夢色!恋色!花模様 9
嵐と真央ちゃんの紅白が決まってから頭の中は花男1色。
二人の仲の噂が再燃してるとか、レンタルビデオの花男のDVDのレンタル率が上がってると聞くたびに、花男が再燃してるの私だけじゃないとニンマリしております。
このお話もニンマリで終わらせたいなぁ~。
*睨んだ・・・
威圧的なド迫力。
壇上に上がらなきゃどうなるかわかってるんだろうな!の意志のこもった鋭い視線。
獲物を捉えて見据えてる。
蛇に睨まれたカエル。
猛獣のオリにいられらたウサギ。
逆に動けない。
震えちゃだめだ。
身体に言い聞かせるように目を閉じてゴクンと息をのむ。
ゆるゆると薄く目を開けた瞳孔の中に飛び込むまばゆい光。
気後れするなというのは無理がある。
震えることもできないくらいに体の硬直度は増している。
「エスコートしてやるよ」
頭の上から聞こえた美作さんの落ち着いた声。
「牧野一人じゃ歩けそうもなさそうだ」
花沢類はクッスと口元に優しく笑みを浮かべる。
「司、俺たちを殴らねぇよな」
西門さんはそう言ってあたり前のように私の腕をとった。
この3人の順位で行けば花沢類、美作さん、西門さんで道明寺の眉の吊り上る角度が変わってくる。
まあ・・・一番無難?
でも拗ねるのに変わりはない。
周りにはにこやかな拍手とどこからか聞こえる驚きの悲鳴?
「キャー」とか「ヤダー」とかの悲惨な声が上がるのは私を歓迎してない一部の女性達。
どう考えてもこの場から逃げられそうもなかった。
ゆっくりと足を進める私たち4人、人ごみは左右に分かれて道を作る。
その中を歩くわたしとF3。
周りの嫉妬をすべて集めてしまいそうな贅沢すぎるエスコート。
まるでレッドカーペットを歩くハリウッドスターみたいな艶やかな情景。
スターにはなりきれてない私はぎこちない笑みを必死で作ろうと試みた。
無理だよ~。
壇上の道明寺が光の中に浮かんでる。
全身を包み込むオレンジの光の中で道明寺の表情まで柔らかく見える。
目元が・・・
口元が・・・
優しく笑った。
照れくさそうに、幸せそうに。
ドクンと心臓が音を立てる。
これ以上道明寺に見詰められたらきっと立っていられなくなる。
傲慢で我儘で横暴な道明寺が私だけに見せる表情。
聞こえない道明寺の声が明確に愛しいと告げている。
言葉以上に響く甘いささやきが惜しげもなく私だけに・・・愛してると、思いを伝えてくる。
これ以上何を望むのだろう。
道明寺のそばにいられるだけで幸せは私からは離れない。
会場に響く拍手もざわめきも何も気にならなくなった。
ただ目の前の道明寺だけを見つめてる。
私の前に手を差し出さす道明寺はあの時と同じに照れくさそうに表情を崩してそして満足そうに笑ってる。
高校の卒業式の後のプロムのプロポーズ。
今・・・
その約束がようやく形になった気がした。
「嬉しそうに出来ないのか?」
道明寺の甘ったるい表情を見せられて強気でいられるわけがない。
濃艶な熱を帯びる黒色の瞳。
星の輝きを瞳の中に残してその中に私だけを映し出す。
「嬉しくないわけは無いけど、いつも唐突すぎ」
ドクンドクンとさっきから心臓は悲鳴をあげている。
招待客の注目よりこっちの方が私の落ち着きをなくしてる。
「素直に喜べ」
近づきすぎる整い過ぎた顔の前で可愛くない顔を作ってしまうのはわずかな抵抗。
自分でも素直じゃないと思う。
「逃げんなよ」
囁き続ける道明寺の片腕は私がそばに来た時から腰に回ってそこを居場所にしている。
これで動けるわけがない。
もう抵抗はしないと気持ちを伝えるように腰に回された道明寺の腕に触れた。
そのまま指先は腕を伝って道明寺の手のひらの上に重ねる。
わたしの指先を道明寺の指先が優しく絡めてくる。
道明寺の熱が指先からそのまま体に注ぐ。
「俺たち居るの忘れてないよな?」
ひゃー
そうだった。
なんとなく出来上がってた道明寺との世界。
のめり込むのは場所が悪すぎだぁぁぁぁ。
道明寺をからかうような西門さんの声に反応するように道明寺の絡めた指の間から自分の指を抜き取る。
それを阻む様に道明寺のもう片方の指先が私の指の動きを留めた。
「牧野だけしか見えてねぇ」
ドクン
心臓が1秒!数秒!確実に鼓動を止めた。
「もうっ」
何か言いたいのに言葉が出てこない。
わずかな隙をつくように目の前の光が遮られた。
柔らかな感触が唇に触れる。
チュッと軽く音を立てて目の前がすぐに明るくなった。
目の前にはニンマリとした道明寺の顔。
「約束は覚えてるよな?」
約束・・・?
突然のキスに怒るより動揺気味。
それに約束ってなんだーーーーッ。
「俺の言う通りにするってやつ、まだ有効だからな」
いつもの我儘、横暴な道明寺がそこにいた。