ソラノカナタ 30

入れ替わらせるなんて西田さんの策士♪

きっと大好きな坊ちゃんをこれ以上苛められなかったのね。

単純に仕事に支障が出ると思っただけだったりして・・・

*

「お前の家で暮らすのは俺だ」

「えっ?そういうことか・・・」

そうかって思った瞬間は確かに喜んだ。

私の肩を抱く道明寺はすごく機嫌が良くて顔をほころばす。

西田さんがしっかりしてくださいって視線を送ってるんだけど・・・。

それよりまだ私は完全に機嫌を直したわけじゃないからね。

肩に置かれた道明寺の手を指先で振り払って落とす。

何でもないように道明寺の指先は腰のあたりから上腕を伝って左肩をガシッと鷲摑み。

今度は離れないって言われてるみたい。

「触らないでよね」

軽いタッチで触れられた絹ごしの指の感触。

それは嫌でも道明寺が私に与える一種の感情を呼び起こす。

指先を伝って唇が触れる肌。

熱い熱を素肌がおぼえてる。

途中で遮ったのは自分のはずなのに・・・。

私を追いかけてエコノミに乗って帰国した道明寺をうれしくないって思うはずがない。

『私が眠れなかったときアイツは知らない女性といたんだぞ』

あの時、確かに全身を割いた痛みは、道明寺が私に示す必死さが薬となって、傷が深くなるのを確実に防いでる。

きっとこれからも魅力ある女性が道明寺に近づこうとするのはありきたりなことで、興味ねぇって態度の道明寺に私は守られていたんだと気がついた。

それが外れた瞬間、こんなにも不安になるものだったんだ。

「恋人同士なんだろう俺たち」

「役になりきる必要はねぇ、本物」

耳元で囁いて道明寺はますます密着させる身体でそのまま玄関を出た。

背中に感じる視線に私の体はキュッと緊張してる。

きっと見せつけてやるって気持ちが道明寺の行動の中にあるはずだ。

丸わかりでアルにもジェームズさんにも対抗していたもの。

私が抵抗しないってわかった途端に、肩から移動した道明寺の腕は私の腰の辺りでどっしりと落ち着いてる。

指先で弾力を楽しんでる様な弾む指の動き。

掌でガシッと押さえ込んでやめろって視線を上げる。

「潤んでるぞ、もしかして、誘ってる?」

「ダダ誰がッ」

唇に触れる柔らかな感触。

「俺以外にその表情見せてねぇよな」

すぐに離れた唇は少し不機嫌そうにつぶやいてクスって笑みを浮かべた。

街の中を元来た道を引き返す車。

最初と違うのは私の横にはアルと服を取り換えて中身が変わって道明寺が居るという事実。

アパートの前に音もなく停車する黒塗りのリムジン。

この光景には近所の人は慣れている。

誰が乗っているかも暗黙の了解気味。

噂が週刊誌をにぎわさないのは私が一般人で大学生だということで情報操作を道明寺がやってるせい。

結婚の発表をしたら解禁だからなって、道明寺は楽しそうに週刊誌にとられた2人のデート写真を目の前でひらひらさせていた1か月前。

私の顔は今のところ目元を隠す黒い長方形が貼られてる。

某大学生。同じ学校の後輩って書かれていれば英徳だってわかるツーの。

車の後部席を開けるSP。

降りた先にはさっき家を出るときに見送っていた近所のおばさんがほうきを持って立っていた。

帰ってくるの待っていたってカモフラージュがありあり。

「つくしちゃん、誰?」

私の後ろから降りてきたフードですっぽりと頭を覆った道明寺。

「友達です・・・」

聞くまで逃がさないわよって腕を取られてブロック塀の近くまで連れ去られてしまった。

道明寺に背中を向けたままで尋問は続く。

「道明寺の坊ちゃんには内緒にして上げるからッ」

おばさんが道明寺としゃべってるとこ見たことないんですけど・・・。

しっかり秘密を嗅ぎつけた特ダネって感じの好奇心を見せつけられている。

「俺の彼女を返してしてもらえる?」

おばさんの後ろから伸びてきた長い腕が私をそこから連れ出した。

目元から見える黒いサングラス。

流石に顔はわからないが、周りが委縮するには十分の迫力。

その迫力でおばさんもごくりと唾を飲み込んだまま「ハイ」って小さくつぶやいて体を少し横にずらした。

そのまま階段を上がってアパートの部屋に戻る。

玄関でようやくフードを道明寺が外した。

「ただい・・ま」

人気のない部屋。

「パパ、ママ、進」

返事なし。

こたつの上に小さなメモ。

「お邪魔になるといけないからパパたちは出ていきます。

王子さまを選んでもパパたちは心配しないから。

一週間分の食料も備蓄してます」

笑顔のにっこりマーク付き。

パパたち王子と私を二人っきりにしても問題ないって思ってる?

年頃の娘だぞ!

それに道明寺って婚約者もいるのにッ。

金持ちなら誰でもいいのかうちの親!

「どうした?」

「えっ!何でもない」

このメモを道明寺が見たら・・・

荒れる!暴れる!身が危険!

道明寺から隠す様に紙を持った腕を背中に回して手の平で包み込んでクシャッと丸めた。

拍手コメント返礼

ビリジ**様

ご訪問ありがとうござます。

中毒ってコメントで朝の星座占いで最下位だった気分が上向きになりました。♪

今日も中毒を緩和するために頑張ります。

なおピン様

お疲れ様です。

以前もだったんですけど最近ブログが混み合ってアクセスがうまくいかないことあるんですよね。

私も時々アクセスが遮断状態になってUPできない~って思うことありますもん。

午前中とかだと一番安定してるかな。

たぶんコメントができなかったのもそのせいかもしれませんね。

ブログ引越し考えようかなぁって更新ができないときは本気で考えちゃいます。

流石牧野家のパパとママですよね(笑)

誰が一番おいしい思いをするんだろう?

司を溺愛するなおピン様のために!

いけるかなぁ(^_^;)

ゆげ様

司の仕返し、つくしとの痴話げんか。

はいはいーッ!

もうお話がぬっと頭から目が出ちゃったじゃないですか。

横道にそれてしまいますが、UPしよう♪

>あの時確かに全身を割いた痛みは道明寺が私に示す必死さが薬となって傷が深くなるのを確実に防いでる。何かこの表現、直球できました。すごくすごく好きです。

うれしいな。

司の行動がつくしの気持ちを和らげているって表現を表したかったんですよね。

だからこのまま司が突っ走っても大丈夫だって展開に持って行けるし~♪

近所のおばさんほうきを持ってどのくらい待っていたんでしょう?

その間にも前を通る知り合いに「ちょっと~」って噂話をしてそうじゃないですか?

このスピンオフも面白そうだわ。

ダメだ~、本題から妄想が飛び火してます~。

オリキャラ人気投票っちゃいましょうか?

誰が一番になるか気になってきました。