涙まで抱きしめたい 2
まさかあきらのプロポーズ、葵ちゃんに受けてもらえないとは!
そんな印象で始めたお話。
まだまだそんなに簡単にはいかなそうですが・・・
どんな事件!展開!が待っている!?
それはCMの後で!
なんのCMだぁぁぁぁぁ~
提供は道明寺グループ♪なんてね。
*高層ビルの立ち並ぶビル街。
最上階の窓際から眺める下界。
視線の先には同じような無機質なビルが広がっている。
何の音も聞こえない空間に「トントン」とノックの音だけが響いた。
床を覆う絨毯に足音は吸い込まれ距離が測れない気配に五感が敏感になる。
窓辺から視線を室内に戻した瞬間に葵の動きが一瞬止まった。
柔らかく口元に浮かべる笑み。
それは俺を見つけて無邪気に喜ぶ感情そのもの。
子供みたいに屈託ない。
誰が見ても俺を意識してるのはバレバレの表情。
二人の時しか見せないのがうれしいのに物足りない気持ち。
それでも近づいてくる息遣いを感じてドクンと胸が高鳴る。
「今日の会議の資料です」
今日初めて聞いた言葉は単なる業務的な響きだけのもの。
昨日帰らなかった俺に「どこにいたの」とか拗ねながら責めるみたいなものはないのかと追求したくなる。
昨夜一晩愚痴った相手は司や総二郎に類。
慰められたのか・・・。
からかわれたのか・・・。
「お前まで一人の女にそこまでハマるとは思わなかった」
意外そうにつぶやいた総二郎。
きっとこいつが一番俺の気持ちをわかってると思う。
本気で惚れた相手がいなかったようなふりをして、夢中になれる相手を本気で探してるのは総二郎かもしれない。
俺が一番本気の恋に疎かったんだ。
「昨日は司達と一緒だった」
聞かれてもいないのに自分から告げる。
そして葵の感情を探るように見つめた。
デスクの上に置かれる書類。
その手が少しだけ震えてる。
気にしてないようなそぶりを完全に装えてない葵。
その手をそっと握った。
ぴくっと震わせて俺のそそがれる視線。
熱く感じるのは俺だけじゃないはずだ。
そんな感情を見せるのに何でプロポーズは断れるんだ。
「皆さんそろそろ集まってます」
俺をせかすように発した言葉は上ずって照れてるのがわかる。
ククッと喉の奥からこぼれる笑い。
相変わらず純な反応を見せる葵は俺より年上には思えない。
「まじめに仕事して」
デスクの前に出た俺は葵の腰に腕を回す。
胸元で結びつく二人。
「プロポーズを断られて、傷ついた俺を慰めてくれないか」
「・・・だれか来たら困る」
誰も来るはずはない。
社長室のドアの前には一之瀬がしっかり関所の番人をやってくれてるはずだから。
抗うように動く葵の体を押し込めてデスクの上に押し倒す。
上下する胸元。
白く光る首筋に吸い込まれるように唇を落とす。
「ひゃーッ」
ビクンと震える葵の身体。
それだけで熱が体中を覆った。
「しししッ仕事中!」
組み敷いた体の下でパニック気味に聞こえる声。
「少しは仕返しになったか?」
俺の腕から逃れた葵はデスクの上に座ってキュッと胸元を隠すようにシャツを片手で握りしめる。
涙が落ちそうな瞳で睨まれた。
立ち上がってスカートの裾を直すように葵は手を動かしながら怒ったような表情は変わらないまま俺に向けられる。
「今日も帰ってこなくていい!」
つぶやいて大股で俺を追い越してドアの前で立ち止まって深呼吸をするように上下に揺れる肩。
「・・・嘘だから」
聞こえた声から一呼吸を置いて葵が振り向りむく。
帰ってきてと声にならない唇の動き。
俺の目に焼き付くのは部屋を出ていく合間に見せた葵の照れくさそうな顔。
どうやら俺の負けらしい。
拍手コメント返礼
nonno様
そうなんですよね。
あせらなくても今の生活楽しめば♪と言ってやりたい。
無断外泊はお仕置きですよね~。
まあそれもエネルギーに変えて楽しむ余裕はあきら君ないでしょうね。
本当に司並みの純情さに戻ってるような~。
hanairo様
焦らなくてもいいのに焦らせたい私。
必死になるあきらを見たいといたずらを考えてるんです♪
さぁどんな感じでちょっかい出そうかな~