ごめん それでも愛してる 4
*CAからにこやかに名刺を受取ったのなんとか我慢できた。
美人に抱きつかれて、鼻の下伸ばしてると思ったらキスまでしてるって!
どういう神経!
私を好きだと言って、私も好きだと返事した。
そして私にキスした唇はすぐに他の女性と触れ合ってるって・・・
思わず自分の唇を腕で拭きあげる。
本当に私の事好きなの?
遊ばれた?
まだそこまでの関係じゃない。
大会社の御曹司と言うのを差し引いてもモテル要素満載の容姿。
相手を思いやるやさしさ、心遣いのきめ細やかな性格を持ってることは2カ月も一緒に暮せばわかる。
不可抗力って・・・
迫られて、断れなかったなんて言い訳でもされたらは優柔不断だって叫んでいたはずだ。
「追いかけてもこない・・・」
最上階から降りてきたエレベーターを見上げながら声が小さく漏れた。
「東條だよね?」
背後から聞こえた声。
聞き覚えのある声は今もやさしく響く。
「先輩、お久しぶりです」
さっきこのビルで見つけた懐かし顔。
大学の思い出がよみがえる。
一緒にいたくって入った映画のサークル。
実はあこがれていた先輩。
さっきの事がなきゃますます気分が良かったはずだ。
先輩にときめいた時よりも心が・・・身体が・・・
熱くなった感覚はあいつが初めてで・・・。
この時間が長く続くようにとさえ祈ってた。
それを好きだと言ってくれたあいつがぶち破る。
「同じ会社だったんですね?」
「僕もびっくりしたよ」
「すぐ、東條だって分かった。社長の秘書って言うのは驚いたけど」
「私もすぐに気が付きました。秘書になったのはここ最近なんですけどね」
「お互い変わってないってこと?」
口元に浮かぶすがすがしい先輩のほほ笑みも変わってない。
「僕は2年ぐらい香港にいるんだ」
「来週には本社にもどる予定だけどね」
「帰ったら会社でも会えそうだね?」
「そうですね」
「元気ないけど?」
「初めての海外出張なんで緊張してるみたいです」
楽しい顔なんて出来るはずがなく、ぎこちない笑顔しか作れない。
「もう仕事終わった?」
終わった?
終わってない!
書類の作成を途中で放り投げている。
今さらあの部屋に引き返して仕事をする気力はない。
たいして急ぐ仕事じゃなくて良かった。
「終わりました」
そして早く帰りたい。
一人、ホテルの部屋で私はまた心を悩ますのだろうか。
どうしてあんな奴好きになったのだろうと。
「食事でもどう?案内するよ」
一人になりたくない時間を先輩で逸らす?
ここで頼っては申し訳ない気もする。
「下心はないから」
「えっ?そんなこと思ってませんけど」
真顔を作って否定する。
「警戒されないっていうのもさびしかも」
ククっと笑う先輩に釣られる様に私の口元もほころんだ。
「おい、これ」
頭上からゆっくりと目の前を通って降りてくる見覚えのあるクリーム色のバック。
「社長!」
先輩は慌てて姿勢を正す。
「忘れものだ」
その声に慌てて自分の両手を見た。
なにも持ってない。
両手の中にぽとりと落とされるバック。
なにも持たずに飛びだして、私はどうするつもりだったのだろう。
「知り合いか?」
さっきも聞かれた気がする。
「大学の先輩なんです」
話し終わらにうちに社長の視線は先輩にと注がれている。
「君、悪いけど東條を返してもらえないだろか」
穏やかな表情のまま口元には笑みまで浮かぶ。
それでいてNOとは言えない威厳。
社長にタテつける社員がいる訳ない。
「まだ、仕事は終わってない」
耳元に触れる息使い。
そのまま腕をつかまれてエレベーターに押し込まれた。
拍手コメント返礼
hanairo様
拍手1番乗り♪ありがとうございます。
4人でごたごた。
これ以上増やしたくなんですけどね。
つかつく登場してないし・・・
どうしましょう~