気にいらない分類に入るから甲斐さんも司の前では萎縮する。

ばれるわけにはいかない!

司の安心した顔でますます追い込まれた気分が私の中で出来あがっていた。

次の日。

玲子さんとブライダルスクールと書かれたビルの前に立つ。

「私も入会しないといけないですか?付き添いじゃ・・・」

「ここまで来て、なに言ってるの!」

あなたに拒否権はないのと弁護士の強気なオシを見せる玲子さん。

この圧しには勝てそうもない。

が・・・

最後の抵抗。

「まだ間に合うかと・・・やっぱやめます!」

身体を反転させた私の腕は玲子さんの両手に掴まれた。

「これって詐欺ですよ!牧野で登録したら文書偽造だし」

「大丈夫、上の方には話しつけてるんだから。

つくしちゃんが男の人と付き会ったらやばいけど、そうしなければ騙したことにはならないわよ」

ここで人を引き付ける満面の笑み。

この使い分けは見習うべきところが多い。

「つくしちゃんが代表以外の男の人と付き会う気なんてないでしょう?」

それは絶対にあり得ない。

強引なのに「何でもやります」と言うことを聞きそうになる心の変化を生む説得力。

結局、玲子さんに引っ張られるままに受付へと進む。

「入会したいんですけど」

「お二人ですか?」

「ハイ」

にっこりと玲子さんがほほ笑んで受付嬢にしっかりと返事をした。

玲子さんの名字すっかり忘れていました。

最初の登場で出てきただけだった・・・(^_^;)

いよいよ結婚相談所に入会。

どうなるんでしょう?

簡単に玲子さんと甲斐君の恋物語にはならないようで・・・

拍手コメント返礼

匿名様

つししちゃんのお人よしな性格はすご~くおいしんですよねおはなしを作る上では(笑)

司が怒るのも分かってるんですよね。