不機嫌なFACE 5
久々の楓様登場。
ごく一般の嫁と姑の関係とは違うだろうなぁ～。
最初は交際を妨害されてたし、結婚前の道明寺家の花嫁修業もいろいろあっただろうし～。
司は気が付くタイプには思えんし。
一緒に暮らしてたら、いくらつくしちゃんでも大変だろうなと思う老婆心。
「必要ねえよ」
「つくしは俺が守る」 ｂｙ司
*「会長・・・」
息を切って私たちの前に現れた里井さんが素早く頭を下げた。
私とお母様の組み合わせに意外そうな表情を浮かべている。
私もどうしてそうなったのか解析中。
道明寺本社に会長が現れるのは不思議なことじゃない。
ただ、今の状況が困るッ！
「里井、あなたが車を離れるのは珍しいわね」
年齢を若く感じさせる、よく通る張りのある声が響く。
「私が頼んだんです」
あわてて里井さんをかばう様に声を出した。
「つくしさん」
「ハイッ!!!」
自分の大きすぎる声に自分で驚いてしまう。
緊張の波はお母様との距離が縮まることで波紋を広げている。
いい関係を築けているはずなんだけどな。
いまだにこの緊張感からは解放されない。
「舞と翼と一緒に出かけたって聞いていたのですけど、二人はいないわね」
「あっ・・・まあ・・・今はいないのですけどね・・・」
煮え切らない返事はお母様が一番嫌う態度だ。
追及される前に素早く言葉を探す。
司にムカッついて押し付けましたって経過した行動を言えるわけがない。
うちの息子に子供の世話をさせるの！なんて言われたらどうしようもない。
「ちょっと司に見てもらっています。迎えに行くところでした」
押し付けましたっていうのが事実だけどここでどう誤魔化せるのか。
代表室にいるのは間違いないのだからこのまま迎えに行けば問題ないはず・・・だ。
「あの子暇なのかしら？」
感情を読めないつぶやき。
「暇じゃないと思います・・・」
滅多に会わない相手になんでこんなところで出くわすのか・・・。
気まずい感情しか湧いてこない。
お母様の目がクスッと笑ったように見えた。
なんかおかしなこと言った？やったか？
「行きますよ」
そのまま私を追い越して颯爽と歩くお母様。
道を開けた社員が丁寧に頭を下げている。
堂々とした風貌、風采、容貌、司とはまた違った威厳。
まだまだ衰えていない。
ＳＰに隠れて見えなくなったお母様を慌てて追いかける
「私はここでお待ちしています」
里井さんは一足先に逃げた。
直通のエレベーターはアッという間に目的地にたどり着く。
なるようになる！
どうとでもなれ！
このお母様を誤魔化せるモノはない。
ほとんどやけくそ気味。
開かれた扉。
ダークスーツが屏風の役目をしてふさがれて見えない秘書室。
その先でたぶん舞と翼を押し付けられた司がいるはず。
「西田・・・あなた・・・プッッ」
機嫌のよいお母様の笑い声が聞こえた。
ダークスーツを押しのけて私はお母様の横にたどり着く。
「えっ？西田さん」
西田さんの背中ですやすやと眠る翼。
紺色の形の良いスーツにオレンジの肩ひも。
その上に乗っかる無表情。
ロボコップが子守をしている映像が浮かんだ。
吹き出しそうになった口を慌てて、手のひらで抑え込んだ。
お母様が横に居なければ私も大声を上げて笑っているところだ。
これ以上の似合わない組み合わせはない！
世間に流行する一発ギャグに匹敵する。
これで会社内を歩いたらそれだけで会社が明るくなりそうじゃないか。
なるか？
異様に取られる場合もあるか・・・。
西田さんに隠し子！ならまだいい。
孫と勘違いされたらさすがの西田さんも落ち込むかも？ しれない。
なぜジュニアの面倒を第一秘書が！?
代表夫妻の危機！？
憶測はとんでもなく広がりそうだ。
私の頭の中も無限大に妄想が広がっている。
「代表はすっかりお子様の世話の仕方は忘れてらっしゃいます」
「困ってらっしゃったので私が見本を見せておりました」
「もう少し子育てに参加されたほうがよろしいかと・・・」
その時間の余裕を奪っているのはそう言う西田さん本人だと思う。
子どもの起きている時間に帰ってこないパパがどうやって子どもの面倒が見られるつーの。
バタンと開くドア。
司は開いたドアを片手で抑えている状態で固まった。
「おふくろ・・・」
司の胸元には抱っこひもの中にいる舞が見えた。
あっ・・・ネクタイを口に入れている・・・。
濡れて色の濃くなっている部分があるとわかるシルクのネクタイ。
これも西田さんとは違った意味で目を引く。
若いパパが頑張っているって感じ。
オーダーメ―ドのスーツで赤ん坊の世話しているのは司だけだと思うけど、なぜかそれも似合っている。
どんな格好も似合うものだ。
それでＣＭを作ったらもっと好感度と、人気の幅が未婚から既婚の女性まで広がりそうだ。
おんぶ紐も売れ行き好調！
子供のいない層まで広がる！
なんて現象も起きたりしてね。
「司・・・」
お母様の笑った表情はそのまま大きく笑いを付け足している。
「あなたまで！」
「何の罰なのかしら？」
微笑んだままの表情はそのまま私に向かっている。
「罰って・・・」
「なんてことをさせるの」って責められた方が、「すいません」と謝ればいいわけだから楽だと思う。
確かに罰と言えばそうなのかな？
「司に子供を任せるなんて、できないわよね」
「面倒見るより泣かせる方が得意そうだから」
「司に任せるくらいなら屋敷に置いてきた方が安心でしょう？」
言い返せないくらい的確なお言葉をウケタマワッタ。
「それは私が代わりに説明します」
背中に翼を背負ったままの西田さんがうなずくようにつぶやく。
「何を西田さんは知ってるのッ」
驚きと疑問を貼り付けた声がポケッとしたままの口から飛び出す。
「ＣＭを見て嫉妬したんだってな」
ニンマリとした表情を司が私の鼻先に突き出してきた。
「えっっ・・・それは・・・」
「子供を押し付けるよりもっといい方法あるだろうがぁ」
目の前に迫る顔から逃げるように舞に視線を移す。
「これは食べ物じゃないから」
舞の口元からネクタイを離す。
わざとらしすぎだッ。
私に遠慮なく注がれる司の瞳の中がキラキラしすぎて困る。
見つめられていると目が離せなくなる。
ダメッて表情の舞が伸びる両手でネクタイをつかんだ。
「もっといいもん食べさせろよな」
「私がネクタイを食べさせているわけじゃないわよ」
「子供が興味を持つようなものが目の前にあるのがいけないんでしょうがぁ」
照れくささはそのまま比例するように頑なな態度を作ってしまっている。
「コホン」
私たちの間から聞こえる咳払い。
「貸しなさい」
お母様の手によって解かれる抱っこ紐。
舞はそのままお母様の腕の中に落ちた。
「西田、行きますよ」
お母様に抱かれた舞。
西田さんの背中で眠る翼。
その格好で並んで歩いたら注目度抜群。
ゆるゆると舞を見つめる表情は道明寺会長の顔から孫をあやす祖母の顔に変わる。
西田さんが落ちてきた翼の位置を直す様に軽く背中に腕を回してポンと飛ぶ。
慣れている・・・。
「重くなりましたね」
「舞も重くなったわよ」
赤ん坊の体重増加に目を細める道明寺会長と代表第一秘書。
あり得ない会話。
『こんな表情見たことない』大賞決定！
『こんな取り合わせ見たことがない』大賞も同時に受賞できそう。
「司、しっかりつくしさんに謝りなさい」
「つくしさんに捨てられたら承知しません」
言い残して私たちの目の前から消えた。
秘書室と、ソコからつながる開かれた扉の奥の代表執務室。
だだっ広い空間に残された私と司。
たった二人。
気まずさのままそっと視線を上げて見上げる道明寺の横顔。
「気に食わねェ言いようだけど気が利くよな？」
「気を利かせてもらわなくていいのにッ」
そろりと腰に回された腕。
意識してぎくりと力が入る。
「捨てられないようにしなきゃいけねえだろう」
そのまま私は目の前の胸の中に閉じ込められて、逃げられなくなった。
拍手コメント返礼
なおピン様
おはようございます♪
>これ・・・・・・なんかメッチャ照れる～～///// 私が！！別にいやらしい描写があるわけでもないんですが・・・なんか・・・ゆる甘なんだけど・・・可愛い///
このコメントに私も照れくささが移っちゃいましたよ /////
職場は大丈夫でした？（笑）
han＊＊＊＊様
甘々？コメディー？どちらでいきましょう？
>西田さんとお母様の子守中の会話も気になるような
他にもそんなコメントいただきました♪
b-moka様
お待ちしておりました♪
楓さんと西田さんの司とは違った関係って案外面白い着眼点になりそうな気がしてます。
書くなら西田さん日記かなぁ～。
司はすてられなくて済むでしょうか？（笑）
ゆげ様
>このお話もすっごくかわいくて好きです♪つくしちゃんのジェラシーカワイィィィィ♪♪♪♪
短編から話が広がってカテゴリーを追加して書き始めています。
どうして連載が減らないのだろうと思いつつ・・・。
喜んで受け入れてもらえると『まぁ、いいか♪』ってなっちゃうんですよね。（笑）
今回は珍しいつくしのジェラシーだし・・・
滅多にないし・・・の展開で頑張っております。
>西田さんが落ちてきた翼の位置を直す様に軽く背中に腕を回してポンと飛ぶ。この西田さん、超見たい！
頭の中に浮かんだこの場面をどう表現するか悩んだので嬉です。
今のおんぶ紐ってそんなに緩まないんですけどイメージとして書いちゃいました。
>超笑ってる司のお母さまも見たい！お母さまと西田さんの会話が聞きたい！ガチで映像化してほしい♪
私も見たい！
デビ西田さんだったら面白く飛んでくれそうな気がします。
>花男はいろんな大賞をＧｅｔできますね(笑)。ハプニング大賞１００万円もＧｅｔしていたような…。
食事代に使ったとか言ってましたよね。
１００万円あれば・・・
>ひーさまが毎日お話をＵＰしてくださっているので、なかなか追いつけません（泣）。ひぇ～！！！嬉しい悲鳴♪あははは、スタバ必死で携帯画面を見つめてるゆげ様を想像しちゃいました♪
