玲子さんの婚活物語 7

加川さんちの次男君、加川拓斗。

いったいどんな性格?

それですべてが決まる様な気がします。

 *

「加川さんて・・・あの加川さん?」

耳元でこそっと小さく声を出して確かめる玲子さんにコクリと頷く。

席を立とうとする玲子さんのスカートの裾をガシッと握りしめた。

逃げようたってそうはいきません!

「お久しぶりです。こちらは職場の先輩で、松山玲子さん」

「よろしく」

玲子さんも逃げ腰の様子は完全に取っ払って、にっこりと手をさしだして加川さんの息子と軽く握手を交わした。

油断してない表情はなんとなく弁護士の顔。

雰囲気だけはにこやかだけど私の心の中はいつ爆発してもおかしくないくらいに鼓動が高速化に脈を打っている。

「牧野さんって結婚してなかったの?」

「えっ?」

「ほら、うちの母が俺に紹介するって言っていた時、彼氏連れていたよね?」

「あの時さ、あの二人は大変だろうから私がなんとするってうちの母親が張り切っていたから」

にっこりと人のよさそうな柔かいほほ笑みを浮かべる加川拓斗さん。

その時見られた相手は花沢類で・・・

確かに応援するって言ったあなたのお母さんは司と楓お母様にまで応援を頼んだんです。

そのおかげで私の心労はピークに陥った。

「そんなことありましたね・・・」

言いながら背中を冷たい汗がツーッと伝う。

「まあ、そんなことはどうでもいいことだよね。ここに来てるってことは結婚相手探してるってことでしょ?」

「えっ!・・・イッ!ハイッ!」

横で太ももを玲子さんにつねられて思わずハイと肯定的返事をしてしまう。

心の中で相手探してませんと言ってはみても何の足しにもならない。

恨めしい視線を横目で玲子さんに送った。

何事もなかった様に余裕の表情の玲子さんの側にも一人の男性が歩み寄って来てる。

逃げられた。

1対1の対比は避けたいのにッ。

どうかした?みたいな表情を向けられてもぎこちない笑顔しか作れない私。

頬が引きつっているのが解かる。

んっ?

さっき結婚相手探してるとか質問されたんだよねこの人に。

私が結婚してる事を加川さんは息子に教えてない?

加川のおばさんて自分に都合が悪いことは人には言わないタイプ?

・・・でも自分の御蔭で私と司が結婚できたようなこと玲子さんには言ってなかったか?

息子には花沢物産の御曹司と私は付きあっていたの情報で止まってるの?

この場合はその方が助かる。

「・・・もしかして、この子供ってその人の子供?」

・・・え?

加川拓斗さんは手にもった女性のプロフィールの書いてある用紙を眺めて呟いた。

その人って・・・花沢類!?

違うと言ったらややこしくなりそうで・・・

ハイと言ったらますますややこしくなる。

ここはもうなにも答えない!

唇をギュっと結んでうつむいた。

「いろいろあったんだね」

その声に釣られて顔を上げる。

目をこれ以上開けないくらいに大きく見開いて加川拓斗を見つめてた。

その、いろいろってなんですかぁぁぁぁぁぁ。

加川拓斗の表情はどうみても同情、憐みの分類だ。

今この人の頭の中は子供ができても結婚できなかった理由を分析中なのだろうか?

「僕でよければ、力になるよ」

私に一歩歩み寄る加川拓斗から本能的に身体が引けている。

「大丈夫ですから・・・」

「一人で子供産んで・・・結婚できなくて・・・どんなに・・・俺そんなの弱いんだ」

勝手に非劇のヒロインにされてる気分。

やっぱり・・・

この人も加川さんの血を引いている。

駿の事を書かなければよかった。

今さら遅いつーの!

拍手コメント返礼

b-moka

ややこしくなってます。

加川さんを登場させたあたりから雲行きが怪しくなり始めて・・・

地獄の中に片足突っ込んでしまいました。(;O;)

最初のお話と完全に骨組みが変わっちゃったから大変で~。

でもこっちのお話の方が面白そうなんですよね。

続きが楽しみとコメントいただけるだけで書く気力が倍増します。

         ↑

 実はこれも困るんです。すぐ頭の中でストーリを考え始めるんですもの。(爆)