FIGHT!! 12
さて和也君の正体は!
明かすほどのものって・・・あったんだっけ?
*「これからは自由でお願いします」
焦ったように響く甲高い女性の声は駿の担任の先生。
震えてる。
暗雲はそのまま教室の天井を覆って雷をまき散らす一歩手前まで広がった。
「竜神降臨」
西門さんは緊張感のない表情でにっこりとほほ笑む。
異常さを感じ取った園児はそのまま両親のもとに走ってその足元に抱ついて固まった。
駿は動じもせずにいつもの無邪気な笑顔で私と司を交互に眺める。
「お父さん?」
「おう」
不機嫌な声を短く発してそのまま駿を司は抱きあげた。
「ペタッ」
「テッ」
司の頬を小さな手がペタッ、パチッと幾度も音を立てる。
「コラッ」
駿の小さな手のひらを司の大きな掌がつつむ。
「遊ぶのは帰ってからだ」
そのまま駿の頭は司の耳元にぺたりとくっついたいつもの甘える仕草。
「駿なりに異常を察知したんじゃないのか?」
「父親の扱い方3歳ですでに習得。司より将来有望な経営者になる可能性の片鱗が見える」
美作さんが真顔で頷く。
「雷雲が雨雲まで落ち着いてきたようだね」
花沢類の言葉に司がじろりと反応。
「幼馴染なのよ」
「つくしちゃんには保育園の頃から守ってもらってからね」
なんとなくこの場の雰囲気をわかってないにこやかな笑みを浮かべる和也君。
負の司に見たらほとんどその視線を向けられた相手はそのまま委縮するか逃げる方向へ動く。
その気配は全くなし。
珍しいタイプだ。
そんな和也君のそばにくるりとした目元が似ているような可愛い女の子が来て和也君と手をつなぐ。
「和也君も結婚したの?」
「違うよ。僕のマドンナはつくしちゃんだけだから」
横で駿を抱っこしたままの司のこめかみがピクリと動いた。
その後ろでイケメンの3人は吹き出しそうになる表情を我慢しているのが分かる。
「今日は妹の入園式なんだよね」
「妹!」
驚いた表情を張り付けたまんま二人を見比べた。
どう見ても親子の方がしっくりといく。
妹っていくつ違い?
和也君のパパってうちのパパと年齢変わらなかったんじゃなかったけ?
私が駿を生んだのは24歳だからその分の年の差はある計算。
「あっ母親は違うから」
「それでうちは大変だったんだ」
そんなことをこの場であっけらかんと話していいのか!
周りにくるくると視線を回す。
あとで噂が和也君の妹?に害にならないかと心配した。
周りの親たちは自分の子供を落ち着けるのに必死になっている。
ぐずって泣き出す子。
母親にへばりつく子。
先ほどの司の悪影響は子供たちをビビらすには十分すぎたみたいだ。
お化け屋敷。ジェットコースターなみ?
子どもによっては着ぐるみにも泣き出すタイプはいるんだから泣くな!と言うのは無理がある。
女の子数人は綺麗なものには興味があるようで隠れながらF4を覗き込んでしる。
生まれながらの女性の感性は備わってる。
このことがまた別な伝説にならなければいいけど。
「道明寺司!ひと睨みで子供たちを泣かせる!」
誰も駿をいじめようと思う子どもがいなくなる!
友達もできないかも!
駿の方が和也君の妹より派手に印象付けそうだ。
「これからも時々つくしちゃんに会えると思うとうれしいよ」
「つくしに会えなくするのは簡単だ」
和也君の首を絞めそうな勢いで司がすごむ。
駿を抱いているのがその勢いをわずかな抑えてる。
「バカなことしないでよね」
抑えるつもりで司の空いている左の腕にしがみついた。