迷うオオカミ 仔羊を真似る(番外編 前編)
お約束のPWつき暑中見舞い。
1話で終わらせようと書いてたのですがまだ終わらない。
書いた分だけアップしてしまおうと二部構成にいたしました。
後編は限定公開となる予定です。
「だめだって・・・」
名残惜しそうに離れた唇を塞ぐように道明寺の唇を手のひらが塞ぐ。
花沢類や西門さんに美作さんを追い返したと思ったら直ぐこれだ。
「誰も俺たちを気に留めるやつなんていねぇよ」
つまんなさそうな声もやたら色っぽく聞こえるから困る。
「月が見てる・・・」
熱いまなざしに見つめられすぎて正気を失いそうな私は自分には似合わない言葉に我ながら驚いてしまってる。
月どころか他人の目を気にする道明寺じゃない。
「少し冷やすか」
そんな言葉を残して軽く腕を回して道明寺はプールから上がって腰を下ろした。
身体の熱を冷やすどころか、道明寺が触れて肌に感じた唇の熱はいまだに唇に残っている。
「ほら」
差し出された腕の先までたどりついて、その手を取った指先。
絡まったのはほんの一瞬。
道明寺の指先が手首から上腕へと動いて私を助け上げてくれた。
ずぶ濡れのままプールサイドに並んで座る私たち。
肩を触れ合わせながら足元はなんとなくこそばゆい想いをかき混ぜるようにプールの水に足をつけてチャプチャプと水面を揺らしてた。
「完全防水で助かった」
胸元から取りだしたスマフォで道明寺がかけた相手は西田さん。
二人でびしょ濡れのとこを見ても何の感情も見せずに西田なら対処してくれるはずだ。
会場の明りがわずかに漏れるプールの入り口。
光の中に影が動いて近づく人影。
「何してるんですか?」
落ち着いた声はその訳を本気で訪ねてないってことが私に出もわかる。
「何って、泳いだだけだ」
道明寺も素直に答えるつもりはないらしい。
「服のままですか?」
「訓練だよ。服を脱いでおぼれるやついねぇだろう」
「タキシードとドレスで訓練する方はいないと思いますが・・・」
私も思う。
それでも一応弁解しなきゃこの後道明寺が何を言いだすかわかったものじゃない。
「違うんです、いきなり道明寺が抱き付いてくるから態勢を崩してプールに中に落ちそうになって、
私を助けようとして一緒に落ちちゃったんです」
道明寺が急に抱き付くからバランスを崩してプールに落ちたって真相。
西田さんも最初からそんなことだろうと気が付いてるような感じで私を気の毒だと言いたげに見てる。
「部屋を用意しましたから今夜はそちらでお休みください。
誰にも気づかれず直通で行けるはずです。
着替えもそちらに準備してます」
着替えを持ってきてもらうだけで十分ですけど。
なんていう間もなく道明寺は意気揚々とさっさと立ち上がって私の腕をとって立ち上がらせた。
私、病み上がりなんですけど・・・
覚えてる?
これから始まる時間を楽しみにしてる表情・・・
私の体力まだ本調子じゃないから!
言いたい気持ちを言葉にできないままにエレベーターに乗りこんだ。
心では否定しながら本能は道明寺を求めてることは否定できなから・・・
最上階のスィートルーム。
ぽたぽたと絨毯を落ちる滴で濡らすのが気になるのは私だけ。
いつもの感じに遠慮なく部屋に入っていく道明寺の神経がうらやましい。
「この部屋ならシャワールーム二つあるから、お前はそっち使え」
え?
思わず意外そうな表情を浮かべてしまった。
いつもなら嫌がる私を無理やり浴室に引き込むことが多い。
決して期待してるわけじゃないけど予想外の道明寺の言葉に牙が抜かれた感じで緊張が解けたのもほんと。
「まだ、無理させられないだろう。
それに無理させる必要もないわけだしな」
すたすたと私を残して道明寺はもう一つのシャワールームへ消えた。
あっ・・・
私も早くシャワー終わらせて着替えなきゃ。
そしてベッドに入ってゆっくり休む。
シャワールームも二つあるってことは寝室も二つ以上はあるはずだ。
ゆっくり眠れるかも・・・
道明寺がそばにいるのに別々に寝るって言うのもなんとなく寂しいけどね。
そんなことを思ってる自分を頭の中から追い出した。
え・・・
背中に伸ばした指がファスナーを下ろそうと動く。
ファスナーが動かない。
ファスナーを動かさなきゃこのドレス脱げないよ!
どうあがいてもドレスが脱げそうもない。
こうなった道明寺にファスナーを下ろしてもらうしかないよね。
別に恥ずかしがることじゃないしね。
そう考えながらやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいかも・・・
道明寺がシャワー浴びてるところに行くわけで・・・
何も来てない裸の道明寺が想像できるから逆に狼狽える。
すぐにファスナーが降りなって伝えて背中を向ければそんなに見なくて済むはず。
だから大丈夫よ!
意を決して開けたシャワールームのドア。
浴室に響き渡るシャワーの水の音。
その音に掻き消えないくらいに心臓の音がドクンと大きく聞こえた。