その気なんの気?気になる気(思い出は夢の中で番外編)
このお話は『思い出は夢の中で 9』番外編となります。
目の前のコンドーさんに二人はなにを思う?
*「それじゃ、やってみよう」
リビングのテーブルの横に立たされる俺。
その前のソファーに牧野はちょこんと座る。
「まず最初は?」
牧野がにっこりとほほ笑んだ。
幼稚園児にわかるかな?って聞く様な表情。
「あ?」
子ども扱いするなと思っても こいつの質問から意味不明。
最初って言われてもなんだ?
「ウェイター!」
何してるの!と催促気味の視線。
そしてあきれたように呟いた。
「席に案内して、水を持って行って、 注文をとって、料理を運ぶ!それが仕事でしょう」
ウェイター・・・。
いつも景色のいい部屋に案内されて個室で食べる料理。
椅子を引いてお客が座るのを待つ。
メニューを渡して、コップに注ぐミネラルウォーター。
アレを俺がするのか?
注意して眺めたことはない。
「もう、分かった、見本を見せるからッ」
しびれを切らしたように立ち上がった牧野が俺と入れ替わる。
牧野に両肩を押さえられてソファーに俺は黙って座る。
「いい?」
「ああ」
「いらっしゃいませ」にっこりと満面の笑みで牧野がほほ笑んだ。
極上の笑み。
ドキと心音が体に響く。
すくっと下がった頭。
俺・・・。
お前の笑顔を見ていたい。
頭を下げるなッ。
って・・・・
その表情をほかの奴らに見せるのか!
こいつに接客なんてさせられねぇぇぇぇぇぇ~。
コン・・・
コン?
目の前のテーブルが小さく音を立てる。
目の前に置かれたのは俺が懸命に手に入れた必要物品。
別に俺はなくてもいいんだが牧野が嫌がるから買ってきた。
俺が初めて自分で買ったコンドーム。
「何になさいますか?」
何にじゃなくて、どれにじゃないのか?
誘ってる?
一つの箱を手に取ってまじまじと眺めて牧野の表情を読み取ろうとする俺。
目の前の顔はにっこりとしたまま。
珍しく照れてない。
普段と変わりない何気ない態度で俺を誘うなんてこいつも成長したか?
それは、無理か・・・。
もしそうだったら俺はどれだけ楽かわからない。
でもそれじゃ面白くないよな。
苛めがいがない。
「あっ、それはコップね」
俺から離れた長方形系の箱は縦にコトンと置かれた。
目の前に馬力アップの文字と力こぶを作ってスーパーマンみたいに跳んでいる風船に似た図柄。
逆八の字の強気な目まで書いてある。
「こっちがおしぼり」
その横に置かれたパッケージは超薄型の文字。
イチゴの香り付き。
いまだにこの香りは何の意味があるのか分からない。
「たばこを吸う人には灰皿ね」
縦10�横8�の面積の中に書かれた飾り文字。
付けて持続力長持ち!
これを選ばなくても、牧野!俺は自信がある。
「やってみて!」
えっ・・・
やるッ!?
完全に身体はそっちの方に行きつつある。
さっきも中途半端で止まったまま。
触れた胸のやわらかさに零れかけてた甘い声。
身体が思い出している。
これ以上やってられるわけがねぇ!
牧野の不満そうな声にも横暴になる俺。
無視した。
「もう・・・寝る」
頭を抱えながら俺の前を横切る牧野。
「おい、どうすんだ?」
「ん?」
呑気な顔で牧野が俺を振り返る。
「これ?」
テーブルの上の箱を指さす俺。
「あっ・・・」
今、気づいたような表情はすぐに強張った。
ビックリ箱を開けたような驚きの表情は、今までこの小さな箱を認識してたなかったと俺に知らせてる。
今さら遅せぇよ。
キッと結んだ強気な口元。
少し潤んだように見える瞳が俺を捉えてる。
俺の考えをわかってる証拠。
「すげーつかれた」
「・・・それなら早く寝よッ・・・」
「俺を一人で寝せる気じゃねえよな?」
ゆっくりと立ち上がって牧野に詰め寄る。
もう抗うのは形だけ。
安易に壁に追い込んだ華奢な身体。
壁に押し付けられて身動きできない牧野からゆるりと力が抜けて柔らかくなった。
耳元に顔を近づけてつぶやいた。
「幸せを感じたら笑えそうなんだけど」
絹ごしに感じた温もりをすぐにでも直に感じたい。
牧野の鼓動の早まりを感じて、俺の心も、体も駆け上がる。
「明日は早いんだからね」
牧野の声は甘く俺を捉える糧となる。
重なった唇が牧野の口元から漏れる甘い声も飲み込んだ。
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らんらん様
私も司君が幸せなら幸せです ← 本当か!