SP物語 5(ソラノカナタ スピンオフ物語)
本編「ソラノカナタ」に追いついて追従して読めるようにするのが目下の目標です。
追いつけるかなぁ・・・。
本編の更新を止めるのも問題だし・・・
ジレンマに陥りそうです。
本編「ソラノカナタ」8、9話までのスピンオフ物語になります。
*落ち着きなく歩き回る。
時々押さえつけてた気持ちを吐き出すようにドンと大きく壁が音を立てた。
苛立ちは時計の針が1秒動くたびに強くなる。
さっき見た代表は幻か?
彼女に見せた甘い優しい雰囲気はすぐに遥か彼方の地球の裏側、地中深くまでもぐりこんでるみたいだ。
驚きを隠せず興奮気味の先輩も代表のいつもの姿に元のテンションに戻っている。
俺もこのまま土の中に埋まった方が心臓が持ちそうな気がしてきた。
目の前をコツコツと足音だけが響く。
時々作業中のエレベーターの回線から小さな火花が飛び散る。
それを見つめていた代表が「はーっ」と息を吐いた。
それにつれれるように相葉先輩の肩が上下する。
代表の足音が止まるたびにピクッと体に緊張が走る。
この状態が続けば続くほど体の疲労が蓄積されていく。
今日の半日で徹夜してるような怠さ。
息を殺して見守ってる緊迫感。
時々聞こえるのは作業員と従業員の英語での会話。
早くしろとか、急げとかの内容しか聞こえてこない。
その声が聞こえるたびに代表の表情に険しさが書き込まれていく。
ようやくエレベータの階数を示す数字にライトが点灯した。
そこにいた誰もがそのライトの点滅を見つめて息をのむ。
「わーっ」と上がる歓声の中に安堵のため息が混じる。
その一番に大きかったのは代表のそばに張り付いてるホテルの支配人らしきスーツ姿の初老の男性。
男性の額から吹き出す汗。
それを拭うこともできず恐縮気味に頭を下げる。
あの冷気にさらされたら汗も凍りそうな気がした。
静かに開くエレベーターの扉。
わずかに微笑みを浮かべたその顔がそのまま固まった。
横顔に浮かぶ不機嫌さ。
扉が開いた瞬間にエレベータの中に飛び込んで行く代表。
それとも扉の中から飛び出した彼女を抱きしめるなんて映画的な感動の場面を浮かべてた俺。
ここで最高のBGMが流れる場面。
ドラマのクライマックス。
見た目が派手な代表だからそんな演出があっても驚かない。
それくらいのことはさっき俺が見た代表ならやりそうな気がしてた。
拍子抜けだ。
俺の横の先輩の表情は代表以上にこわばってる。
「どうしたんですか?」
「一平・・・覚悟してた方がいい」
えっ?
なにを?
先輩の震える視線が示した先で男性二人の間に座ってる女性。
一人の肩にもたれかかってるように目を閉じている。
眠ってる雰囲気。
銃撃戦の緊迫の中、密室で知らない男性と閉じ込められてる。
この状況で眠れるって・・・
どれだけ心臓が強いのか、それとも警戒心がないのか?
代表と付き合えるってだけで心臓が一般人より頑丈にできてる気はするが、どっちだ?
安心した無邪気な寝顔にしか見えない。
それも若くて見るからに品のある上品な顔立ちのイケメンの肩に寄り添う彼女。
草原の中でそよ風に吹かれてる穏やかな背景まで見えそうだ。
今までのこっちの心配な気分はどうなる?
本気で彼女を心配してた代表の姿を見ていただけに代表に同情したくなった。
代表が気分を慨するのも分かる。
さすがにこれは俺も嫌かも。
・・・で・・・。
先輩の言っていた覚悟って必要なのか?
覚悟が必要なのは彼女の方なのでは?
先輩の言ってる意味が俺には理解できずにいる。
「Isn't there any injury? 」
その声に促されるように人影が動く。
「どうみょうじ・・・」
静かに開いた瞳は大きくて、まっすぐに視線は代表に注がれる。
少し困ったように小さく震える唇。
代表の表情は冷たいままなのに体からは熱い熱を発してる様。
これ以上そばに寄ったら火傷しそうな雰囲気。
彼女が立ち上がって1歩足を踏み出したのを合図のように代表がくるりと背中を回した。
そして彼女を無視するように歩き出す。
その代表を追う相葉先輩。
え?
俺はどうすれば・・・。
顔を右と左、左右に振ってきょろきょろと交互に代表の背中と彼女の戸惑った表情を眺めて行動を起こせずにいる。
「違うから」
悲痛に聞こえた声。
転びそうになった彼女はパンプスを俺の目の前で脱いで素足で駆け出した。
そして彼女を追う俺。
ここまで行動が決められないってことは、Spとしては情けない。
「大丈夫ですか」って手を差し伸べるとか、代表はこっちらですって彼女を誘導するシュミレーション。
今さら遅すぎだッ。
耳元のイヤホンを直しながら襟元のマイクで相葉先輩に呼びかける。
返事がないまま前を走る彼女を追いかける。
廊下の交差する左から伸びてきた腕に引き込まれるように彼女の姿が消えた。
「先輩ッ!」
早足からスピードを上げて駆け出しながらもう一度相葉先輩を呼びかける声。
ここで何かあったら言い訳もできない。
「大丈夫だ」
その声が聞こえた瞬間、代表に腕を取られた彼女が俺の目に飛び込んだ。
そのまま俺の脚の動きも止まる。
「どう・・・みょうじ?」
彼女を見つめる冷ややかな視線。
「どこ行くつもりだ」
「どこって、道明寺を追いかけていた決まってるッ」
彼女の言葉が終わらないうちに強引にその腕を代表が引き寄せる。
そのまま崩れるように代表の胸の中に落ちていく彼女。
重なった唇。
あっ・・・。
目をそらすべきなのに見入った。
先輩が周りから二人を隠すように体を回す。
先輩と視線を合わせた俺にまわれって人差し指を下に向けてくると回して合図を送ってきた。
こんな時は周りに注意を払うのが俺達の仕事だった。
脚を大股に開いて両手を伸ばして大の字で踏ん張る。
少しはこれで見れる範囲が狭めることができないか?
「誰にでも懐くんじゃねぇよ」
見えない背中越しに、さっき俺が、想像したようなドラマの演出が始まってる。
なんとなくむず痒い。
聞こえてきた代表の声が少し甘くなった気がした。
拍手コメント返礼
ゆげ様
本編が先に進んでるのでこの後のことを考えるとまた違う面白みで読めますよね。
この流れ書いてても癖になりそうです。(笑)
スタバで!
私も読んでるところにお邪魔したいわ♪
私はコメントの投稿がスマホにメールで送られてくるのでまずそれで読むのですが、ニンマリしてるといつも横から子供にスマホを横取りされます。
週末は特にその確率が高くて(^_^;)
Gods&Death様
司に同情してくれる相手出現!
同情されてくねぇって言いそうですけど(^_^;)
責められるのはつくしのはずなのに~SP君大変だ~~~~~。
ひつじ様
つかつくはこんな感じが楽しめますよね。
なおピン様
本編があるからこのお話も楽しくなる♪
本編はどうなるのか~。気になるところですけどね。
本編では表現できなかった部分、違う視点に発想を置いたらまた違ったつかつくが見れそうな気がします。
これが二次の面白さでしょうか?
しかし司のSPは別な苦労がありそうだ~。