ソラノカナタ 41
このお話も最終話に向かって突進中。
最初はシビアにシリアスにと思っていたのですが、途中からやっぱりいつもの調子が出てしまいました。
違うタイプのお話を書きたいときは次回から短編にしよう。(^_^;)
*的確な日本語の発音が聞こえるテレビ。
にこやかに握手を交わす俺とあいつ。
穏やかな中での調印。
「一大事業ですね」
「企業の決算の前のこの時期での発表ですからね」
「さすがです」
分かったような建前の賛辞。
このタイミングでこの場面がテレビから流れるって出来過ぎだ。
時間の合間をぬってあわただしく行われた会談。
調印の握手なんて1分もかかっていない。
俺が気が付いたのは目の前できられるカメラのシャッター。
テレビカメラまでいたとか気が付かなかった。
どうせ西田が手を回していたのだろう。
俺が王子に会いに現れても説明がつく状況は整っている。
後はどうやって牧野を連れて抜け出すかということだ。
「それじゃ、つまらないわよ」
「確かに」
俺をムカッとさせるには困らない能天気な兄妹の声。
その声に驚きを見せて牧野は目を見開いて固まった。
「王子と私は何の関係もないですから!」
それはここの全員が分かってる。
「狭い個室で二人っきりで過ごしたのに?」
「それはエレベーターの故障で、それにジェームズさんもいたじゃないですか!」
男と女が密室で過ごした数時間。
そこに牧野を残してしまった後悔。
牧野を独りにしたことから今回のトラブルは始まっている。
牧野より自分の不甲斐なさが情けなくて、悔しくて。
お金があれば何でもできるって思っていた頃の方が楽だった。
「俺の肩に頭を乗せて安心したように眠っていた君はかわいかったけど」
「あれは、時差で疲れてただけです」
普通あの状態で眠れるかッ。
無防備な顔をほかの奴に見せるなッ。
心配してた気持ちはそのまま怒りに変わっていた。
思い出しただけでムカつく!
つーか。アルのやつ!牧野をからかいながら俺を煽ってんじゃねェ?
標的は俺か?
「牧野、俺と抜け出した方が騒ぎは小さいと思わない?」
「類!横からでしゃばるな」
唇を噛むように出た声。
「花沢類と出ていっても私に向けられる注目度は変わらないと思うけど」
牧野は俺の横でわずかに頬を染める。
類の声に照れくさそうな表情を作んなッ!
「司に婚約者がいるって言う噂は高校の頃から騒がれているし、王子の女性の噂も今が旬だよ」
「どちらも注目度は俺と居るより上だと思うけどね」
「それにここに来たのは俺と一緒だったでしょ。帰りも一緒の方が説明がつくと思う」
今度は花沢の御曹司のそばに若い女性って騒がれるだけじゃねェか。
以前牧野と類って写真週刊誌に撮られたことがあった。
デート写真とかなんとかってやつ。
俺との写真は牧野がヤダっていうから発売前に手を打ってる。
今度は絶対何もしねぇ。
大々的に結婚の発表する予定は内密に進行中だ。
驚くなよ!
「つくし様は私が連れて帰ります」
はぁ?
西田が当たり前みたいな能面を俺の前に突き出した。
西田と牧野の取り合わせ。
きっちりとしたスーツの中年男にラフな服の女子大生。
いまいち女子大生と証明するには無理があるフェイス。
いまだに10代とみられる牧野は下手したら高校生だ。
援交と間違えられたらどうすんだ。
「秘書と言うことで私についてもらいます」
「代表に秘書が数名ついてきても不思議じゃないですから」
落ち着いた態度は相変わらず鼻につく。
「この格好で秘書に見えるかッ!」
西田に食い下がる俺。
「着替えは準備しています」
パチッと指を鳴らした西田の合図で見覚えのある女性が清楚な落ち着きのあるスーツを持って部屋に表れた。
牧野に似合いそうなスーツ。
それも数着。
用意周到。
準備万端。
抜け目なし。
全てが西田のためにある言葉のような気がする。
「私が何とかします」
有言実行というよりは計画的か。
「秘書ということでしたらそのまま代表について本社に戻っても何の問題もないかと・・・」
西田の表情が満足そうに見える。
これならなら文句はないでしょうと言いたげな貌。
・・・
・・・・・?
おっ♪
この後は俺は牧野と一緒でも構わないってことか?
隠し玉!意表を突くのがうまいやつ!
俺の喜ぶことはしっかり準備!
今日一日牧野が俺のそばで・・・
離れずにいるってこと・・・だよな?
反対する意味がない。
「ほかの方法ないですか!」
今度は牧野が西田に食い下がる。
「嫌なのかよ」
ジロリと向けた視線の先で牧野が「あっ・・・」と小さく音を発してそのまま黙り込んだ。
拍手コメント返礼
なおピン様
わ~い久々に続けてなおピン様のコメントが読める♪
『リピの嵐』いつか私もしてみたい。
>もう、西田さん どこまで司を上げ下げさせるのやら・・・・・これって西田さん自身 結構楽しみながらやってますよね。
『何か楽しみを見つけなければあの司坊ちゃんの秘書は務まりません』by 西田。
haru*****様
お久しぶりです♪
コメントありがとうございます。
用意周到に抜け目なく♪代表に働きかける有能秘書ですよね。
こんな西田さんが好きなんですよね。
b-moka様
たまには西田さんのシナリオを覆したい!と思ってるんですけどね。
完璧無敵の西田軍師はすでに諸葛公昭になってしまってます。
ゆげ様
西田さんの必須アイテムつくしちゃん♪
すでにコンプリート完了中。
もっとレアにするために思案中かもしれません。
類に不機嫌になる司君は捨てがたいものが・・・。
軽めの嫉妬が何ともツボでして、つい付け加えたくなっちゃうんですよね。(笑)