君じゃなきゃダメなんだ 30(完)
このお話終わりです。
あきら&葵のお話はこの3篇のお話で完結!かな?
応援ありがとうございました。
続編ありか?
う~んッ 悩むところです。
*「おかえり」
ベルも鳴らさずに飛び込んだマンション。
最上階まで登るエレベータの中で、整えたはずの息がわずかにまた乱れてる。
俺に連絡もないまま「退院されました」って、ありえねェだろう。
帰りぎわにいつもの通りに病院に向かおうとした俺は一之瀬に聞かされるまで何も知らなかった。
「退院されたと連絡がありましたけど」
知らないんですかって勝ち誇ったような視線を一之瀬に向けられた。
まだまだですねと言ってる流し目。
俺より葵に信頼されてるって誇張するような態度。
頑張ってくださいって声援まで送られる始末。
無視するように会社を飛び出したのは言うまでもない。
帰宅する車のなかで何度も組みかえした膝。
葵の無事を確認するまで落着けねない自分。
犯人は捕まってもう危害を与える心配はないはずなのに、このままだと必要以上に過保護になりそうだ。
俺たちの邪魔をしてた妹たちも心を入れ替えたようで、ここ数日は毎日葵の病室に二人で押しかけてる。
「お姉さま」と呼ばれて照れるって無邪気に喜んでいた葵。
「かわいいわよ」って、妹たちの印象が結婚前に終わらないことを祈ってる。
あの二人がそう簡単に心入れ替えるか、小悪魔的なタイプは妹じゃなきゃ遠慮したいところだ。
母親にも二人の悪戯がばれて大目玉を食ったらしい。
おこずかい減らすとか一緒に買い物を行かないとかの条件。
二人にめっぽう弱い親父の大蔵省がいるの忘れてないか?
ピラピラのメルヘン調の服を着なくてもあの二人は困らないと思う。
自我の芽生えとともにわずかに趣味も変わってきてるぞ。
母親に合わせてるのは屋敷の中だけって知っている。
車がマンションの前に止まった瞬間にドアを開けて飛び出してしまってた。
最上階を眺めて心を落ち着けるように深く息を吸う。
自分のマンションに帰るのに追い込んだ犯人をつかまえるために飛び込むような緊張感。
その緊張を逃すようにベルも鳴らさずにドアのノブを回した。
鍵もかけてねェって警戒なさすぎじゃないか。
このマンションの警備レベルは部屋の前に行きつくまでもが難関の最高のものだ。
ここにいれば核のシェルター並み。
「なぜ俺に黙ってた」
俺が問う前に葵は必死にしゃべりだす。
「抜糸して、明日退院していいって言われたんだけど、今日帰りたいって言っちゃった」
「あきらのお仕事は邪魔したくなかったから連絡しなかった」
「一人で帰れるし・・・元気だし・・・痛くないし・・・」
黙ったままの俺は葵には怒ってるように見えるのだろうか?
彼氏に遠慮するツレない彼女に面白くないって思うのも本音。
それでも葵が気にするほどの感情を不機嫌に顔に出してはいないはずだ。
目の前の葵は人目を引く美人じゃないが、必死に話す口元、俺を真直ぐに見つめる瞳。
俺にはすこぶるキュートに映る。
その瞳からはいろんな感情が読み取れる。
『連絡しなくてごめんの謝罪』
『俺に会いたかったって甘えてる色合い』
『許してくれるかなって不安そうな表情』
両手は高ぶる感情のままに動いて葵を引き寄せている。
「遠慮する関係じゃないだろう」
病院のベットでただ抱きしめたままで迎えた朝。
何もしないでも温もりを感じるだけで幸せだと思った。
胸をかすめる吐息。
自然と重なった鼓動。
体中で葵を感じて安心しきって眠りについた夜。
何よりも代えがたい存在だって気が付いてたはずなのに、目の前で刺されて顔色を失っていく葵に心が耐えられなかった。
大事なものを奪われることの意味を初めて怖いと感じたんだ。
目を閉じたまま腕の中で俺に体を預けたままの葵の腕が動いて俺を抱きしめる。
「ごめん」
耳元で触れるわずかにかすれた声。
泣いてるように聞こえる。
それを確かめるように葵の顔を覗き込むようにわずかに離れた胸元。
顔を俯き加減に隠した葵の顎に添える指先。
表情が見えるように指を動かした。
「どうかした?」
「何でもない、ここに帰ってこれて良かったなって思って」
うるんだ瞳のまま唇は笑みを浮かべる。
「俺と一緒だからだろう」
一息の間をおいて「当たり前でしょう」って答えた唇が俺の唇に触れる。
「ずっと一緒にいたい」
唇が触れ合ったままの甘いささやき。
もう、何もいらない。
5年後も・・・
10年後も・・・
俺のそばにいるのは、君じゃなきゃダメなんだ。
永遠に・・・
きっと。
拍手コメント返礼
なおピン様
おはようございます。
一つ終わらせてほっと一息です♪
>つかつくの王道が一番ですが・・・このお話も大好きで・・・・めっちゃ寂しい!!!せめて結婚式とか新婚時代までは・・・・ダメですか~
ありがとうございます。
そういっていていただけるとまた書きたくなっちゃいます。
新婚編♪
つかつくとは違ったものになりそうですね。
きっとこの二人だと落ち着いてるだろうな~。
それをかき乱すのは誰だ~。
希望がありますか?
*そうそうネットの世界では言いたい放題ですもんね。
自分と共感できる場所だけで楽しんだ方がいいですよ。
気分が良くないものはスル~するのも防衛策だと思います。
でも読んじゃうんですよね。
ゆめ***様
期待してください!
・・・って、一日で書く気になってる私って<(_ _)>
困った・・・。
zui***様
ありがとうございます。
大ファンって言われると少しくすぐったい感じですが、すごく喜んじゃってます。
>この2人w別のお話にもちょこちょこ登場しちゃったりしませんかね。
それはちょこっと考えたんですよね。
アリだよなって(笑)
han****様
パチパチの拍手ありがとうございます♪
この二人が大好きって言ってもらえるから、離れられなくなるんですよね。
頭の中にむくむくと次のお話が浮かんでいます。
まだ数ある連載を終わらせてから次に行こうと思っていたんですけど・・・。
どうしましょう~~~~~~。