思い出は夢の中で 10
コンドー編からバイト編に突入です。
何時からそんなくぐりになったの~
*「あっ、話には聞いてます。よろしくお願いします」
お店に入って「あの~」と口を開いた途端に飛んできた男性。
20代後半ってところか。
「店長の山中です」
「ああ」
不愛想に片手を出して道明寺が握手をした。
どう見てもバイトと店長の立場が入れ替わってるようにしか見えない。
「よろしくお願いします」
私が店長の前に差し出した手は道明寺にパチンとはじかれた。
何するの!と見あげた顔は「いい度胸だな」とすごんでいた。
握手もダメなんだ・・・。
「山田太郎君に花子さんでしたよね」
「太郎!」「花子!」
同時に発した声は冗談!と叫んでいる。
「なんで山田なんだ?」
「それより太郎と花子って・・・レトロ過ぎというか西田さんの趣味?」
「見本みたいな名前だよな」
「まあ、お前の場合は雑草が花に昇格したからまだマシか」
鼻先で道明寺が笑う。
「マシって、私は自分の名前を気に入ってるんだから」
道明寺の太郎の方が笑えるぞ!
「太郎お兄ちゃんッ」
ずーと、そう呼んでやる!
「社会後学のためと聞いてますから」
「こんな仕事は初めてですよね?」
店長の異常なまでの腰の低さ。
道明寺の遠い親戚というふれ込みは効いているらしい。
「当たり前だ」
威圧感満載で答える道明寺。
「さすが、親戚ですね。司様によく似てる」
「えっ!」
ここで道明寺がわずかに動揺を見せる。
「よく言われるんです。違うのは年の差くらいのもので」
横からそう口を出すしかない。
少しは大人な感じを見せろと道明寺を見た。
「時々あいつとは入れ替わって遊んでる」
ここでその言い訳か!
店長の顔も強張った。
オープン30分前、バイトは男ばかり店長を含め5人そこに私たち二人が加わった。
座席はお店の中に30席程度。
道路に面したオープンのテーブルが五つ。
ここは放課後の時間になると周りから集まる女子学生で埋まることを私は知っている。
「やっと女の子のバイト入れてくれたんですね」
泣く演技までつけて店長にお礼を言ってるのは太田さん。
人懐こい笑顔を見せる。
店長以外に道明寺の親戚という設定は知られてないらしかった。
「こいつに近づくな」
はじめから道明寺に威嚇されても躊躇することなく「お兄さん、怖い!」とおどけて見せる。
このお店のムードメーカみたいだ。
お店の説明を受けさっそく制服に着替えた。
道明寺の屋敷でお手伝いさんをしてた頃を思い出す私の装い。
「思い出すなぁ」
道明寺の緩む頬。
ニンマリするなッ。
道明寺は白いシャツに黒のベストにスラックスそして結んだ黒色のタイ。
ウエィターのありふれた制服も上品に着こなす。
上質のタキシードを身に着けてるイメージ。
シックな装いが全身の鮮やかさを引き立たせてる。
ウエィターには見えない。
そしてお店はオープンの時間を迎えた。
お昼前から増えるお客。
最初に来た男性客は道明寺に威嚇されて逃げられた。
次に道明寺が運んだコップを3人の女性客の前に割れそうな勢いで乱暴に置く。
ちらちらと何か言いたげに道明寺を見ていた女性客が頬を強張らせた。
「ご注文は?」
不機嫌な声。
まだメニューを見せてないぞ~~~ッ。
「すいません。メニューです」
慌てて横から広げたメニュー表。
私の手から離れない。
んッ?
見てないし・・・。
女性客の視線は道明寺にくぎ付けで・・・。
「キャー、かっこいい」
声が上がった。
そしてつかまれた私の腕。
「あの人、道明寺様じゃないわよね?」
「こんなところでウエィターなんてやってらっしゃるわけないかぁ・・・」
「顔もだけどあのツンとしたところも似てない?」
憮然とテーブルの横に立ったままの道明寺をチラリと見ながら私への尋問は自問自答気味に小声で続く。
「ネームは・・・YAMADA」
「ねぇ、下の名前はなんていうの?あらあなたもYAMADAなんだ」
バイト中だと自分言い聞かせて笑顔を作る。
ピクリと頬が強張ってうまく笑えない。
予測はしていたことなのにむかついた。
「太郎です!」
「タロウ!」
一瞬止まった会話。
「名前なんてどうでもいいわ~」
完全に道明寺に見入ってる状態の女性客。
「ご注文は!」
道明寺に負けない不機嫌さで声を張り上げた。
拍手コメント返礼
b-moka様
山田太郎に花子と安易につけてしまいましたがおもしろいと一人爆笑してました。
F3との絡み模索中です~。
もし出会ったら未来が変わるとかありかな?
美優様
司のオーラは予想通りですよね♪
司のちゃぶ台返し案外つくしがやったりして~。
nonno様
座布団3枚もいただけるんですか♪
10枚たまるまで頑張ります。
ご褒美は~♪
楽しみにしております。(冗談ですよ~)
司だけじゃなくつくしも不機嫌。
二人で不機嫌になったらどうなるんでしょうね♪