思い出は夢の中で 26

このお話はこのままいくと色呆けに陥りそうです。

コメントからいただいた制服コスプレから発想がひろがってしまいました。

新婚気分の二人のノリも書きたかったんですがそれはまたの機会に♪

*

「お前、やたら元気いいな」

キッチンのテーブルに座らせられた俺の目の前に並べられる朝ごはん。

「日本人の朝食はやっぱりこれよ」

ごはんに味噌汁。

黄色いたくあんに焼き魚。

俺んちじゃ見られない朝の献立。

焼きたてのパン数種類。

コックが目の前で作る卵料理つーのが俺の中での常識。

「うちじゃ、滅多に魚は出てこないんだけど」

今日は特別って、意味が俺には理解できない。

このちっこい魚って食べれるのか?

めざしって魚を初めて知った。

それも少し焦げた頭からかぶりついて食べる。

言う通りに食えって言われても勇気がいるぞ。

目をつぶってかじって飲み込んだ。

まずくはない。

けど、もういいわ。

まあ・・・。

牧野がやたら楽しそうで嬉しそうだから俺も文句はない。

ただ不満があるとすれば朝目覚めて抱き寄せようとした柔らかい温もりは影も形もなかったってこと。

「コンビニに何でもあるから助かったわ」

いないと思ったら朝の食料品の買い出しだった。

少しでも長く俺にくっ付いていたいとか、離れたくないとか、抱きしめていたいとか思わないのかッ!

全部同じ意味、離れたくないのは俺だけ?

食欲に負けている。

「道明寺と向かい合って私の作った朝ごはん食べてもらうのって初めてだね」

「そういやそうだな」

昨日まで朝になるとケータリングで届けられた朝食。

西田に牧野が断っていたのを何気に聞いていた俺。

これで朝は邪魔されずにゆっくり過ごせるって思っていたのは俺だけだったってことらしい。

「結婚したら普通はこんな感じ何だろうけど、道明寺とじゃ無理だろうね」

「無理ってんだよ」

楽しそうな笑い声で無理って否定されるとムッとする。

結婚したらまではオッ♪て気分だったんだぞ。

「ほら、道明寺の屋敷じゃほかの人が全部やってくれるから」

「お前がやりたいんなら全部他人は追い出してやるよ」

「あのねッ。道明寺の調理場から自分の部屋までどのくらい離れてると思ってるのよ」

「湯気を立ててた料理も冷めておいしくなくなっちゃうわよ」

「お前専用に台所を作ってやるよ」

そこから俺の前に並べられる牧野の手料理。

こいつと付き合いだして俺も庶民の味を覚えてる。

わりかし好きなんだよな牧野の手料理。

「おいしいっ」て不安げな表情が「うまい」って俺の一言で花開く笑み。

その瞬間がすげ~愛しくなる。

これまで数回しかねぇけど。

「ピンポ~ン」

いい感じをさえぎる玄関のベル。

西田?類?総二郎?あきら?誰だっ!

「誰が来たのかな?」

「出なくていい」

「そんなわけにはいかないでしょう」

「居留守を使ってるなって、文句は言わせねぇよ」

「だめ、出る」

聞き分けのない牧野はそのまま席を立つ。

しばらくして戻ってきた牧野の両手は大きめの箱を抱えてた。

「宅急便、道明寺宛だけど・・・」

オッ♪

俺のテンションも上がった。

「なんなの?」

「これか?これはお前のだ」

「この重さから言ったら・・・洋服?」

「まさかここにきてパーティードレスとかじゃないよね」

訝しげな表情が浮かんだ。

「ここでお前をどこに連れて行くって言うんだ」

「道明寺からプレゼントされる服って絶対普段着じゃないもん」

確かにこれも普段着じゃない。

「これって・・・」

かさかさと箱を開けて取り出した茶色のジャケット。

「英徳の制服じゃない」

驚きの声はそのまま表情に現れる。

「懐かしいだろ」

「前にお前の制服がめちゃくちゃにされて俺が準備したことあったろう。あんときのこと思い出して、もう一度作って持ってくるように手配してた」

「まさか・・・これを着ろって言うんじゃないでしょうね」

「着なきゃ意味がないだろう」

呆れたような表情が牧野に浮かぶ。

「まさか・・・コスプレの趣味があった?」

俺から少し身を引くしぐさの牧野。

制服の牧野を押し倒して脱がせる!

それはそれでいい度合いに高まりそうだ。

今のとこそんな必要ねぇよ。

お前と一緒にいるだけですぐその気になって抱きたくなる欲望。

押さえるの大変なんだぞ。

でも・・・

高校の牧野とやってるみたいな感覚は捨てがたいかも。

プロポーズした後もずいぶん待たされたしなッ。

「二ヤつくな」

牧野の声で思考をもとに戻した。

「違うぞ」

「ほら、高校の時って俺たちのデートいい思い出がないだろう」

庶民デート、上野の銅像のまえで待ち合わせ。

結局は喧嘩別れして終わった。

初めてのデートの記憶。

「これを着たお前とデートしたら新しい思い出が作れないかなってさ」

手に持った制服のジェケットにスカート。

確かにいい思い出はないかもって牧野はつぶやく。

「だからって、制服じゃなくても・・・」

「高校の時代に戻った感覚がほしかったんだよ」

「お前の初恋を俺にするのは無理そうだからこれくらい付き合え」

「しょうがないな・・・」

しぶしぶと牧野がウンと返事した。

制服に着替えた牧野は見た目はそのまま高校生のまま。

変わんない。

17歳の牧野を並べてもどっちがどっちか見分けがつかないかしれない。

本人だから当たり前か。

女子大生の色気を牧野に探す方が無理だよな。

こいつと出会ったころに戻った気がした。

「制服が一番かわいいかも」

「それ褒めてない」

クルッとスカートをなびかせて体を牧野が一回転させる。

まんざらでもないようだ。

「それでデートな」

牧野の表情がぎょっとなって少し照れたように笑った。

拍手コメント返礼

ゆげ様

制服してデート♪

無事に済むのか!

20過ぎて高校の制服着せられるって・・・

つくしちゃんなら大丈夫だと思ってしまってる私です。

>F4とつくしちゃんに遭遇してほしいです♪

つかつくのどちらかが入れかわって、過去と未来の組合せのつかつくが見てみたいです。

きゃーーーーッ

今回は私の想像読まれちゃったみたいです。(笑)