秘書西田の坊ちゃん観察日記 38(不機嫌なFACE 番外編)

「不機嫌な~」の西田さんの日記は3つほど準備しています。

第2弾!司CMの裏側の巻き♪

不機嫌なFACE 6 の番外編となります。

*

「お願いします」

床に頭をつけるような土下座。

決死の形相の頼みごとをされることは珍しくはない。

「室長だけが最後の砦なんです」

私の後にも先にも砦がないのは分かっている。

この場合の要求は代表に関することだ。

目の前に差し出された茶封筒。

真ん中に「新作マル秘プロジェクト」と印字されていた。

道明寺グループで手掛けている最新化粧品発売に関するプロジェクト。

映画のワンシーンに匹敵する印象の残るキスシーンに抱擁シーンが撮影の最中のはずだ。

女性の色気以上の男性の色気をモチーフがコンセプトで、最終の許可を出したのはもちろん代表。

必死の形相の担当者に気が付かない振りで外す視線。

「どんな要求ですか?」

「実は今、手がけているCMなのですが代表に出演交渉ができるのは西田室長だけだと思ってのお願いです」

頭を下げたまま一息で目の前の男性社員が吐き出した。

今売れている若い男性タレントの中に代表が混じっても確かに目立つことは分かる。

実際の見栄えの良さは高校時代のF4と騒がれた時代から立証済み。

それにしてもそれは無謀な注文だ。

代表が色気を無条件で放出するのはただ一人。

普段は冷気しか放出してない。

そのCMがうまくいく撮影されるとは到底思えない。

それに嫌だと即答されるのは分かっている。

「これと思う男性タレントが居なくて、この前のパーティーに出席していた代表ご夫妻をみた監督が代表に惚れこんだんです」

だから、それはつくし様がそばにいるとき限定なんですよ。

「代表じゃなきゃ撮影しないとまで言っているんですから」

ほとんど泣き言に近いお願いだ。

この撮影のためだけに呼んだハリウットの世界的有名な監督。

今度のCM撮影がお流れになるのとテレビに流れるとでは不利益と利益の差は格段の違いだ。

切羽詰まった状況は無碍にもできない。

「わかりました。できるだけのことはやってみます」

私の返事に「ヤッタ」と手を握りあって上がる喜びの声。

代官に直訴を成功した農民とはこのようなものだろうか。

ご領主様までは恐れ多くてという心境かも知れないと理解している。

だが・・・

代表が了承したわけじゃない。

私の頭の中では代表を引っ張り出す段取りを模索中。

そんな私を残してさっきまでの悲痛な面もちが安堵の表情に変わった連中は引き上げていった。

「失礼します」

トントンとノックをして開く扉。

ちらりとも上げない視線はそのままデスクの上の書類に向けられたまま。

「報告に参りました」

勿体付けずに早く言えとせっかちに向けられる視線。

「今度のCMで監督からの要求がありました」

「何でも言うとおりにしろって、言ってあるはずだ」

「予算も十分すぎるほどつけているだろ」

いちいち俺を煩わせるなッの、イラッとした感情が見える眉間に寄せた眉。

「監督が気に入った男性に出演を御願いしたいとのと要求が私のところまで上がってきたので代表に許可をいただきたいのです」

「だから、さっきから言うとおりにしてやれって、言ってるだろう」

不満な表情は隠そうとせずそのまま代表の顔に張り付いた。

「私が交渉しても難しいかと思いますが、どうしてもと頼まれて代表の前に参りました」

「代表にお願いしたいのです」

「お前が泣き言を見せるなんて珍しいな」

不機嫌が単純にまんざらでもない表情に変わる。

「なかなかの相手なので・・・」

「お前が無理なら俺が交渉してもいいぞ。絶対OKと言わせてやるよ」

「CMに使いたい奴って俺も知っている相手か?」

私を出し抜けると思っている機嫌のいい声。

それはもちろん本人なのですから。

「代表です」

にっこりとほほ笑む気分で呟いた。

「えッ?」

1秒の沈黙。

「もう一度言えッ」

「監督が代表を使いたいと言ってきたのです」

CMのインパクトに道明寺グループの代表が出演というメリットが生まれ、その注目度とともに計り知れないおいしさで転がっている。

「俺がOKすると本気で思っているのかッ」

ドンとデスクに音をたてて革張りの椅子から勢いよく立ち上がる代表。

いまさら凄みを利かせてもダメです。

「「絶対OKと言わせる」と聞いた記憶がるのですが・・・」

「まさか俺だとは思わねぇだろうがぁぁぁぁ」

焦っている表情は引き戻せない状況に追い込まれたと代表は悟っている。

「自分が言ったことに責任を持つのが上に立つものの務めだと思いますが」

「・・・ンッ」

ギュッと唇を悔しそうに代表がかみしめた。

「はめたな」

カタンと椅子に代表が座り込んだ。

「人聞きの悪いことをおっしゃらないでいただきたい」

「テレビに映るお父上を見てお子様たちも喜ばれると思いますよ。一番喜ぶのはつくし様かもしれませんね」

「勝手に言っとけ」

「クソッ!」

頭を抱え込んだまま代表が悔しさを吐き出す様に叫んだ。

時間を調整して時間を空けた代表があらわれたCMの撮影現場。

ピーンと張りつめた空気は代表が歩くたびに膨張される。

「よろしくお願いします」

相手役の女性が微笑んで手を差し出す。

計算された微笑み。

普通の男なら喜んでその手に飛びつくはずだ。

そんなの知るか!的のお構いないしの冷たさで無視して代表はモデルの女性とすれ違う。

「気が付かなかったのかしら?」

「たぶんそうでしょ」

焦って取り繕うデレクターの声が聞こえた。

「そうよね。私が無視されるなんてあり得ないわ」

代表の場合はあり得るから困る。

私の横で代表の冷淡に口角が上がった。

繰り返されるリハーサル。

代表の相手役は現在はわたしだ。

リハーサルから相手のモデルを立たせたら泣き出すか代表の前から逃げ出すかのどちらかだろう。

「お前相手じゃおもしろくねぇ」

私も面白くありません。

代表のリハーサルの代わりを務めればよかった。

代表に残っている時間は残り3時間。

「仕事より疲れる」

「もう二度とやらねェ」

ぶつぶつと漏れる愚痴。

「俺様が命令されるってあり得ねェぞ」

繰り返される立ち位置や表情の指示にうんざりぎみの代表。

柔らかい表情を作る器用さは代表にはない。

「あのブス相手に笑えるか」

見たものが引き込まれる長身美人モデル。

つくし様以外はブスと一絡げにできるのは代表の特技か欠点か?

「代表これを」

代表の目の前で見せるタブレット

「これって・・・」

「いつ撮った?」

御屋敷の庭でボールを追いかける駿坊ちゃん。

そのそばで微笑むつくし様。

画像はお子様からつくし様が映り込むのが多くなっている。

「司、お仕事がんばってね」

「頑張ってね」

UPのつくし様から少し引いた画面に映り込む駿坊ちゃんの笑顔と聞こえるあどけない声。

引き込まれてこれ以上にない柔らかい表情が代表に出来上がっている。

「その表情でお願いします」

「あの相手のモデルはつくし様です」

冗談じみた洗脳。

暗示をかける催眠術師になっている気分だ。

「それなら最初からつくしを使えば済んだんじゃねぇか?」

「全国放送で映し出されたつくし様が知らない男性に惚れられたら代表はいやでしょう」

「以前類にも言われたことあるよ」

ククッと機嫌のいい笑いが代表からこぼれた。

しょうがねェと、照れる笑顔は先ほどとは比べられない優しさを含む

つくし様は実物じゃなく映像でも使えるのかとその効果に驚いたのは代表より私かもしれません。

これでまた私の手の内が広がった気がしました。

私も代表と抱き合った触れ合いを殴られるのを覚悟で我慢した甲斐があったと言うもの。

もう二度とごめんです。

男同士のリハーサルなんて・・・。

素早くテストの映像は消去させました。

拍手コメント返礼

ゆげ様

昨日K様からコメントいただきましたよ♪

スタバでの布教活動ありがとうございます(笑)

>二次小説というものを初めて知りましたが、超楽しいですねゆげさんが夢中なのが解りました。

という嬉しいコメントでした。

変な人って思われてなかったのが本当に自分のことの様に安心いたしました。

これで心おきなくニンマリとできますね。!(^^)!

西田さん日記は久々の坊ちゃんとの攻防戦♪

楽しいですよね。

>司のCM出演のイメージは、どうしてもKOSEのfasioになってしまいます。あの松潤が好きで、相手の女の子が真央ちゃんだったらいいのに~♪と思いながら、いつも脳内はつかつく設定で見ています。

私もです♪

西田さんと司のリハーサルを見たらつくしちゃんも爆笑でしょうね。

CMが放映されるたびにそっちを思い出して嫉妬心もなくなるかも知れませんよね。

見せたいなぁ~。

うんうん。司と戦えるのは小泉元総理だけかも~。

2人の攻防も見てみたくなったじゃないですかぁぁぁぁ。

また頭の中が・・・。

なおピン様

もう一人♪

つくしちゃんが「見たい」って言えばOKするかも~。

つくしちゃんを除けば西田さんしかいないでしょうね出演交渉ができる人♪