夢色!恋色!花模様 10
2周年まであと二日です。
終わるのかぁーーーこの話。
最後はお約束の甘くて、ぬるいお話をご用意する予定。
あくまでも予定です。
だってどこかで事件は!と期待してる方もいらっしゃるし(^_^;)
そうなったらせっかくの甘さが逃げ行く可能性も~。
どうしよう司君?
「てめぇッ」
すごまれた気分・・・
PW申請された『場所』様メールが送れませんでした。
再度ご連絡をお願いします。
*「噂の女性と違うようですが?」
1メートル下の低い場所からレコーダーを持った腕を伸ばして差し出す記者
。
一気に熱が数度下がったのは私たちじゃなくてシーンと静まる会場。
「なんの噂だ」
低めの声はバリッと足元から冷気を運んでその場にいたすべての人の膝下まで凍らせるよう。
誰一人も動けずに会場からすべての音を奪った。
噂ってこの前の週刊ー誌に載っていた道明寺のキスの写真のことだ。
そういえばしっかりと道明寺から説明を聞いてなかった。
「好きな絵だけ撮って都合のいい記事だけ載せる」
「大変な仕事だよな」
嫌味のこもった不機嫌な声。
次の質問も出てこない記者が顔色をなくしてる。
「俺が自分でキスしたいと思うのはこいつだけだから」
振り向いて私に注ぐ柔らかいまなざし。
向ける相手でクルッと入れかわる感情。
ここだけなぜそんなに器用になれる?
キスされそうな雰囲気に流石にここは手のひらが動いた。
「私の方が愛してるわ!」
会場の中央付近から上がる高い声。
ムッとなった顔はそのままその声の方向に振り向いた。
そのまま立ちすくんでる人波をかき分けるように壇上の前まで進んできた。
表情は苦々しく私を見つめてる。
道明寺にキスした人?
週刊誌にはよく映ってなかった顔は自分が美人だとよくわかってるタイプ。
露出気味の肌も自分のプロポーションを誇張しているよう。
「私の方がお似合いよ」とでも言いたげな視線で見つめられるのは悲しいかな慣れている。
そろりと顔を上げて見つめた道明寺の精鍛な横顔は彫刻のように冷たい。
顔が整い過ぎてるだけにこんな時の冷やかさは群を抜く。
「時々、わかんねぇ奴いるからな」
私だけに聞こえるように西門さん耳元でつぶやく。
モデル並みの容姿の女性もこの人たちの興味を引く方向には作用してないのが分かる。
「司は差が大きすぎるんだよ。あいつの判断基準は牧野か牧野以外しかねぇし、違いありすぎだろう」
「牧野意外に優しくする必要はないって態度だからね」
美作さんの言葉に花沢類がそう言って「牧野分かってる?」みたいな表情を付け足した。
「俺を好きになるのはそっちの勝手だ」
「俺はこいつ以外には愛せねぇし」
今度は逃げんなとで言う様に道明寺の腕が私の首に巻きついた。
苦しいッ。
甘い告白に似合わない強い力。
愛せねぇって・・・
言い切るのはすごいというか・・・らしいというか・・・。
この状況じゃ素直に喜べないつーの。
さっきの幸福感を感じたのは夢か幻か?
「でも私はッ!」
叫び足らないとでもいう様に女性は一歩体を前に進める。
その横にスーッと現れたダークスーツ。
両腕を抱えて引きずられるように後ろに下がってく。
「お騒がせしました」
頭を下げたのは西田さん。
「たくっ」
「せっかくの気分に水を差された」
「来い」
しかめっ面はそのままにつぶやいた。
来い?
来いってなに?
強く握りしめられたられた手のひら。
妙に汗をかいている。
えっ?
あっ?
そのまま壇上からその裏に引きずられる。
会場のざわつきがホッとした安堵のため息ととも再開されてる。
「30分ですよ」
西田さんの声が遠くで聞こえた。
きっとこの後を取り繕うのは西田さんとお母様か。
お母様の私に対する評価が下がらないだろうか?
私どうするのよ!
もう離せ!
バカ!
アホ!
私の感情を無視するな。
西田さんのそばにクロールで引き返したい気分。
頭の中では必死で泳いでもがいてる。
想像を超えない妄想。
現実には首を掴まれて子猫になってる。
「しばらく休憩」
「気分を変える必要あるだろう」
連れて行かれたのは誰もいない部屋。
姿見の大きな鏡にソファーにテーブル。
テーブルの上に並ぶペットボトル。
控室だ。
気分を変えるって・・・。
大きく息を吸って吐いて深呼吸!
なわけないと道明寺に詰め寄られて思わずついたお尻はソファーの肘掛けの上。
「気分を変えるって・・・」
「本当に何でもないからな」
それは十分わかった。
でも、わたしの質問に答えてない。
道明寺の手のひらがそっと私の頬を包み込む。
親指の指先が数度愛おしむ様に頬をなぞった。
鼻先が触れ合う。
それはくすぐったくて・・・
道明寺の息遣いを・・・
肌の熱さを必要以上に感じさせる。
唇が触れそうな距離で道明寺の熱い息だけが頬に、唇に、首筋へと触れる。
「キャッ」
道明寺の体が動いた拍子に肘掛けに乗っかっただけのお尻はストンと滑ってソファーの中に納まった私はV字体形になった。
跳ね上がった足をクスと笑った道明寺が下ろすように両手が動く。
そのまま折れるように私の膝は素直に動いた。
「すげー格好」
「誰のせいだッ」
いつものように道明寺を責める強さは声からは消えている。
触れる指先は熱くて生地の上からも道明寺の熱を感じさせる。
私の膝を割るように道明寺の足が動いた。
「なななななに」
身体が倒れない様についた手のひら。
ゆっくりと道明寺が膝をついて顔が近くなる。
どう考えても上半身は無防備に道明寺の前にさらしてる。
「ドレスが汚れる」
「破いたら着るものなくなるぞ」
するりとドレスの裾から入り込む指先。
触れられるたびにビクッと体が反応する。
乱暴に発した言葉とは裏腹に優しく敏感に肌をなぞる長い指。
「ンッ」
嫌だと言う言葉は触れてほしいと思う感情に飲み込まれてしまいそうだ。
「30分・・・しか・・ないし・・・」
気持ちをごまかすように途切れそうになる息の中から声を絞り出した。
「30分あれば十分」
完全にソファーの上に横たえられた身体。
タイを片手で緩めながら道明寺の顔がゆっくりと私の前に降りてくる。
ありふれた動作だけでこれから与えられる刺激を想ってキュンとなる。
キスが優しく私の頬に触れた。
姿見の鏡にその姿が映る。
ドクンと心臓が飛び跳ねる。
道明寺を拒みきれないと鏡の中の私が伝えてる。
「愛してる」
甘すぎる囁きはそのまま優しく笑って私の唇と重なった。