ソラノカナタ 36
*早口でまくしたてる声。
ガチャッと受話器を置く音。
不機嫌そうに電話機をにらみつけるアル。
顔のいい男って・・・。
冷淡な表情も人目を引くってことに再認識。
話し声の内容もわからないからアルの不機嫌な原因も理解できてない。
電源の入っていない暗いままのテレビの画面を見つめたままアルは大きく一つ息を吐いた。
「殿下・・・」
ジェームズさんの呼びかけでようやく私たちに気が付いたような表情をアルが浮かべる。
「今日は違うタイプだな?」
皮肉が浮かぶアルの口元。
道明寺と花沢類を比べてる?
王子と対面してる花沢類は表情を変えないままで王子を一瞥。
あっ・・・。
こいつキライって、花沢類の態度が私でもわかった。
王子を見えない存在にして無視する可能性が見える。
道明寺より気を使うかもしれないぞ。
人の好みに関したらF4で一番はっきりしてるのが花沢類かもしれない。
道明寺の場合は単なる俺様で、自分が1番なら他はどうでもいいってところがある。
人を寄せ付けない態度は花沢類のそれとはタイプが違う。
道明寺の方が扱いが楽だって思える展開がここで待ち構えてるとは思わなかった。
道明寺を仕事に送り出したことを後悔するってあるのかぁぁぁぁぁぁ。
「大丈夫だから」
花沢類が私の不安を感じ取ったようににっこりとほほ笑んだ。
「不機嫌の原因はエイミー様ですか?」
アルのため息のもとを探るようにジェームズさんが私たちの横でつぶやく。
エイミーって、誰?
「殿下の3つ下の妹君です」
説明を付け加えるようにジェームズさんが小声で囁いてくれた。
「あいつまで、日本に来る必要があるのか!」
「それも派手に貴賓としての来日だぞ」
叫ぶと同時に大げさに片手を振り下ろしてテレビのリモコンのスイッチをアルが押した。
60インチテレビに映し出される飛行機からにこやかに手を振りながら下りる若い女性。
アッ・・・
似てる。
アルの髪が肩を覆うくらいに伸びて、ナチュナルに化粧して骨格を華奢にしたら出来上がり。
○○○○国の第一王女来日なんてテロップ。
アレックス王子は極秘に来日中なんてのも白文字で流れ出てる。
「あっ!」
私と同時にアルも声は上げていた。
「ばれて大丈夫なんですか?」
焦りぎみでジェームズさんの顔を下から覗き込む。
「母国で王子を狙った首謀者はつかまえることができたと連絡がきてます。
もう心配はいらないのですが・・・」
途切れた声は他に問題があるような素振りに変わる。
「エイミーッ!何企んでる!」
画面に向かって脅しても返事は帰ってくるとは思わない。
実の妹にこの警戒は何?
場面は切り替わって記者会見の会場。
気品のあるにこやかな笑み。
本物のお姫様って雰囲気は期待を裏切ってない。
「アレックス王子も訪日中と伺いましたが?」
記者の質問に優雅な笑みが浮かぶ。
ここは向学のためとかプライベートでって答えが妥当。
「日本人の女性とアメリカから訪日してるはずですの」
あ~そうなんだ日本の女性とね。
えっ・・・
えーーーーーーッ
それって私のことっ!
驚愕の表情のままアルを見つめる。
「お兄様、今度は結婚する気かな?」
独り言のように小さくつぶやいた王女の声は高性能のマイクがしっかり拾ってる。
「あいつーーーーーーッ」
沸々と怒りがアル王子の顔を染めていく。
「完全に爆弾を放り込まれましたね」
やれやれとあきらめ気味の表情を浮かべるジェームズさん。
「王女の悪戯好きにも困りますね」
これが単なるいたずら?
一国の王女の発言だぞ!
冗談では済まされない事件に発展する可能性を含んでる。
「ニュースを司が見てなければいいけど」
ぽつりと頭の上から聞こえる花沢類の声。
見てなくても明日の新聞のTOPはこれでしょう!
目にしないはずがない。
「王子極秘の訪日の目的は結婚!」
スポーツ紙が赤く大文字で書いてるのが見えた気がした。
テレビの画面には正装してるアルの写真が画面いっぱいに映し出されてる。
昨日しっかり近所のおばさんに見らてるはずの私の隣に立つアルの姿。
アルと一緒にいたのが私って気が付いたら・・・。
そして道明寺の不機嫌な顔。
速攻で道明寺が現れそうな気がしてきた。
それとも私の家で仁王立ちで待ち構えてるとか?
ゾォクッ・・・。
背中に悪寒が走った。
拍手コメント返礼
haru*****様
お久しぶりです♪
類は一番扱いにくいかもしれませんよね。
司は扱いにくそうで単純なところあるし(笑)
いつも間で疲れるつくしちゃん♪
類の面倒を見るつくしちゃんというのもレアな気がします。
なおピン様
強烈キャラはなぜかアルくんの妹♪
小悪魔的に存在で書いていくつもりですよ。
DVD届きました♪
思ってもいなかったのでうれしいです。
夜中にひとりでゆっくり鑑賞させていただきます。