秘書西田の坊ちゃん観察日記29(LOVE AND PEACE 19)

西田さん日記も30篇となりました。

この人気はどこから~

けい様のリクエストの西田さんの若い時のお話も控えています。

夏休み明けにUP出来るといいのですが・・・・

このお話は『LOVE AND PEACE 19』の番外編となります。

*

「このままではどうにもなりません」

突然呼び出された久しぶりに楓様のオフィス。

代表の地位に司様がついたものの、詳細部分に未だに目を光らせてるのは以前と変わりがない。

ただ公の場所に登場する機会を代表に譲られただけの事。

その権限がすべて代表に委ねだれるのは数年を要すると私は思っている。

「私は、私の役目をつくしさんに委ねるつもりなのにことごとく邪魔するのは自分の息子」

「西田、私の考えは間違ってるかしら」

私に問いながらそれは私にどうにかしなさいと言う暗黙の指示にほかならない。

月に数日は接待名目のパーティ。

代表の婚約者として出席するつくし様の姿を見かけることも多い。

そこで楓様がつくし様に希望するのは企業同士のつながりを深めることに重点をおくこと。

確かにこれまでの状況では楓様が不安を抱かれるのは無理もない。

つくし様に握手を求めた某会社の社長の手のひらをつかんだのは代表。

相手は58歳の初老の男性。

その息子が近づこうものなら、司様は完全に近づくなの結界をつくし様の周りに張っている状況。

単なる握手です・・・。

楓様でなくてもため息が出そうだ。

「直接、司様に言われることも手段かと」

「私の言うことを素直に聞く子じゃないことはお前も分かってるでしょう」

「また牧野との中を邪魔する気かって下手に勘繰られるのが落ちだわ」

返ってくる言葉は予測できるのに、わざと質問をぶつけるのは後で楓様が下手に動かないようにする布石。

これで全権は私に委ねられたはず。

数日後画策したわたしノッテくれるのはこの3人しかいない。

すぐに察して私の計画に楽しそうに相槌を打つ。

「牧野と司の事は任せてくれ」

頼もしい反応。

計画は着々と進行する。

私を無視して新米の秘書を使うのも予定済み。

まさか、着グルミまで着るとは思いませんでした。

「司、その格好で威嚇するのは止めてくれ」

「その格好も笑えるな」

総二郎様あきら様のフォロー

思った以上にその場からとげとげしさは抜かれてる。

「折角の機会でしたのに・・・」

遠慮なく本題を呟く。

「そろそろつくし様が司様から離れて公の場所に出席することも必要かと思っていたのです」

「それで、なんで類なんだ」

「いきなり一人ではつくし様も心細いでしょうから」

「こいつらがいたら、俺といるのとかわんねぇだろうがぁぁぁぁ」

解かってらっしゃらない。

「二人で出席される時はほとんどつくし様の傍を代表は離れられないでしょう」

「女性ならではの役目もございます。坊ちゃんが側にいてはその役目もうまく作用しないと言うところでしょうか」

冷静に落ち着いた響きを持ってゆっくりと喉の奥から声を出す。

「司の場合は牧野の側による男性を殺す様な目線で警戒してるもんな」

「あれは警戒じゃないくて威嚇だ。唸り声まで聞こえてきそうだしな」

「司の婚約者としての知名度は上がっても道明寺財閥総帥のパートナーとしての評判は上々とは言えないだろう」

お二人のフォローがこの上なく私の立場を良くする。

しかし・・・

坊ちゃんの着グルミ。

笑いをこらえるのは重労働だ。

厚手の毛皮を脱ぎ捨てた代表は洗練されたセレブの青年へと生まれ変わる。

「西田、主役が突然いなくなると会場は困る。俺の代わりにお前がこれを着ろ」

「まさか、俺にこんな格好までさせて自分が出来ないなんて言わないよな」

これは完璧な仕返し。

悪戯っぽい表情で私に「できないだろ~」と時折見せる威圧的な態度。

そんなこと今までの気苦労に比べれがどうってことありません。

着グルミの中に私が入ってるということは他人には分からないのですから。

「仕方ありません」

恭しくその着グルミを受けとり、上着を脱いで身にまとった。

今回一番の貧乏くじを引いたのは私ではないのだろか。

司の高笑いが聞こえてきそうな終わり方。

たまにはいんじゃねーのと、思っています。