玲子さんの婚活物語 8

どうやって司にばれるのか!

皆様の関心はそこに集中してる様で・・・(^_^;)

その前にもう少しエッセンスを少々(ドバッのまちがいじゃ・・・)付け足してと考えております。

そろそろ甲斐君も登場させないと忘れ去られる様な気もいたします。

 *

産後、育児休暇からの復帰はまだ1カ月以上先なのに落ち着けなくて事務所のデスクの前に居座ってる。

その私の席の隣は甲斐さんのはずなのに、隣の主を追い出してその場所をぶんどっている玲子さん。

さっきから甲斐さんがいじけてるんですけど・・・。

仕方なく玲子さんのデスクに座る甲斐さんは、玲子さんに睨まれて一回り小さくなった。

朝、司の起きる前に、だーーーーッと準備して駿はタマ先輩の部屋に置いて飛び出した。

昨晩は「つかれた!寝る」と一人でベットに入って背中を向けて寝た。

司の寝返りにびくびくしたのは久しぶりだ。

「無理すんなッ」って、気遣いを見せられるからますます顔が見れなくなった。

世界でたぶんただ一人、駿の父親をあなたじゃなく花沢類だと思ってる人がいます。

ばれたら・・・

怖い。

布団を頭からかぶり息を殺す。

そして寝不足気味の顔が出来上がった。

「確約は取れたの?」

「相手には何とかOKもらいました」

耳をダンボにしてる甲斐さんにばれないように事務的な会話。

何が確約ですか!さっさと自分は逃げたくせに。

「・・・で、そっちはどうなんですか?」

少しふくれた声。

「どうって?」

「新しい顧客との面談ですよ」

「あっ・・・あれはねぇ、あそこにいたらやばいと思ってね・・・」

「やっぱり逃げたんですね」

「ごめん」

素直に手のひらを合わせた謝る玲子さんはちょっぴりかわいらしく見える。

もしどうにもならなくなったらしっかり助けてくれると信じてるから玲子さんを憎めない。

「なんとか、約束は取り付けたんですけどね・・・」

わずかにほほ笑んだ口元からハァーと漏れるため息。

加川さんに結婚相談所に私がいたことがばれないように息子に必死で頼み込んだ私。

「あの・・・今日ここで私に会ったこと言わないでくれます」

「えっ?」

少し驚いた様な口元をすぐにギュッと結んで納得した様な顔を加川息子が作る。

「今、一緒には住んでないから大丈夫だよ。お袋にばれるとうるさそうだもんな」

誰にとも名前を言わなくてもピンとくるあたりは感がいい。

「絶対お願いしますよ」

「職場が一緒だから余計困るんです」

「君、職場道明寺の本社ビルで働いてるの?」

聞かれもしないのに口が滑った。

自分から情報出さなくてもいいのにッ。

職場が一緒で困るのは司も一緒だと言うこと。

西田さんに出張の予定入れてくださいって頼み込むか。

そうなると結婚相談所のこと話さなきゃあの人は動いてくれない。

『私が苦労させられるのは坊ちゃんだけにしていただきたい。』

渋めの声が聞こえる空耳。

「僕は君の味方だから、心配しないで」

一人で勘違いしたまま悦に入っている加川拓斗。

こうなれば人の言葉なんて聞いてない状態はDNAのなせるわざか?

息子の後ろにその母親が見える気がした。

味方は要らないんですけど・・・。

味方をすると言ったあなたが心配です。

不安が不安を呼んで不信が募るよう。

払拭するためにはただ一つ。

早く結婚相手見付けないとやばい。

「玲子さん、早く決めてください!」

あんまり怖い顔しないのッてにっこりほほ笑んでもダメです!

もうニ度と相談所に行きたくないんですからねッ。

「早く決めるって何?」

「仕事のこと?」

甲斐さんが上半身をデスクから乗り出して来た。

「率直で仕事を進める玲子さんはそのくらいで悩まないですよね」

「大体人の指図なんて受けたくない人ですもんね」

「テッ!」

玲子さんの投げたペンは正確に甲斐さんの額に命中。

ぽとりとデスクの上にペンが落ちる。

「能天気に生きてるみたいに言わないでくれる」

「さっきの話ってうまくごまかしてるみたいですけど仕事じゃないですよね?」

「二人で何企んでるんですか?僕だけのけものはずるいな」

デスクのペンを拾って玲子さんに渡す甲斐さんは勝ち誇った様な表情を作る。

ムードメーカー的存在の甲斐さんがここぞのときに見せる男の顔。

頼れる気になる存在感をしめす。

だからって結婚相談所のこと言えるかぁぁぁぁぁぁ。

「結婚しようかと思って」

玲子さんがすんなりしゃべった。

「誰が?つくしチャンのはずないですよね」

「私に決まってるでしょう」

「玲子さん彼氏いたんですか?」

「いないから探してるのよ」

このノリで私を巻き込んで結婚相談所に登録したことまで喋ってしまってる。

さすがの甲斐さんも呆れた顔になっていた。