SP物語 13(ソラノカナタ スピンオフ物語)

日本に帰ったら相葉君と一平君の悲惨な経験を肴に一杯付きあってあげたい気がしています。

さあ!いよいよ舞台は日本だよ♪

今回は相葉君目線のお話です

このお話は『ソラノカナタ 21』の番外編となります。

*

「あっ!」

声を上げたのは一平。

つくし様を追って張り込んでいたアル王子の国の大使館前。

「どうした?」

「今のタクシーの後部席にいたのは王子とつくし様ですよ」

「ウソだろうッ」

車道に飛び出して遠ざかるタクシーを見る。

ちらりと振り返った表情は少し寂しげに見えた。

慌てて追いかけても追いつくはずがない。

しばらく走って止まる足。

心臓は悲鳴を上げている。

殺されるぞッ。

大げさには思えない本音。

震える指で携帯のボタンを押す。

「牧野を見張っていんじゃないのか!」

返事の代わりに携帯の向こうから聞こえてきた声。

それはボリュウムを最大に合わせたスピーカーを通して聞こえてきたと思うような代表の怒鳴り

「報告では大使館にいらっしゃると・・・」

小さくか弱い声に変わって聞こえてきたのは当たり前の同僚の反応。

「すまん、今大使館から逃げ出された。

どこに行ったかは不明だ」

携帯越しには似合わない張り裂けそうな声を上げていた。

「・・・今、大使館から見失った連絡がありました!!!」

ゆらゆらと代表の背中から上がる冷気が見える気がする。

「空港だ、日本に帰るぞ」

代表は俺たちより早くどうやって王子の行動を掴んでいたのだろうか?

何処かに情報源がなければ無理。

西田秘書・・・か?

俺もバカだ。

彼女がホテルからいなくなった時点で連絡を取るべきだった相手だ。

今度のトラブルには西田さんが絡んでいることは気が付いていたはずなのに、大使館に向かったことで判断を誤ってしまった。

「代表は日本に帰るそうだ。空港に向かう」

それだけ言って切れた携帯。

「先輩大丈夫ですか?」

大丈夫なわけあるかッ。

今回はついてないだけじゃない。

疫病神を背負って渡米したのは一平か?俺か?どちらだろう?

「空港に行くぞ。どうやら彼女はそこにいるらしい」

タクシーを止めて一平と二人で飛び乗り空港へ向かわせた。

空港に着いた俺たちはゲートに向かう彼女と王子を見つける。

東京までの出発まで1時間を切っていた。

ここで彼女に追いつけば名誉挽回。

逆転満塁ホームランまでは行かなくても二塁打の1点追加で同点までの過程が見える気がする。

それは本の束の間、満席の文字に希望がカラカラと崩れ落ちた。

俺たちから遅れること20分。

代表一行と合流。

「いたか?」

荒い息の下から静かな声が漏れた。

「飛行機の中に移動された様です」

窓辺から動き出す機体を見つめる代表の切なそうな表情。

機体の中の見えないはずの彼女の姿を見つめている。

寂しさが漂う後ろ姿。

誤魔化すように両手をスラックスのポケットに差し込んで頭はゆっくりと上にあげた。

いつまでも名残惜しそうに代表が眺める飛行機雲。

羽根があればそのままその雲を追いかけていきそうだ。

すいません!

誤りきれない気分に落ち込むのは代表の姿があまりにも痛々しく見えるから。

激しい感情と情熱の塊みたいな代表にはあり得ない憂いさ。

世界の財界で対峙するTOPの人物を頼りなくさせる存在が女性って、同じ人間だと実感できる。

それが垣間見えるから代表がキライになれないんです。

好きです代表。

ヘンな意味じゃないですから。

年下だったと思える瞬間、俺はあなたを守りたくなる。

「俺はいつ帰れる」

寂しさをにじませているように聞こえる声。

早く帰せって催促しているというよりは頼みごとされている気分だ。

滅多に見ない弱さが見える。

すぐにでもどうにかしてやりたぃって思う感情が湧き上がってくる。

「次の便は、満席でその次の便の席は確保できました」

俺の横で一平が名誉挽回できたようなはっきりとした声を上げる。

一平それじゃ無理だ。

代表の希望は次の便の確保だと俺は思う。

一平から飛行機のチケットを奪い取って食い入るように見つける代表の顔色がみるみる強張る。

じろりと不満げな視線が一平を見たその後で何かを探すように代表の視線が落ち着きなく動き出す。

やっぱり、俺の想像した通りだよな。

俺も次の飛行機のチケットを求めて動き出した。

キャンセル待ちの予約。

次の便の座席と交換してくれそうな客を探す。

代表のそばで警備をする名目の俺たちも座席は一応ファーストクラスだ。

必ず座席交換に応じてくれる客はいるはずだ。

数メートル先で代表も俺と同じやり取りをしているのが見えた。

交換できたチケット3枚はどれもエコノミー。

代表はエコノミーって乗ったことあるのだろうか?

少し離れてトライアルで座る座席。

見たことがない狭い空間に座席番号とチケットを交互に確認しなら固まっている代表の姿が見えた。

辛抱できるのだろうかと一抹の不安を抱えながら座席ベルトを締める。

何があっても動けませんからッ。

拍手コメント返礼

た*様

日常でも『え?』って思うことありますよね。

会計って引き受けたら絶対人に任せられない役職ですよね?

怒りたくなる気持ちわかります。

>たまさんの坊ちゃん(道明寺)が小さい時、エピソードなんて、読んでみたいです。

何時かは描きたいと思ってます。

Gods&Death様

エコノミーで長時間はキツイですよね。

経験がない司には拷問だろうなぁ。

ありがとうございます。

時々溜めてるものを吐き出さないと作品が暗くなるので(^_^;)

愚痴ってしまいましたがおかげさまですっきりしています。

そうなんですよね。

誰が見てるかわからないネットでは当たり障りなくしているのが無難なんですけどね。

良識のある方がうちのブログの訪問者には多いと思ってますのでそれを信じています。

b-moka

連休も後半に突入ですね。

我が家は今日までは静かだったんですが、明日からはちょいと忙しくなりそうです。

更新できるか不安です。

お話のストックもできてなくて・・・(^_^;)

2人とも西田さんの企みに巻き込まれただけなのですが、司は知らないですからねェ~

きっとSP君たちの後のフォローは西田さんがしてくれてると思いますけどね。

ひつじ様

御疲れ様です。

黙ったままじゃわからないことってあるんですよね。

こちらが常識だと思ったことが通じない相手って現実にもいるわけですしね。

ネットの世界から撤退するのは簡単じゃないかと思っています。

「嘘つき・・・」まだ読んでないんです。

読んでない本がたまっていて(^_^;)

友達から借りてる本が数冊あるのでそれからかな。

実はこの前の旅行の時飛行機の中で読もうと思っていたのですが、行きも帰りも預けたカバンの中にしまいこんでしまってました。

以外とボケてるんですよね。

読んだら感想をメールします♪

なおピン様

それは大変だ~~~~~。

お大事になさってください。

>花男の当初の司を思い出し、いくら大金持ちの御曹司でも、いくら超美男子でも、こんな奴・・・

確かに最悪でしたよね。

つくしがいなきゃ最強、史上最悪の嫌な奴からの脱皮ってなかっただろうなぁ。

そしてエコノミーに乗ってでもつくしのもとに帰りたい坊ちゃん。

一途ですね。

そろそろご褒美を上げたくなっちゃいます。

あっ・・・本編ではちょっぴり上げたんだよなぁ・・・。

ゆげ様

一平君と相葉君の間の数年の差は大きいでしょうね。

司のギャップになれるのが大変そう♪

一平君の成長も見ていきたい気がします。←  気が多いよ~~~~~。

「カノジョ~」らしいですね。

一般応募のデビュー。

見るかどうかは別にして原作のイメージが壊れないことを願っています。

>いろいろな人と交流が出来る楽しみと同時に、自分の価値観では理解不能な人との交流もあって、気持ちが落ちてしまうこともあるだろうな~と思いました。

そうなんですよ。

PWにかかわらず、私が感じることの方がおかしいのかな?って思うこともあるんです。

でもね、やっぱり気ごころの合うって方は限られてくるというか、ちょっとしたメールやコメントのやり取りから

親しい関係になれる瞬間がたまらなく楽しいんです。

妄想の回避はしっかりやっていますよ。

出来たら他の作家さんで楽しめるのいいんですけどね。(笑)

コメントうれしかったです。

やる気がしっかり充電できました。

ありがとうございます。

おくら 様

ただいまSP物語読破中なのですね。

たびたびの拍手コメありがとございます。

つくしと司の幸せを追い掛ける葉っぱコンビと西田さんのお話はちょこちょこ登場しますのでお見逃しなく♪