SP物語 9(ソラノカナタ スピンオフ物語)

本編では新しいキャラも登場SP君たちの試練は続く(^_^;)

投票の結果は・・・相葉君サイドのお話ということで、続きからどうぞ♪

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「部屋から一歩も出すな」

なんとなく・・・じゃなく、絶対的命令で言われるって思ってた。

鋭い冷たい表情に首を横に振れるはずはない。

「代表はひとりで部屋を離れました」

短めな報告の相手は西田秘書。

「危険がなければそのままで」

「パパラッチには注意を」

力づくで部屋に連れ戻せって言われた方が気が楽だ。

多少のけがは覚悟の上で人数的には何とかなると、護衛のSPの頭数を数えてた。

その必要性なしに安心できない悲痛感。

部屋の向こうの空気の重さがなんとなくそう思わせる。

「先輩!」

耳元に聞こえる一平の慌てた声。

「なんだ」

「代表が女性と一緒に部屋に入りました」

「・・・そうか」

その前に近づけるな!引き離せよッ!

いまさら無理かぁ。

たぶん代表の命には危険がない。

危険があるとすれば写真を取られる可能性の方だ。

女性を使って下品な噂を掻き立てて評判を落とすやり口は敵対する会社が提携の優位を覆すためによく使う。

婚約者を連れての渡米で、『一夜の浮気』

すぐにスキャンダラスな記事の噂が飛び交うには十分なエサ。

「一平、警護してるのが分からないように隠れてろ」

「写真を撮るような不審な動きするやつが現れたらつかまえろよ」

そう一平に指示をしてマイクのスイッチを切った。

「カチャッ」

背中に感じるドアの動き。

数センチ開いて俺の背中がドアの開きを止める。

「どいてもらえますか?」

振り返った俺はドアの開きを拒むように体を寄せる。

彼女の体が一歩前に動いて俺に接近。

彼女に触れたら後が怖いと浮かぶ代表の不機嫌な顔。

思わず反応した体が条件反射で数歩後ろに下がった。

うるんだままの大きな瞳がまっすぐに俺を見つめる。

落ち込んだ憂いの表情は、か弱げで思わずどうぞって言いたくなる気持ちをぐっと押さえた。

行かせることが出来るわけがない。

代表は女性とホテルの一室だ。

「部屋から、一歩も出すなと言われてます」

「道明寺は?」

「上のラウンジにいらっしゃるようですが」

ちょっと前までは確かにそこにいらっしゃいました。

「そこに行きたいんだけど」

「ダメです」

すまなさを押し殺してつぶやいた声は思ったよりも低くて冷たく響いた。

どうして?って表情が俺を責める。

今はこれが彼女のためだって俺も必死で耐える。

「今は待つのも秘策ですよ」

気の利いた言葉も言えない自分が情けない。

どんな秘策だよ。

ただ彼女を押し込めてるだけだ。

もっとスマートに女性を慰める接し方は学習不足。

こんな時の対処法は習ってない。

代表の命令じゃなくても、今は部屋にいてもらう様にお願いすることしかできないもどかしさ。

ラウンジに彼女を案内しても代表に会えるわけじゃない。

女性と消えた部屋に彼女を案内するのは言語道断、自殺行為だ。

いまならまだ間に合う?

そうとも言えない。

彼女が傷つくことには変わりはない。

代表が女性と一緒だという事実には変わりがないのだから。

いまは代表が帰ってくるのを待つのが得策だと思い始めてる。

部屋の中に入るようにと開くドア。

今はこれが俺の最善の意思表示。

寂しそうな背中を見せて彼女は部屋の中に消えた。

今夜は、代表と彼女、どっちについても気楽じゃいられない。

日本を飛び立った時の楽天的な気分は徐々に薄れている。

一平・・・すまん。

どうやら今までで最悪の護衛になりそうだ。

覚悟するようにぐっとまぶたを閉じた。

交代のSPと代わって一平と合流。

「変わりはないか?」

「もう朝ですよ」

眠たさに体力が消耗されて疲れた顔で力なく一平がつぶやいた。

「はぁー」

身体を壁にもたれさせて天井を仰ぎ見ながら一平は溜息をつく。

「おい」

隠れた俺たちに気が付かないままに遠くで何かがキラッとひかる。

カメラのレンズを覗き込む男が見えた。

気づかれないように男の背後に回り込む。

西田秘書の想像通りの展開。

もしかしてこのカメラマンをつかまえるために代表を囮にしたとか?

あの西田秘書ならあり得る。

静かな廊下にざわつく気配。

そこにはラフな格好に着替えたいつも俺たちが目にするつくし様。

疲れた表情は俺達と同様の不眠の顔。

部屋のドアの前でどうしようか悩んでるように立ち止まったままの彼女が部屋の呼び鈴に指を伸ばす。

押す前に勢いよく開くドア。

ワイシャツを羽織っただけの代表。

その代表の片手はバスローブ姿の色っぽい女性の腕をつかんでる。

何やってんですか!

心の中に叫ぶ声。

代われるもましたよ!

そんな冗談を言ってる場合じゃない。

この状況は場合によったら修羅場だ。

「ど・・・う・・みょうじ」

そのまま言葉を忘れたように立ちすくむ彼女。

驚いた表情の代表は力が抜けたように女の腕を離してた。

「何でもないから」

「・・・そう・・・」

「牧野!」

「もういい」

つくし様に触れようと伸ばした代表の腕はこばまれて目標を見失いそのまま宙をさまよう。

バシッと音が響いたのは代表の頬。

同時に光るフラッシュ。

逃げようとする男は俺の目の前に迫る。

俺に気が付いた男はそのまま体の向きを変えた。

「気が付くのが遅いんだよ」

俺の反対側に回り込んでいた一平が憎々しげに上げる声。

今までのうっぷんを晴らすように思い切り二人同時に男に飛びついて床に押し倒した。

倒れた相手に必要以上の拳の数を殴りつける。

その俺たちの横をつくし様は足早に通り過ぎる。

「そういうことか」

数歩追いかけてきた代表が男を捉えた俺たちのそばで歩きを止めた。

しゃがみこんだ代表が男の手からデジタルカメラを取り上げた。

男のデジタルカメラに映し出されてる部屋に女に抱きついたまま入る代表の写真。

ソシテ乱れた服のままバスローブの女に見送られて出ていく代表。

極めつけはつくし様の平手打ち。

よく撮れている。

『一連の流れのスキャンダルはこうして作られる』を素で見た気分だ。

代表が彼女を裏切るようなことはしないって信じてますから!

「パパラッチまで呼んでるとは用意周到だな」

「誰に頼まれたか容易に想像はつく」

「せこいことするよな」

言葉を発するたびに鋭くなる眼光。

冷ややかさは冷気を発して足元を凍らせる。

「タダで済むとは思うなよ」

女を振り返って投げつけた声はとてつもなく低くすごみを帯びてる

「いたんなら助けろよ」

ため息交じりに少し困ったような表情が代表に浮かぶ。

「そこまでは判断できかねますので・・・」

お前ら、俺を疑ってるのか!って、拗ねる表情は俺より代表が年下だってことを思い出させてくれる。

最近感じる代表の人間らしさが見える瞬間。

いくら高飛車に、一方的に、傲慢に感じてもその瞬間の代表が憎めない。

「魔がさすってこともありますし・・・」

そういいながら、代表が、彼女をうらぎってないと確信してる。

憂いな表情の代表を見ながら少しおどけぎみの声。

彼女の気持ちを思ってのわずかながらの代表への仕返し。

俺なんかの言葉じゃたいした威力にもならないのは分かってる。

「大丈夫でしょうか?」

問題は代表を殴って、悲壮感をただよわせこの場から去った彼女。

その表情が思ったより代表には痛手。

追いかけることもできずに、彼女が走り去って見えなくなった廊下を、代表と重なる視線で見つめてた。

拍手コメント返礼

なおピン様

キターーーーーーッ

って、場面ですよね。

早くここまで書きたかったんです~。

Sp視点て思ったより面白い発見ができることにいまさらながらに楽しみを感じてる私です。

nan***様

天国と地獄。

本編に限らず司とつくしの周りにいる人たちは遭遇しそうですよね。

ある意味大変かも♪

おくら様

道明寺で大変なものそれは司&つくしに付くSPなのです。

応援したくなりますよね。