SP物語 7(ソラノカナタ スピンオフ物語)
本編の方は順調のようで~♪
牧野家の前にもこの二人は張り付いてるのかな?なんて思いつつ・・・。
こちらは最悪の状況に一歩足を踏み入れたところです。
*「息が・・・できない・・・」
途切れがちに聞こえた声。
見えてない分だけ想像は膨らむ。
ダメだッ。
周りに意識を集中!
仕事だ!
仕事!
しーんと静まり返るホテルの廊下。
見渡せる長い廊下に人影は無し。
それがなおさら背中に感じる二人の熱をリアルに感じ取ってしまう。
「誰か来たら困る」
焦りの声に交じる色気。
誰も来させません!
妙に身体全身に力みが入った。
バサッっと小さく響いた音に体を振り向かせたのはSPとしての反応。
床に落ちた男物のジャケット。
代表も俺たちもジャケットは脱いでいない。
誰のだ?
「返さなくっちゃ」
「そんなのほっとけ」
「借りたものは返さなくっちゃ」
少しずつ不機嫌が混じる低い声。
相対する不機嫌な感情には動じない明るい声。
なんとなく・・・。
場面が切り替わった。
甘いラブシーンから喧嘩別れにつながるような雰囲気。
この速さはドラマの場面変換の切り替わりの速さ。
視聴者としては物足りないような・・・面白いような・・・。
「クリーニングに出さなくていいかな?」
落ちたジャケットを拾いあげてほこりを払いながら代表に無邪気な笑みを向ける彼女。
「返すんならすぐに返えせ」
すぐに終わらせたいって意思が不機嫌に上乗せされてる代表。
じろりとその視線を向けられたのは俺。
えっ!俺!
心のなかで人差し指を自分に向けた。
ガシッと目をつぶったまま彼女の腕を取った代表が目の前を通り過ぎるのを待つ。
冷たい風がさーっと目の前を通り過ぎる。
コ・・・ェッ。
「大丈夫か?」
相葉先輩にポンと肩を叩かれて閉じていた目開く。
「お前の気持ち、俺も分かるよ。そのうち慣れるから」
肩に置かれた相葉先輩の手のひらがいくぞって俺の体を前に押し出した。
「先輩って代表のSPについて5年でしたよね?」
「あぁ」
代表と彼女が付き合ってすぐって頃だったって聞かされた記憶。
まず、最初は彼女を拉致する手伝いをさせられたって軽く思い出を聞かされた。
だから今回も屋敷から彼女を眠らせて連れ出すことにも慣れていたのかと納得した俺。
「そのころからあの二人って、ああなんですか?」
「ああって?」
「彼女の態度で代表の気分が180度変わるみたいな・・・」
「半年もすればなれるよ」
「あっ、一平、今なら今回の業務でならされるかもしれないな」
慣れるって・・・
そんなにすぐ慣れるものなのか。
今までのことはほとんど夢じゃないかと思ってる節が俺にはある。
相葉先輩がギクッとなって足を止めた。
エレベーターの前には長身の男性2人。
一人はワイシャツ姿のままで・・・。
さっき彼女が頭を肩に預けていた相手。
代表の不機嫌な意味がここで理解できた。
確かに会わせたくないよなぁ。
「ありがとうございました」
頭を下げて彼女が差し出したジャケットを男性は「返さなくてもよかったのに」とにっこり微笑みながら受け取った。
「世話をかけたようですいません」
そつなく笑顔を作る代表。
代表のこめかみがピクリと動いてる。
背中に暗雲が見えて思わず目をこすった。
嫉妬+警戒心の二重のバリアーを代表が彼女に包んでる。
俺なら絶対近づけない!
「私たちの方こそつくしのおかげで楽しい時間を過ごせました」
緩やかな柔らかい声。
普通ならありきたりの対応。
彼女も愛想よく笑みをつくる。
代表の笑顔がこわばった。
ピクリとも動かない口元。
端正な顔立ちに冷ややかさが加わるとそれだけで威圧感は増大し存在感は強い重圧を生む。
「あっ・・・」
代表の異変に気が付いたように彼女が悲鳴に近い声を上げた。
「また会おう」
わざと代表を煽るように彼女のそばによる王子。
余裕だ。
この人すげー。
本気でそう思う。
「失礼」
その場から足早に離れるように代表が踵を返して歩き出す。
俺たちもその後を追う。
「どどどうみょうじッ!」
「エレベーターから遠ざかってるんだけど・・・」
「エレベターは一つじゃねぇよ」
「力を緩めてくれるかな・・・」
代表の声はほとんど怒鳴り声に近い。
彼女は代表の怒りを抑えようと哀願に近い声色をにじませる。
エレベーターに彼女を放り込む様に投げ入れた代表。
乗り込んだ代表の正面と向き合う俺たち。
一緒に乗っても大丈夫か。
その思考を打ち切るように相葉先輩に背中を押されて同じ空間で息を吸う。
代表らを背にしてエレベーターの扉の正面に立つ相場先輩と俺。
この重い空気は今日1番。
いや俺の短い25年の生涯でも随一。
首に刀が下される瞬間を待つってこんな気持ちなのだろうか。
無言の気まずい雰囲気のそのままにエレベーターは静かに上昇して止まった。
「すごい、何もなかったみたいだ」
「ドン!とかバン!とかすごかったんだから」
彼女は本当に驚いたようで・・・
そして俺もこの数時間で何事もなかったように片付いている光景に驚きは隠せない。
「早く来い」
一瞬代表の不愉快さを忘れたような彼女の態度に代表の苛立ちが深まってる。
「本当に痛いんだから」
握られた手首を気にする彼女。
このまま彼女に手を上げるとかはないですよね?
「止めなくて大丈夫ですか?」
「さっきの甘いやつを考えたら大丈夫だろう?」
ニンマリとつぶやく相葉先輩。
確かに恋人の仲直りって言ったらそれが一番で・・・
「朝になったら機嫌が直ってるのが今までのパターンだから」
やんわりとそれを口にする相場先輩。
興味本位だけならす~げ卑猥な妄想をしていそうだ。
でも相葉先輩の表情にはいやらしさがない。
スイートルームに消える二人の姿を黙って見送る。
どうか代表の機嫌が直ってますように。
祈るような気持ち。
たぶん相場先輩も同じ気持ちなんだと気が付いた。
拍手コメント返礼
b-moka様
お疲れ様です。
疲れがなかなかとれないですよね。
仕事をしていた時に夜勤をしてたのですが20代の時は朝仕事が終わって遊びに行っていたのに30代を過ぎると
そんな元気がなくなって疲労がなかなか取れない自分に愕然とした記憶があります。
今はのんびり主婦の生活。
だからこのブログも更新できるんですけどね。
このお話はあとの展開が分かってるからこその面白さってありますよね。
かわいいそうですけど(笑)
なおピン様
この後のことを考えると・・・。
甘アマが見れただけでも十分価値があるのよ~と教えてあげたい気も(^_^;)
そうなんですよ。見れなくて、
Mステは見れます♪
ケーブルからの鹿児島放送で♪
でも今日はPTAの役員会があって、無理かも(/_;)
ゆげ様
朝になって最悪の展開になってるのを私たちは知ってますからね♪
この二人の心境を考えると・・・。
つかつくのSP一度体験したら病みつき~。
一平君なれるでしょうか?(笑)