君じゃなきゃダメなんだ 27

犯人はだれ!

それが問題だ~。

すぐに見つけ出されそうなんですけどね。

*

「葵~大丈夫?」

病室を訪ねてきたのは職場の同僚3人組。

「凄い個室・・・」

「やっぱ病室といっても違うわ」

3人ともくるっと見渡した個室はホテル並み。

リビング、キッチン、冷蔵庫完備。

部屋の中には私の知らない名前の付いた見舞いの品が並ぶ。

抜糸までの1週間で食べ切れるはずもない高級果物に有名店のパッケージのお菓子。

もし入院したのがあきらならもっとすごいことになるのだろうか。

「部屋の前にいる人ってSP?」

「たぶん」

念のためって24時間体制で張り付くSP。

病院だから大丈夫じゃないのっていう私に、病院だから誰でも侵入できるって警戒心をあきらは緩めない。

狙った相手が分かるまでは警戒するに越したことはないって態度を崩そうともしない。

「盲腸で入院したって聞いたんだけど、すごい警戒だね?」

「ここの病室に入院してるのは本当に葵かなって名前を3回は確認したわよ」

病室に入るのに身分証明をしたのって初めての体験だと笑いながら3人。

「痛い?」

「もう大丈夫」

身体を半分起こしてつぶやく。

少しの歩行なら傷をかばいながらできるようになった。

それでもまだ病室からは出てない生活。

「ガス出た?」

「ガス?」

「ほら、盲腸の手術ってガスが出てから食事がとれるって聞いたんだけど」

「あぁ・・・盲腸ね」

「違うの?」

「そう、盲腸!」

さすがに刺されたってことはあきらも内緒にしてるのだろう。

私が刺されたなんでニュースになったらどんな憶測が飛び交うことか・・・。

『恋のもつれ!』

『社長を忘れられない女性の恨み』

これが一番大きく噂で飛び交ってそう。

「ねぇ、やっぱ剃るの?」

「剃るって?」

「ほら、下の毛」

「そんなに剃ってないわよ!」

「少しは剃ったんだ・・・」

「私の心配してないでしょう」

少し落ち込みそうになる気分が救われる。

人にナイフを向けられた衝撃を思った以上に引きずっている。

相手の憎しみをいまだにそのまま体に刺さったままで植えつけられた気分。

身体の痛みは治まっても心の痛みがいまだに鈍く残る。

一人になると怖くて、心細くて、泣きたくなる。

「一人にできない」って、病室に泊まり込むあきらを大丈夫だって送り返さなきゃいけないのに縋ってる。

「一人じゃ眠れないんだ」

そうつぶやくあきらよりきっと私の方が一人じゃ眠れない。

「入院してるって聞いたときは心配はしたけど盲腸って聞いて安心したんだから」

「なかなかベットの上で長く過ごせる経験はできないからよかったかもよ」

「休むんなら病気じゃない方がいいに決まってるでしょう」

緊張感のない会話が久しぶりで心も軽くなる。

もしかしてこの子達に私の入院を知らせたのはあきらの心遣いなのだろうか。

部署の違う私たちが1~2週間会わないことも、連絡を取らないことも、珍しいことじゃない。

傷が治って久しぶりに会社に出勤してあったとしても「久しぶり、元気だった」の会話で済んでしまう。

入院して数日で彼女たちが見舞いに来るなんてタイミングが良すぎる。

「私が入院してるのどうしてわかったの?」

「社長に偶然会ってね。暇そうにしてるから見舞いにでも行ってやってって」

「優しいよね」

偶然にあきらが彼女たちに会う確率は宝くじ並み。

最上階から地下の駐車場まで一直線に降りる行動パターンが普通なんだから。

その心遣いがうれしくて少し照れくさい。

「トントン」

部屋のドアをノックする音。

カチャッとドアを開いたのはSP。

そのSPを押しのけるように飛び込んできたつくしちゃん。

「葵さん、大丈夫!」

私に飛びつく感じでガシッと両手を握られる。

話を聞いてびっくりしたって指先が震えてる。

「大げさだね。ただの盲腸だよ」

「えっ・・・盲腸・・・」

誰この子?的な視線を投げる私の同僚に気が付いたようにつくしちゃんの動きがとまる。

「あっ・・・ごめんなさい」

「謝らなくていいけど・・・」

やっと少しクスって笑うことができた。

「だから、そんなに焦って行くなって言ったろうがぁ」

少し低めのハリのある声。

その声につられて振り返る女性たち。

「キャー」

「ウソーーーッ」

「道明寺様!」

叫び声に近い声が同僚から上がってた。

拍手コメント返礼

なおピン様

お疲れさまです♪。

ここでつかつく登場で、お話が同とでも転ぶお膳立て♪

にぎやかに♪

そんなことより犯人は!ですよね(笑)

えっ・・・なんですか?

気になってお話が更新できない(嘘です♪)

ネタばれ~私は好きです。

推理小説を読んでても犯人が分かっても喜んで読めるタイプの人です。

Gods&Death様

黄門的な司君時々見てみたくなりません?

そんな場面が時々見たくなっちゃうんですよね。(笑)

井戸のポンプ。

うちの実家も台所以外すべて井戸です。

小さいころは家の中に釣瓶の井戸があったということですが記憶はありません。

去年うちの庭にも災害対策で井戸を掘りました。

水道からすぐでる水は幸せだぁ~。

hanairo様

気になるのは犯人にあきら君の心情ですね。( ..)φメモメモ。

その展開まではもう少し♪