不機嫌なFACE 12
2週間ぶりの更新です。
加川さん登場で止めてしまっていたことにいまさら気が付く。
*「久しぶりだね」
本当に久しぶり。
なんかいつも急いでるときに限って加川さんに見つかる気がする。
いきなり握られた手首はぶるぶると上下に振られてた。
ちぎれそうな勢いはそのまま加川さんの迫力に比例してる。
「会えてよかった」
良かったって・・・なに?
「今度は双子だったんだって?」
「一人でも大変なのにねぇ」
「まぁ・・・何でも2倍ですからね」
ぎこちない笑いを浮かべても加川さんが気が付く気配はなし。
キャー!久しぶりです!!
・・・と、テンションを高められる相手ではなく気を引き締める。
どこからどう来るかわかない人だからッ!!
「あの代表だと子育てなんてそっちのけで仕事ばっかりじゃないの?」
傍から見てても忙しそうだものねと同情的視線は勘弁してもらいたい。
「辛かったら本当のこと言ってもいいんだからね」
グッとわたしを抱きしめた加川さん。
身動きが取れないほど抱きしめられるのは慣れているけど、私より身長が低い相手は初の経験。
加川さんの左手にはモップが握られたままって言うのもなんとなく落ち着かない。
焦る私の視線が見つけた冷たい視線。
ピクリと上に動く眉。
片唇はヒクリと上に吊り上る。
非常階段の扉を45度開いて肩で寄りかかって腕組みをしたままの司。
出てこないで~~~~~。
言葉にならない心の声を目で訴える。
道明寺代表が登場したからといっても、そそくさと逃げ出す加川さんじゃない。
勝手に想像して納得した話で司に文句を言い出しそうな気がする。
「CM見た?評判いいよね」
「素敵な代表でいいなって友達にうらやましがられるって得だよね」
「滅多に会えないのが問題よね~」
「CMを録画して繰り返し見たことなんていままでなかったのにッ!視聴率取れそうだよね」
「携帯でも録画してるんだ・・か・・ら・・」
「ぇっ!」「嘘っ!」
後ろから聞こえていた高めの声はぴたりと止まる。
当たり前のように動きも止まって、彼女たちの視線は、私の背中を通り越して壁際に開いた非常扉に向かってるのが分かった。
「あら、代表の奥さまにそんなに緊張することないでしょう」
違うッ!
彼女らは私の存在なんて気が付いてないつーの。
「つくしちゃんは、傲慢じゃないし、我儘じゃないし、親しみやすい子だからね」
加川さん・・・
道明寺が傲慢!我儘!冷淡って言ってるよ。
たぶん悪気はない。
ようやく加川さんから解放されて自由になった身体で彼女らを振り返る。
「どうも・・・」
彼女らが噂をしていたのは司のCMの話で・・・
それが気に入ってるって話を私だけじゃなく当の本人に聞かれた彼女らの心境は容易に分かる。
逃げ出したいよね。
加川さんなら「ファンなのよ」くらいは言って司に飛びつく気がする。
「すいません!!!」
私を突風の様に追い越した彼女らは扉の前で倍速で頭を下げてそのまま突き抜けて行った。
「なんだ?あれ?」
視線を彼女らの動きに合わせた後、司が私に視線を戻す。
「あれまぁ、代表もいたんだ。人が悪いね」
大口を開けて笑った顔は、そのまま私の横に歩いてきた司に向けられる。
そして司の背中がバシンと音を鳴らした。
少しよろける素振りは大げさ?
それとも手加減なくバチッとやられたのか?
「痕ついてないか?」なんてシャツを脱いだ司に確認させられたらどうする?
「いいかい、幼児に双子って子育てはたいへんなんだからね」
「テレビに出て浮つく前にしっかり父親の自覚を持たなきゃダメだよ」
やっぱり・・・
勝手に加川さんがしゃべりだした。
この人の口を誰か今すぐ縫って欲しい。
司!
私は何も言ってないからねッ!
「俺はしっかりやってるよ」
不機嫌を吐き捨てる様に司は言った。
「みんなそう言うんだよ」
「休みの日に一人で子供の世話をしたことがあるかい?」
一日中子供の世話を司にさせるなんて私の方が気が気じゃない。
それに子供の世話をしてくれる人は道明寺邸にはいっぱいだ。
普通の子育て真っ最中のママよりも私は自由があるし恵まれてると思ってる。
「ねぇよ」
ブスッとした声。
司の形相は沸々と怒った表情を作り出してる。
今の司に手が出る心配はないけど、この状況なら普通の社員は逃げ出す。
「作るときだけ一生懸命になるのが男だからね。作った後も責任取らなきゃ」
作るって・・・。
あっけらかんと言われても並んでる男女に向かって言われたら卑猥だよ。
「加川さん!!! しっかり司にはパパしてもらってますから!!! 何の不満もありません!!!」
「まだ仕事中ですよね!!」
加川さんの背中を押し出して前に進める。
「そうかい・・・でも・・・いつも私がつくしちゃんをかばってやることはできないからねェ」
物足りそうもない加川さんの表情。
私の後ろで「ピキッ」と何か音がしたように感じた。
「黙って聞いてれば、ペラペラとッ!!!」
「俺は浮ついてないし、時間があればしっかり子供の面倒も見る」
「今日なんて背中に赤ん坊を背負って仕事してたんだ!」
それ・・・微妙なカン違いを加川さんに植えつけてる気がする・・・。
「つくしちゃん・・・我慢できずに子供を置いて家を飛び出したのかい?」
ゆっくりと首だけ回して加川さんが私を気の毒そう見つめて、そして、明るくなった。
そう来たかッ!
加川さんの場合はその飛躍も納得できる。
私もムカッと来て司に舞と翼を押し付けたのは本当のことだしね。
頭が痛くなってきた。
「そういえば、ここは弁護士事務所があるフロアーだものね」
ぶつぶつと納得してうなずく加川さん。
「離婚の相談に来たつくしちゃんを代表が追いかけてきたんだね」
「よし! 任せな!」
加川さんの頭の中は「道明寺代表離婚!」で、固まってしまったらしい。
もしそうだとしても、加川さんに任せることはなにもないです!
それに私が弁護士って事を忘れてないですか!!!
ポンと胸を一つ大きくたたいた加川さんは両手、両足を開いた大の字で私と司の間を断ち塞ぐ。
「今のうちに行きな」
悪人に追いかけられた娘を助ける金さん?将軍?助さん格さんと自分をカン違い中の加川さん。
「俺たちは離婚をするつもりはない!」
「だからつくしちゃんが逃げてきたんだろ」
「つくしが俺から離れるわけがないだろう!こいつは俺にべたぼれだからな」
「すべての女が自分のものだって思ってるんじゃないだろうね」
飛び散る火花。
そこまで対抗して言い合うことか?
ここはケンカ越しじゃなく、冷静!穏やか!なほうが無難に収まるはずだ。
これ以上二人に勝手に喋らせたらビルごと崩壊しそうだ。
恥ずかしすぎることペラペラと恥ずかしげもなく言われそうな状況が徐々に私の思考を慌てさせる。
このままだとなにを言い出されるか分かったもんじゃない!
さっきまで執務室で!階段で!私に触りまくってたなんて言われたら・・・・・。
さっきの突風で逃げ出した女子社員の3倍のスピードで逃げてやる。
あたりを見渡して誰もいないと大きく息を吐く。
そして腹まで吸い込んだ。
「いい加減にして!離婚なんて考えてませんから!!」
きょとんとなった二つの顔が私に向けられる。
カチッと開くドアの音。
「誰が離婚するの?」
にっこりとほほ笑んでる玲子さんと視線がぶつかった。
久々のつくしの弁護士同僚玲子さん登場です。
懐かしいな~。
拍手コメント返礼
なおピン様
タマさんもどきって(笑)
加川タマ?
タマさんほど冷静な分析はしてないですけどね。
自分が楽しめそうな行動がとれるのは二人とも一緒かなぁ(^_^;)
弱みが旦那さんとだだったりして?
無口で真面目そうな旦那?それとも加川さんに口答えできない気弱なパパさんなのか?
加川パパ登場の予定はないのに、つい人物設定を考えてしまいました。
b-moka様
おはようございます。
何とか毎日の更新が出来ています。
合間が空くと御話がたまりますよね。
まとめて読んだ方が楽しいかもしれません。
久々の加川さんですが、本社の話が出てくると外せないキャラになってしまってます。
これからもどこかで登場する機会はあるでしょうね。
西田さん日記も久しぶりで♪
今回はおちゃめな西田さんでしたけどね。
本当にこの人がいなかったら・・・。
Gods&Death様
つくしがキレたのは防衛反応でしょうね。(笑)
なんだか司が悔しがるストーリーをご希望の様な・・・
玲子さんんがどう加川さんを相手にするのかで変わってきそうだわ。
ゆげ様
司を圧倒しそうな空気って・・・(^_^;)
そんなつもりは毛頭ない!とは言い切れないかぁ。
甲斐君じゃなく玲子さんを登場させたのはその気持の現れ?(笑)
>人の話を全然聞かないで、My worldを突き進んでいく、それでもって、ちょー勘違いなおせっかいを焼く
加川さんのプロフィル欄の性格はばっちりですね。
確かに歳をとると若いころ言えなかったようなことも言えるようになりますけどね。
加川さんみたいにはなれそうもありません。
はぴまりがドラマになったら相馬さんは誰だろう?
確か年齢は50代の設定だったはず・・・。
黒木瞳?
設楽は誰だ~~~。
二十代後半のきつめの美人・・・。
北斗の昔の恋人だもんなぁ。
新入社員の八神君もなかなかのキャラですよね。
片桐、桜庭 、朝比奈♪
いい男キャラいっぱい登場しそうで楽しめますよね。
ドラマ化希望熱が再燃しそうです。
キャスティングでがくりとならないといいけど(^_^;)