ソラノカナタ 17
いつもの週末は別なお話を更新するのが多いんですが、皆様の熱い視線を感じて今日もこのお話を更新させてもらいました。
ほかのお話を忘れそう(^_^;)
今回は司サイドのお話です。
*傷ついている。
牧野を追いかけられなかったのはそのせい。
言い訳だ。
どんな苦境も苦痛も普段の俺ならすぐに跳ね返す。
お前に限ってはどうもうまくいかない。
俺が感じたショックの大きさは自分でも情けないくらいだ。
「ばか」って、泣きそうな顔が俺を見て笑うのをもう一度抱きしめたい。
ポケットの中に入れた指先で触れる土星のネックレス。
俺がもっていてもしょうがないだろう。
お前なら面と向かって「いらない」と突き返すはずだよな。
それも出来ずに俺から離れるつもりでこれを置いて行ったのなら俺へのダメージは半端じゃない。
どれだけお前を傷つけてしまったのだろう。
デカすぎだろう。
同じ構造のホテルの中。
階を降りても迷路を迷ってるみたいで出口が見つからない。
どっかであいつも迷ってんじゃないか?
そんな思いで駆け抜けていく。
午前中のホテルはチェックアウトの客が入れ混じって混雑していた。
スーツケースが俺を阻む様に床に置かれてる。
それを飛び越えてまた走る。
驚いて俺を見上げた白人の女性。
すべてが俺を陥れた女に見えてきた。
今頃あの雇い主は俺を相手にするどころじゃないはずだ。
自分の会社の株の心配に躍起になってるはずだから。
エントランスから3階まで吹き抜けの1Fフロアー。
3階から下を眺めて牧野を探す。
視線が絡まったのは相手先の国の王子。
視線は俺から外れることなくつながったままだ。
自信ありげな微笑みをうかべて外された視線。
そのままお付きの者と言葉を交わしながらホテルの出口へと向かって歩いていく。
思わずその後ろの頭一つ分低い黒髪の後ろ姿。
牧野じゃねぇか!
「牧野!」
手すりから身を乗り出して叫ぶ俺。
気がつかない様子で牧野が俺から遠ざかる。
「あぶないです」
両脇から抱きかかえたのはSP。
「部下が牧野様がロビーにいらっしゃったといま連絡がありました」
「分かってるよ。あそこにいるだろうがぁ」
出口の方向を荒々しく指で刺す。
「えっ!」
声を上げたSPの方が今度は手すりから落ちそうな状態で身を乗り出した。
「追いかけろ!」
俺より先にSPがマイクを通して部下に声を張り上げた。
「たくっ」
そのまま全速力でらせんの階段を一階まで駆け下りる。
牧野は丁度王子と並ぶように玄関の回転ドアを抜けていくところだ。
「牧野」
ベルボーイが俺の迫力に押されるように道を開けた。
滑り出すリムジンを見送るように俺の目の前に居並ぶSP。
突っ立ったまま呆然した背中。
そこに牧野らしき姿は見当たらない。
「牧野は?」
ピクッとなった数体の頑丈な体はそのまま緊張したように強張ってる。
目の前の背中を俺は押しのけて前に出る。
牧野を乗せた車をそのまま見送ってどうするんだッ。
「牧野を連れ戻す時間はなかったのか?」
「それが・・・戻りたくないと言われて・・・」
おどおどと絞り出すような声。
「無理やりでも俺の前に連れてくるのがお前らの仕事だろうがぁ」
SPの胸元を掴んで引き寄せる。
「心配いりません。王子の御一行と一緒ですから行先はわかります」
しめ上げられた狭まった喉の奥から必死な声が漏れている。
「それが一番心配なんだろうがぁ」
投げ捨てるように突き放したSPはよろけながらも数秒で体勢を立てなおしている。
流石にしりもちはつかねぇか。
それも今は気にくわない。
こいつらの無能ぶりにかかわってる暇はない。
ポケットから携帯を取り出して、携帯をかける。
長い呼び出し音の後に携帯はつながった。
拍手コメント返礼
じ**様
目撃させて目の前で連れ去れ~
最悪の展開ですよね。
携帯につながってどうなるかな~。
なおピン様
王子御一行とどこへ行く♪
以前の司なら相手が王子でも俺様で突っ走って行くでしょうけどね。
仕事がらみでどこまで7押さえることができるのか!
ここがポイントかな。
ゆげ様
今回は司が可愛そう~なんて気持ちもあります(笑)
でも手加減はしません!
電話に出たのは・・・
そこまであと少しです。
って、どう考えても次の話で分かりますよね。(^_^;)
ふ*様
すれ違ってる2人ってきゅんと来ますよね。
そして会えない展開。
これを乗り越えれば~
を期待して頑張ってもらいましょう。