LOVE AND PEACE 20

いよいよ司が正装して登場。

会場の盛り上がりも最高潮♪

・・・と、その前に時間を少しもどして、類とつくしはどうしてる?

*

「これでしばらくは静かだよ」

「嵐の前の静けさだろうけど」

不安げに3人の消えたドアの向こうを見えなくなった今も見つめてる。

「道明寺は来ないはずじゃなかったの?」

「牧野を俺に任せたままあいつが大人しく出来るなんて誰も思ってはいないと思うよ」

「さすがにあの格好を見せつけられると、司は牧野の為なら何でもするんだと感心しちゃうよね」

「私はバカだと思うけど」

「心の奥じゃ牧野は喜んでるでしょう?」

クスッと笑った類は「今のうちに」と呟いてやさしいほほ笑みを浮かべて私の腕とる。

「今日の目的の一つは財政会のお偉方に牧野を紹介する意味もあるからね」

「えっ?」

「司と一緒じゃ相手の顔と名前覚えることは無理でしょう」

「牧野は司がいつ不機嫌になるかドキドキしてる事が多いだろう」

「司のおふくろさんも西田さんも折角のこの機会が活かせないことを愁いていたんだよ」

ゆっくりと会場を歩きながら花沢類は会話を続ける。

「もしかして、今日の事って道明寺のお母様と西田さんが絡んでるの?」

「そんなとこかな」

何でもない様な明るい笑顔を向けられても私は気力がだんだんと萎んできて溜息しか出てこなくなった。

「類、久しぶりだな」

私たちの歩みを阻むように現れた人影。

目元が花沢類に似てるやさしい印象の男性が目の前に現れる。

なんとなく親しみが持てるのはそのせいだろうか。

花沢類が30年歳を重ねたらこんな感じになるのだろうと一人で勝手に思いを描いてる。

「息子が悪さをしてないですか?もし類と別れたら私を思いだしていただきたい」

『息子』のとこで動揺して目の前に差し出された手を握り返した。

「父さん、母さんに言いつけるよ。若い女性を口説いてたって」

「それに牧野は僕の彼女じゃない。司の婚約者だ」

顔は似てるのに軽い印象。

それでもそれがいやらしく感じないスマートで洗練された身のこなし。

「花沢類のお父さん!」

似てるのは当たり前だ。

それでも結構驚いている。

「はじめまして、牧野つくしです」

とってつけたように慌てて頭を下げた。

数年来の付き合いだが花沢類の両親に会ったことは今まで一度もなかった。

美作さんのお母さんも双子ちゃんもよく知ってる。

西門さんの両親も茶室で面会済み。

品があって嫌みがない容姿。

それはみんなに共通するところだ。

「それは残念。せっかく類が女性を連れてきてるから喜んだのに」

「司君と別れたらぜひ私の息子を思い出していただきたい」

「父さん!」

珍しく花沢類が不機嫌な声を上げた。

さっきまでの落ち込んだ気分も忘れて自然にクスッと笑みがこぼれる。

その後も数人の男性に女性に紹介された。

こんなにスムーズに自然にほほ笑んで握手を交わしたのは初めてだ。

これなら今回のパーティーの意味もわかる気がした。

パタンと開くドアの音。

敷いてないはずのレットカーペットまで見える様な錯覚。

長身の容姿にやさしい上品な仕上がりのタキシードが映える。

華やかさはスポットライトなしでもその場のすべての視線を集める。

一人でも存在感は十分なのに道明寺の後ろには西門さんと美作さんが花を添えている。

「キャー」

聞きなれた感嘆符。

「はぁー」と見惚れる様なため息も上がってる。

そこまで目だたなくていいのにッ。

「準備が出来たみたいだね」

頭の上から覗き込むように花沢類がつぶやいた。

視線を一度花沢類に向けて道明寺に戻す。

「あれがさっきまでのミ●ィーちゃんと同一人物だとは誰も思わないよね」

「確かにね」

クスッと向けられたやさしい笑顔。

やっぱりこの笑顔で見つめられると今でも照れてしまう。

「待たせたな」

「誰も待ってないけど」

緩んでいた頬を引き締めて道明寺を睨む。

まだ機嫌は直ってないの意思表示だ。

・・・けど

道明寺は全くおかまないなしだ。

私がここ数日落ち込んだことなど気がついてる様子は微塵もないのが憎たらしい。

「強がるな」

「強がってる訳じゃないわよ」

鼻をつき会わせてにらみ合う目の前の道明寺の顔はどこまでもふてぶてしい。

それなのに・・・

必要以上にやさしく見つめる瞳がドクンと私の心拍を上げて甘い気分引き出して行く。

「牧野、言い合いは後でいくらでもできるから今はにこやかにしてた方がいいぞ」

私と道明寺の間に西門さんが割って入る。

道明寺司、婚約者と破局寸前なんて噂されたくないよな」

「そんなことあるか、俺達は相思相愛だもんなぁ」

美作さんの言葉に反応するように道明寺が私の肩を抱き寄せた。

簡単に二人に乗せられる道明寺は相変わらずそこだけは単純だ。

「ちょっと、いきなり・・・」

「どうした?」

言葉が途切れた私を気遣う様に道明寺が私に視線を向ける。

「ほら、あそこにミ●ィーがいるんだけど・・・」

「道明寺はここにいる訳だから、どうなってるの?」

「あぁ、あの中は西田」

「西田?西田って、まさか!あの西田さん!?」

「おもしろいだろう。俺がやれって言ったんだ」

面白って言うより想像できない着グルミの中の西田さん。

「あれはほぼ強制命令だったよな」

コクリと顔を見合わせて頷き会う西門さんと美作さん。

「司の時よりうまいんじゃないジェスチャーがかわいいよ」

感心して見てる花沢類が言う様に確かに口元に手を当てて腰を斜めに曲げる格好はミ●ィーのかわいさの演出だ。

「さすが西田さん。なにやらせても完璧なのね」

でも着グルミの下はあの西田さんだよね。

あのジェスチャーしながら無表情だったら・・・

「クッ・・・フフフフフ」

笑いが止まらなくなった。

着グルミの中に隠しカメラなんて付けてないよね?

それが残念。

少しだけ類パパ登場。

実は以前から類の家族って興味があったんですよね。

家族が出てくるのは原作では美作パパに双子。椿お姉さまに楓さんだけですもんね。

後はいろんな想像ができちゃうわけです。

この先も興味がある類パパです。

西田さんの着グルミが司以上に興味がわくのは私だけじゃないですよね?