駿君の家族日記 11(夏休み編 5)

駿君の夏休みの日記も5話目になりました。

まだまだ書きたいことはありますがこれがなかなか終わりません。

*

「駿、何してるんだ」

僕の頭の上から覗き込む進おじさん。

クレヨンで色を塗ってるのは、かき氷を作る僕とおじいちゃん。

「夏休みの宿題の絵日記だよ」

「きっとこんなすごい絵日記書いてるの僕だけだと思う」

「かき氷のどこがすごいんだ?」

「自分で作ってかき氷食べる同級生っていないと思う」

「・・・そうか、英徳だもんなぁ」

進おじさんが考え込む。

「俺たちの当り前のことが駿たちにとっては未体験ゾーンだもんな」

クシュッとおじさんが僕の頭をなでる。

「今日は祭りがあるんでしょ?」

「行きたいのか?」

「隣の蒼君と凛ちゃんに一緒に行こうって誘われたんだけどダメかな」

おじいちゃんの家に来てから仲良くなった友達。

昼間は一緒に遊んでる。

昨日は一緒に公民館って公共の施設で遊んだ。

クーラーも効いてるしタダで遊べるのよっておばあちゃんが連れてきてくれた。

けん玉に竹とんぼ、一輪車。

お母さんも得意だったらしい。

けん玉も竹とんぼも何とか遊べるようになった。

でも一輪車は無理だ。

やっと補助輪がとれたばかりの僕。

いきなり乗れと言われても乗れるはずがない。

「タダで体験できるものは何でもつくしはうまかったのよね」

おばあちゃんは子供のころのお母さんを想像してうれしそうに笑う。

1円も無駄にできないとお金の大切さを教えてくれるお母さん。

無料のものにハマるお母さんをなんとなく分かる気がした。

僕は一輪車に乗ったお母さんを見たいと思った。

「大人が付いていけば大丈夫だと思うけど、よし僕が付いていこう」

「僕は祭りって初めてなんだ」

「たこ焼きに、焼きそば、トウモロコシ、リンゴ飴ってあるんでしょう?」

「駿、それ教えたのママか?」

「うん」

「・・・だよな。パパのわけないか」

「射的にヨーヨー釣り、金魚すくい、食べ物じゃない楽しみもあるぞ」

食べ物じゃない楽しみってどんなものかわかんないけどワクワクする。

お風呂に入って甚平に着替えて祭りに行く準備は完了。

蒼君と凛ちゃん二人のお父さんと進おじさんと僕で神社の境内の夏祭りに向かう。

赤い鳥居の先にずら~と左右に並ぶ提灯

並んだ提灯の下にはたくさんのお店。

食べ物の並んだ屋台に派手なおもちゃの並ぶお店。

ジュースまでキャラクターの水筒にストロー付きで売っている。

昼間のような明るさにドキドキとわくわくが入れ混ざって楽しくてしょうがない。

凛ちゃんを真ん中に左右で手をつなぐ蒼君と僕。

後ろにはおじさんと二人のパパ。

オレンジ、黒、白、色な鮮やかな色で泳ぐ金魚のプール。

その前に3人で座り込んで眺めてた。

すごく気持ちよさそうに泳ぐ金魚が楽しそうに見える。

「駿、これで金魚をすくうんだ」

おじさんが僕に渡してくれたのは取っ手のついた白い紙でできた丸い網みたいなやつ。

すくった金魚は自分のものにできるって聞いて僕はやる気を出す。

隣の蒼君は白いやつを追いかけてすぐに破けた紙を残念そうに眺める。

僕は赤い金魚がほしくてそいつを追いかける。

ゆっくりと近づける紙。

すくった金魚は紙の上で跳ねてパシャッと水の中に落ちた。

そして濡れた紙は大きな穴をあける。

僕も蒼君と同じ気持ちでそれをしばらく見つめた。

「初めてだとしょうがないよな」

僕を慰めるようにおじさんが言って頭にポンと手を置く。

僕の横に座る凛ちゃんの水の中に3匹の金魚。

「凛ちゃんすごい」

「凛は破れないのですくってるから、3匹はもらえるんだよ」

凛ちゃんのパパが金属の網を僕に見せてくれた。

「それじゃおもしろくないぞ」

「いいじゃん、金魚もらえるんだから」

蒼君に反抗するように膨れる凛ちゃん。

蒼君も妹には弱いらしい。

今度金魚すくいをするときは絶対金魚をすくうんだ。

お父さんに言ったらきっと家で練習できるように準備してくれるはずだ。

お母さんには内緒で頼んでみよう。

きっと翼も舞も夢中になるはずだ。

でも一番夢中になるのはお父さんかもしれない。

拍手コメント返礼

さっちき様

F4そろって道明寺家主催金魚すくい大会。

使用人も参加。

なんて面白くありませんか?

司を負かしたら大変だと使用人が気を使うなかでF3は本気で対戦。

駿君に勝たせる心遣いのなか大人げない司なんて構図が浮かんでいます。