ソラノカナタ 44

最終話(たぶん・・・)が近くなってきたのでしばらくこのお話を集中してUpしたいと思ってます。

つくしの秘書がどうなるかで連載の長さが変わる可能性もあるんですけどね。((^_^;)

*

「途中で車を降ろしてもらえるよね・・・」

上目使いで遠慮がちな視線が俺を見つめてる。

膝の上にはギュッと握りしめた手のひら。

チラッと動かした視線の先がそれを捉えた。

俺を嫌がってるように思えて、すげームカつく。

俺と身体の密着を嫌がる様に牧野の身体がわずかに右に動く。

それを追いかけて横に動かす腰。

逃げる範囲は限りがある車内。

すぐに牧野はドアの壁にぶち当たった。

次は腕を腰に当てて曲げた肘が俺との距離を保とうと抗ってる。

「ここで降ろすわけねぇだろう」

「なななんで!」

高く発した牧野の声がわずかに裏返る。

西田の折角の提案無碍に出きるか。

こんなおいいしいことが次はいつあるのかは分かんねぇだろうッ。

執務室で俺の横には牧野が四六時中一緒で、仕事の合間眺めるだけじゃなく触れることも出来る。

牧野が俺の傍にいたら飽きることなく眺めることが俺にはできると思う。

これは西田にばれるとやばいかもしんない俺の心の奥。

牧野が慣れない書類を困った顔で真剣に悩んで、「道明寺これどうなの?」なんて甘えて聞いてきたら・・・。

「見せてみろ」と冷たく言いながら、牧野の肩から覗き込むような体勢を作る。

書類を握るふりして牧野の手を握って・・・・

少し緊張して震える牧野の身体。

密着度は少しずつまして、ふたりの身体の熱も上昇。

「ありがとう」とつぶやく牧野が首をもたげて俺を見つめる。

俺と視線がぶつかって頬を染める牧野。

いいじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ。

黙って眺めるだけって拷問か?

「なんか、別なこと考えてない?」

「なんもねェよ」

顔を横に傾けて牧野が俺を覗き込んできた。

思わず牧野から離れるように上半身を左に引いたのは自分の身を守るために防衛本能。

この状態で牧野に触れていたら体の欲求は勝手に上昇しそうだ。

「いま、ここで降りたらどうなるか分かんないぞ」

話題を急速に変える必要性に迫られている。

荒い口調になったのはさっきの妄想を慌てて取っ払っ影響が出てる。

そうしなきゃ緩みそうになった表情は硬くならない。

「さっきの記者やカメラが追跡してるかもしれないしなッ」

「嘘ッ!」

牧野が慌てて後ろを向いて後部の窓から確かめる。

後ろはSPの車だよ。

追跡していますって宣伝しながら追ってきているやつはいないと思うぞ。

「座れ」

牧野のスーツの裾を引っ張ってシートに降ろす。

後部席のシートに膝立ちになって後ろを振り返るのは子供だ。

20才を過ぎた女がすることじゃない。

やっぱり牧野だ。

可笑しさがこみあげてくる口元。

声を出さないことだけ感謝してもらいたい。

「一度、本社に行って時間をつぶしてからの方が安全だ」

「俺の1日秘書にしてやるよ」

「してやるってねッ」

道明寺のその傲慢な口調がヤダって拗ねた。

別に気にもなんねェけど。

俺のそばにいたいってやつは腐るほどいるぞ。

もう死んでもいいなんて感激する奴はいても拗ねて文句を言い出すのはお前くらいだよな。

それが面白い。

「夕方には帰るからね」

気を持ち直したように牧野がつぶやく。

「今日の夕食はなに?」

「なにって?」

「じゃが肉 食いてぇ」

「じゃが肉じゃなくて肉じゃがでしょう?」

「そうじゃなくて、なんて道明寺が夕食を私に頼むのよ」

俺が食いたいって言ったらそれは頼みじゃなく命令だ。

いい加減慣れろッ!

膨らんだ頬は不満そうに俺を見つめる。

「なんでって、牧野ン家まで俺も一緒に帰るんだしなッ」

昨日の夜の狭いベッドの中の温もり。

俺のキングサイズのベッドより居心地がよく感じる。

ベッドの中で少しでも動いたら床に落ちそうな幅。

広いベッドでは体験できない牧野の動きを感じながら守る様に抱きしめていた。

一度で終わりじゃ寂しすぎる。

「えっ!」

「もううちに道明寺が来る必要ないでしょう!」

俺の気持ちなんてお構いなしに迷惑そうな牧野。

うれしさを誤魔化すのはこいつの性格。

「素直じゃねェよな」

「本当に困るッ」

抱きしめようと伸ばした腕を全身で否定するように俺の身体を押しやられた。

素直じゃなきゃ、これはなんだッ!

今朝まで一緒に甘く過ごした彼氏にとる態度じゃねェだろうがぁ!

意地でも一緒に帰ってやるっ!

「お前んとこの両親1週間帰ってこないはずだよな?」

「連絡取って帰ってきてもらうもん」

「もったいないことするなッ」

「ホテルに泊まる方がよっぽど無駄使いッ」

「俺が言っているのはお金の無駄じゃなく精神論だ」

「・・・」

言葉の攻防が突然止まった。

「・・・」

イラッとした感情は牧野の沈黙で行き場をなくしている。

この間の悪さは気まずさ以外にない。

「道明寺から精神って、言葉を聞くとは思わなかった・・・」

空気を和らげるように牧野がクスッと笑った。

「お前がそばにいると落ち着くんだよ」

「私は落着けないけどね」

ゆっくりとした口調の俺に穏やかな牧野の声。

少し赤らんだ頬。目元は嬉しそうに形を変えている。

今度こそ絶対に照れているよな!?

「まずは俺の秘書を頼む」

声にしながら口元が柔らかく動く。

俺が頼みごとをするのは牧野だけだ。

それはYesという単語しか受け付けていない。

肩を抱くように回した腕。

俺の肩にコツンと頭を寄せる牧野。

俺の腕の中に・・・

やっと・・・

牧野が落ちた。

拍手コメント返礼

b-moka

仕事にならない司っていうのも面白そうな・・・。

そうすると西田さんの愚痴が聞ける日記も楽しそうですよね。

傍に置いておかない方がいいって結論とか(笑)

そうなんですよね・・・。

でも何とか終わらせたい!

ゆげ様

さらわれるの方ですか?

ドS倶楽部の方は多分こっちだろうなって思っているんですけど(笑)

思春期の男子の想像!

確かにとうなづく私。

総ちゃんとあきらが聞いたらからかいのネタ提供ですよね。

さぁ、投票の結果が楽しみです。