星を掴むその日まで 2

若かりし日の西田さん。

どんな姿を見せてくれるのか!

ちびギャングの司君も実は気になっています。

西田さんって苗字しかついてなかったはずとここにきて気がついた私。

浮かんだのは一徹!

これじゃ巨人の星だ~ 星一徹! 却下

*

颯爽と風を切って歩く。

その周りにはダークスーツの集団。

道明寺楓。

そのすぐ後ろの従う秘書は三名。

私はその一番下っ端に今はまだ過ぎない。

チョロッと見えた小さな影はすぐに柱の陰に隠れる。

クルクルの黒髪が隠れてませんよ坊ちゃん。

楓様はチラリと視線を向けて足取りを崩すことなく規則的なヒールの音を響かせている。

熱い眼差しはそのまま置き去りにされたままだ。

会社でのクールさは屋敷の中でも解除されない。

ご自分のお子様たちにさえその振る舞いは甘えを許さない。

「いずれはこの道明寺を継いで人の上に立つのだから」

その視点だけが優先されてる教育。

私に口出しで来ることではないが時としてコクに見える親子関係。

優しく見つめるまなざしはすぐに仮面の下にしまいこむ瞬間があるのを私は知ってます。

寂しくはないのですか?

時折心の中でそう投げかけている自分がいる。

「失礼します」

私が抜けても支障がない時間。

「坊ちゃん。お母様は忙しいのです」

優しくなでるように置いた手のひらは不機嫌に払いのけられた。

子ども扱いするなとでもいう様にぷいと横を向けた横顔。

寂しさを隠そうとする心が忍びない。

まだ小学校にも満たない子どもが母親の愛情を求めてもすげなくされる境遇は私と似ている。

「坊ちゃん」

数メートル先で聞こえる若い女性の声。

「先日は失礼しました」

私に気がついて頭を深々と下げて立ち止まった。

「稲美さんでしたね」

「あっ、ハイ、槇 稲美です」

「私は秘書の」

「知ってます」

途中で遮られた言葉。

「秘書の西田さんですよね?」

心なしか彼女の頬がわずかに染まる。

「あっ、若い人はあまりいらっしゃらないのでなんとなく・・・・」

「西田 一です」

彼女のウソのない純粋な仕草は心地よい。

いつもはしーんと静まり返っている広々とした屋敷内に流れ込む春の光を感じた。

人の先ばかり考えて、裏を読んで対処する自分が忘れてる素直さ。

なんとなくホッとする空間は彼女が持って生まれたものなのだろう。

「これはあなたのですよね」

ポケットにハンカチに包んで入れていたロケット。

取り出して手のひらに乗せる。

「えっ?あっ」

落としたのも気がついてなかったらしい。

この抜けてる感じは坊ちゃんのいい遊び相手になりそうだ。

「すいません」

「あなたは謝ってばかりですね」

「えっ、すいません」

「ほら、まただ」

「あっ本当だ」

この屋敷に来るようになってから初めて笑った気がした。

拍手コメント返礼

Gods&Death様

西田さんがカッコよくなりすぎるとイメージが・・・(^_^;)

まあここは良いですよね。西田さんがあくまでも主人公ですから~

ここでは司君のいじらしさを堪能♪

no***様

司を気に帰る西田さん。

ここから二人の関係は始まった♪

あの道明寺の家でお手伝いさん。

確かに謝る癖がついても不思議じゃないですね。

b-moka

今まで西田さんに名前がなかったのが不思議ですよね。

西田で十分だと司は良いそうですが(^_^;)

このお話も長くなりそうで・・・。

なおピン様

始まったばかりのお話に興味を持っていただいてうれしいな~。

西田さんファン多いですからね。

西田さんの若い頃のお話。それも女性がからむ内容。

書くとは思っていませんでした。

本編の方も頑張ります♪