思い出は夢の中で 39(完)

これでやっと一つ終わることができる。

ただいま頭の中は5分割?それ以上かもしれません。

お付き合いありがとうございました。

一応番外編を少し考えてはいます。

*

「本当に、ここでこうしてるだけでいいの?」

マンションを出て、ただ座ってるだけの公園のベンチ。

時々ハトが飛んできて足元で地面をくちばしで突っついてる。

ハトを脅すように道明寺が靴底をバンと地面に叩きつけた。

少しイライラしてるのが分かる。

「西田がここにいろって言ったんだから、しょうがねぇだろう」

脚を組んで膝に肩肘ついて、それはまるで、自分に我慢しろって言い聞かせてるみたいにふて腐れてる。

黙ったままの道明寺がじーっと一点を見つめてる。

その先にはちょっと前に来た高校生らしきカップル。

雰囲気のままに肩に腕を回して、頭を預ける感じで傾けてるショートカットの女の子。

「俺たち・・・高校の頃はあんなイチャイチャしてなかったよな?」

「へっ?」

道明寺は何を考えてあのカップルを見つめてるのか。

イチャイチャッて、できるわけない!

いじめられてた私が、どうすれば道明寺にイチャイチャできるつーの。

ほとんどケンカ?

どう考えても私を好きだって思える態度を見せられた記憶はない。

「恵比寿ガーデンプレス」って、突然告げられてもあれがデートの誘いって誰が思うのだろう。

赤札の影響を引きづってるあの状況で『何されるかわかったもんじゃない』って思うのが普通だと思う。

それでも無視することはできなくて、待ってないって思いながら遅れて行ったガーデンプレス。

雨の中ずぶぬれで待っていてくれた道明寺は、凍えて震えてて、まるで捨てられた子犬みたいで・・・。

「ウソッ」

って、つぶやいてしまってた。

あの時、あの場所から、道明寺に対する感情が少しずつ揺れていたんだと思う。

道明寺が気になっていたのは初めて会った時からかもしれなって思えるのだから不思議だ。

「俺さ、高校でお前を見つけるとドキッとしてた」

「どう接していいかわかってなくて、バカやってた気はするけど」

カップルを見つめる瞳は少し照れくさそうに目を細める。

あんな風に過ごしたかったって言われてるみたいで、胸の奥の心臓を掴まれたみたいになった。

熱いものがのど元まで込みあげてくる。

道明寺を好きって自分で認めるまでずいぶん時間がかかった気がする。

家族や友達まで巻き込んで・・・。

死にそうになって・・・。

別れも経験して・・・。

こうして今ここに二人でいることは奇跡かもしれないね。

つーか。

過去にいるってこと自体普通はあり得ないよね。

「今でも覚えてるよ。道明寺がクマみたいに机の周りをぐるぐる回って突然デートに誘ったセリフ」

「お前、俺を数時間も待たせっぱなしにしたよな」

ベンチの背もたれにもたれ掛かって大きく広げられた両腕。

何か考えてるように上向いた顔はそのまま空を眺めてる。

「なんでそこだけ覚えてるのッ」

「俺を待たせるのはお前くらいのもんだろう。ほかの奴なら待てねぇし、1秒でも遅れたらぶんなぐる」

乱暴な言葉のわりには道明寺はさばさばとした表情を浮かべて私に視線を移す。

目を細めて優しく見つめる瞳。

その瞳に吸い込まれそうな気がした。

「俺は、今からもお前にはいろいろ待たされるんだろうな」

「えっ?そんなに待たせてることある?」

「自覚ねぇやつ」

「一番待ってやってるのが結婚だろうがぁ」

「大学卒業してからって言うのは一般的でしょう!」

「学生結婚してるやつらもいるぞ」

「道明寺の嫁になるのは大変なんだから、大学の4年間でも足らないくらいなんだからね」

どれだけいろんな事を学習させられてると思ってるのよ。

言葉を交わすたびに道明寺の顔が近くなる。

完全に腕の中に私の身体はとらわれていく。

「人目あるから!」

「見せつけてやればいいじゃん」

「恥ずかしッ」

「昨日は人目のある店の中で抱きついていたのは誰だッ」

「あのねっ、いい加減その話はわすれたら!」

本当にネチネチと珍しく道明寺が拗ねる。

「まだ、お前から抱きつかれてねぇーし」

道明寺の視線は一点を見つめてる。

私の胸に注がれたままだ。

「昨日、それ以上のことしてるでしょッ!」

凄いこと言ってないか?

道明寺がニンマリしてる気がした。

このままならベンチの上で押し倒されかねない雰囲気に動揺気味の私。

抱き着かれたままの腕を振り払うように勢いよく立ち上がろうと全身をバネにする。

「あっ!バカ!急に立ち上がるな」

「えっ!キャーーーっ」

ドテッ!

バン!

「イ・・・ッ」

ベンチごと後ろにひっくりかえって開いた目の前には広がる青空。

道明寺は私をかばったままの状態で強く背中を地面に打ち付けてる状態だ。

「大丈夫?」

「お前は、怪我してねえよな?」

「道明寺がかばってくれたから」

慌てて起き上がった私は道明寺を助け起こしながらつぶやいた。

「たく、お前と居ると寿命が縮む」

痛そうに歪む表情を見せながらクスッと小さく開く口元。

「おかえりなさいませ」

低く冷静な声。

公園には似合わない直立状態でカクッとさがる上半身。

まるで操り人形が頭を下げるみたいな西田さん。

「西田、お前は俺たちがこっちに帰る日にちと時間が良くわかってたな」

「あの時私はお二人の邪魔にならないところで見守っておりました」

西田さんに道明寺が私に迫ってるような状況を見られてたってこと!

恥ずかしいを通り過ぎて黙って見ていた西田さんを恨みたくなる。

「ベンチが倒れたと思ったらお二人の姿消えていて、駆け付けた私の足元にこれが落ちていました」

西田さんが私たちの目の前に見せたのは白い小さな紙切れ。

二つ折りの紙を開くと少し色あせた黒い印字。

レシート?

日付は20xx年X月x日 16時20分

時間までしっかりと読めた。

「このレシートは汚れてませんでしたから未来にお二人が帰るその日のものが偶然私の手元に迷い込んできたのだろうと考えたわけです」

「ご無事でなりよりでした」

ほっとしていいのか・・・。

喜んでいいのか・・・。

ただ受け取ったレシートを道明寺と二人で黙ったまま見つめてる。

こんなにしげしげとレシートを見つめることはこの先二度とないだろう。

過去にいた私たちも、今の私たちもずっと西田さんに守られているのだと思うしかない。

そうしないとすごく恥ずかしいところばかり見られてる気がするもの。

しばらくは西田さんと目を合わせられない気がしてきた。

「仕事が山積みになってますから」

何気なくつぶやいた西田さんに「予想してた」って、道明寺が横柄につぶやく。

「時間までわかってんなら2~3時間の余裕ぐらい持たせろつーんだ」

ふて腐れ気味の道明寺の声。

「なにか問題でも?」

相変わらずの無表情気味の声の西田さん。

まったく道明寺に動じてない。

「ねぇよッ」

道明寺が悔しそうに道端に落ちていた石ころをけりあげた。

END

このお話が終わったら新しいお話!

追加するつもりかい!と思いながら形は出来上がってるんですよね。

今度はお話を戻して花男リターンズその後のお話の第1話「それから」の時期。

つくし大学1年生の頃のお話にしようと思ってます。

「思い出~」の影響を受けた二人だったらどうなる?

こんな展開も面白いかと~。

どう思います?

拍手コメント返礼

935様

西田さんのお話がお好みで?

投票の結果はどうでしょうか?

b-moka

どこにいても活躍の西田さん。

ある意味司より怖いものが・・・。

司はきっと未来に帰ってもネチネチでしょうね。

それに切れるつくし♪

新しいお話はもうしばらくしてUPしていきます♪

サワ**様

ありがとうございます。

終わりました♪

楽しい要素がいっぱい隠れてるって感じで書いていても楽しい作品でした。

「それから」の磁器の二人の距離感。

また違った良さがありますよね。

なおピン様

今日もメール楽しかったです。

終わると寂しい気がするのは私も一緒で・・・。

もっと続けようかなぁって思っちゃうんですよね。

でも終わる。

>この二組のつかつくって、豪勢で得した気分が二倍でしたからね。でも新連載は、このお話を踏まえたうえで?!!メッチャ面白そう!!楽しみにしてますね。

あははは、楽しいお話にするつもりではおりますが、大丈夫かな~。

クー**様

お誕生日だったんですね。

おめでとうございます。

知っていれば、リクエストなんか受けちゃったですけど~。

歌をもとにした短編とかでもOK。

今からでもプレゼントしますよ♪

1週間のお話も長かったですね。

膨らんでいく妄想に私も乗っけてもらって楽しませてもらいました。

マッチの『ギンギラギンにさりげなく』に思わず爆笑!

すっかり司坊ちゃんにマッチの衣装を着せていた私です。

じ**様

わざわざのコメントありがとうございます。

お心遣いに感謝!

無理をなされないようにしてくださいね。