涙まで抱きしめたい 3

やっと3話に突入。

まだ話が進みませんがちょこっといじわるは用意しております。

いったい誰に?

*

規則的息づかい。

目覚めるとそれを見つめるのが癖になった。

傍で見つめるだけで幸せな気分になる。

うれしいのか・・・

安心してるのか・・・

自分でも時々わからなくなる。

1人不安で眠りについた朝。

横にいるはずのぬくもりがなくて心細くなった。

一人で寝るのはこれが初めてじゃないはずなのに。

「バカみたい」

プロポーズを断ってあいつを拗ねさせてしまったのは自分なのに。

なら断らなきゃいい!

心の奥でもう一人の自分がつぶやく。

帰らないあいつの行先を心配して携帯を両手で持って待ち受け画面を見つめてた。

泊まるとこなら実家だってあるし、ホテルだってある。

所有するマンションだってここだけじゃない。

もしかして女性と一緒って・・・。

それは絶対ないと笑い飛ばしながら架空の女性に嫉妬してる。

必要以上にモテルのは実証済みだ。

アイツは女性のあしらい方慣れてるし言い寄られても簡単には尾っぽ振らないと信じてる。

モデル並みの美女に言い寄られてスマートに断ってる場面もこの半年で何度か目撃。

「婚約を発表すればこんな誘いも受けることはないと思うんだけどな」

せがむ様に囁いて抱きしめる熱い腕。

秘書というだけで相当嫌味な視線を向けられてるのに付き合ってるのがばれたらどうなるか。

妬みと戦うより今は心の中で私の彼だぞって思える優越感が私の楽しみになってる。

「あの秘書ならしょうがないわね」なんて言われるような大人なカッコよい女性になってからプロポーズされたい。

だから私なりに頑張っているつもりだ。

半年くらいじゃ無理だよ~。

1年?3年?それ以上かかるかな。

男が出来すぎなのも困り者だ。

大企業の御曹司。

付き合う友達もセレブ。

仕事も出来て、その上性格も良くて容姿端麗。

「どこか欠点がない?」

聞いたら「葵にべた惚れなところ」って言って軽くキスされた。

確かにって思える自分が悲しかった。

だから認められるまで結婚しないと誓ったあの日から半年。

なのになんで3回目のプローポーズするのよッ。

この調子で言ったら冗談じゃなく101回目のプロポーズになりそうだ。

寝不足を化粧で隠して会社に出る。

社長室で背中を向けたままのアイツ。

何事もなかったような雰囲気にチクッと心が痛みを感じてる。

「今日の会議の資料です」

感情を隠したままの業務的な声。

絶対心の中は見せないんだからと強情な自分。

かわいくないと自分でも思う。

「昨日は司達と一緒だった」

気にしてないと言いたいのに声にならない。

私が一番知りたいことをなぜこんなに簡単に言葉にできるのだろう。

私を見る瞳は少し心配気味で・・・

哀願するような感情を浮かべてる。

普段通りに自信あふれる態度で、いつもの仕事上の会話を交わせばこんなに心がざわめくことはないはずなのに。

心は完全に引き戻されている。

触れられた指先から全身に走る電流。

「みなさんそろそろ集まってます」

焦って出る声。

それを合図のようにククッと小さくアイツは笑い声を立てる。

そして胸元に抱きしめられ身動きが取れなくなった。

こんなことで動揺するのは情けない。

「まじめに仕事して」

否定しながらも湧き上がる甘い感覚。

「プロポーズを断られて、傷ついた俺を慰めてくれないか」

「・・・だれか来たら困る」

デスクに押し倒された身体。

「ひゃーッ」

胸元に触れる唇の感覚。

ドクンと高鳴る心音。

鼓動が体中を支配しているようだ。

アイツのしなやかな指先が動いてスカートの裾から入りこむのを抑制された上半身では拒むこともできない。

「しししッ仕事中!」

完全にパニック気味になっている。

こんなとこで、それも朝っぱらから・・・。

隣の部屋には一之瀬さんもいる。

そう思いながらも抗えない本能。

全ては躊躇なく皮膚をすべる指先が私に刻みつけた愛撫になれたせい。

それに反応しそうになる自分をもてあましている。

「少しは仕返しになったか?」

すっと軽くなって自由になった体。

目の前のアイツは満足そうにニンマリとほほ笑む。

その余裕がヤダッ。

デスクから立ち上がって服の乱れを直す。

「今日も帰ってこなくていい!」

叫んで、二度と視線を向けずに部屋を出ていくために出口へと向かう。

背中に感じる熱い視線。

息を整える様に呼吸を繰り返すたびに心は冷静になる。

悪いのは私なんだと。

「・・・嘘だから」

振り向りむいてアイツの不安そうな表情を見てしまったらつぶやいてしまってた。

帰ってきてと声にするのは恥ずかしくて唇を動かす。

そして部屋を出て行った。

「何かあった?」

一之瀬さんがデスクから顔をあげて私に問いかける。

「なにもありません」

押し倒されて下着を下げられそうになりましたって言えるわけない。

「企画部に行ってもらいたいのだけど」

「・・・ハイ」

渡された書類を持って企画部へと向かう。

企画部には里中先輩がいていまだに少しちょっかいを出されてる。

付き合おうって誘いじゃなく完全に私の思いは吹っ切った感じなのに「彼氏とはどう?うまくいってる。

俺に紹介して」なんてうまくいくように心配してるって感じで聞いてくる。

そして私の同僚は「里中さんとうまくいってるんだ」と勘違いしている現状。

「はぁ・・・」

先輩に会ったら東条の彼氏を見なきゃ落着けないってまた言われそうだ。

もう会ってるよなんて今は言えない。

「はぁ・・・」

書類を持ってエレベーターに乗り込みながらまた、ため息が出た。

101回目のプロポーズ♪のドラマを思い出して懐かしいと思ってしまった方は同世代♪

リメイクされるって話がなかったかしら?

拍手コメント返礼

nonno様

葵サイドの気持ち気になってたんですね。

私も最初から書くつもりではいたんですよ。

ご希望をリクエストしていただいてもかまいませんのでどしどしコメントくださいね。

つくしにはないかわいらしい感じありますよね。

司だったら何言ったんだ?疑問符張り付けてそうだと思いませんか?

あきらだから通じるのよ~と思っています。