ソラノカナタ 49

今日は梅雨の合間の晴れです。

久しぶりに掃除に洗濯を張り切って!と思いつつPCの前に座り込む私。

そろそろこのお話もまとめに入らなくてはいけない状況です。

はじめはシリアスにいこうと思ってたのですが書いていくうちにいつものパターンに・・・(^_^;)

*

「これで満足か?」

コツコツと指が不機嫌そうに木調の音をたてる。

デスクに座ったままの道明寺の前には入れ替わり立ち代りで社員がやってきた。

書類を眺めながら不機嫌そうな声が執務室に響く。

私に対してじゃないのにその声にビクリと反応してしまってる。

道明寺と一緒にいて落着けない自分。

満足なんて程遠い時間。

蒼白な顔で肩を落としたままの社員を、私は頭を下げて数人は見送ってる。

道明寺のデスクの横で本来なら西田さんがいるはずの場所を与えられた私。

PCの画面で見てるのは道明寺のスケジュール。

これだと今日、帰れるのは10時過ぎだ。

本当に分刻みだと感心。

私と会う時間を作るのも大変なんだと分かる。

「やってられないよな」

最後の書類をポンとデスクの上に投げて道明寺がつぶやいた。

やってられないのは社員の方じゃないないのだろうか?

「1時間以上もサインをするだけだぞ」

道明寺がため息交じりにちらりと移したデスクの上の書類。

まだ数センチの高さで積み重ねておいてある。

道明寺がブランドタッチで素早くキーを叩く。

しなやかな指の動きだけでも艶が生まれる。

見てるだけでポッとなってる自分が分かる。

額にかかるウエーブした黒髪。

俯き加減の真剣な横顔。

それは整い過ぎた顔立ちをいっそうハンサムに引き立ててる。

仕事をしてるだけの道明寺に魅かれてる。

自分の気持ちを誤魔化す様にPCの画面を睨みつけていた。

ピピと音が鳴ってメールソフトが画面に開く。

『見とれてんじゃねェよ』

件名がこれ?

道明寺だっ!!!

『速攻で仕事は終わらせるから心配するな』

心配は何もしてないけど・・・。

今日は道明寺と一緒に帰宅って覚悟はすでについている。

2人でいられるのがうれしくない理由なんてないのだから。

『今朝の続きがしたい』

変哲もない文字でこれだけ爆発的に恥ずかしさがこみあげてくる経験はない。

ハートマークの絵文字が付いてるよリ恥ずかしい気がする。

リアルに道明寺との触れ合いを回想しそうな自分を振り払う。

「メールは送れないんじゃないの」

PCから視線を道明寺に移して叫んでしまってた。

私を見つめたまま、ニンマリと唇が動いて、すぐに声が聞こえる距離なのにキーをたたく動きを道明寺が見せる。

『ばーか 、そんなのすぐに解除できるぞ』

確かに道明寺の指示を拒否出来る社員はいるはずがない。

西田さん以外は・・・。

「遊ばないで仕事した方がいいよ」

『お前が気にする事じゃない』

メールで答える道明寺に声で答える私。

『さっきのメールをお前から欲しい』

『西田が俺に送りつけてぬか喜びさせたやつ』

えっ?

西田さんのメールって・・・。

ギャーーーーーッ!!!

無理!

叫びそうな口元に力を入れて見上げたその先で道明寺の輝く瞳が私を捉えてる。

「ス キ」

道明寺の唇が音も立てずにゆっくりと動いた。

『西田のメールじゃ寝起きが悪い』

ぬっ?

寝起きって・・・目覚めが悪いでしょう!

相変わらずバカなんだから。

期待感いっぱいの瞳が私を見つめてる。

ホントにしょうがない。

子どもにおもちゃを強請られてるみたいで無碍にできない感情。

我儘も可愛いくて、愛しくなる。

道明寺

左上に打った文字。

画面の右下ギリギリにカーソルを移動させてキーを打つ。

キーを指先がSUKIとゆっくりと叩く。

スキって変換された文字がなんとなく軽く見えて、キーをたたいて文字を消した。

そして打ち直し変換する文字。

愛してる

そのまま目をギュゥと閉じて決死の思いで送信キーを押す。

もう二度目はない!って決死の覚悟。

ゆっくりと片方だけの目を開いて広がる視界。

その中に見えた道明寺のほころぶ顔。

「牧野。お前は俺を喜ばせる天才だよな」

道明寺のご機嫌な声につぶっていた片目も開いた。

「これプリントアウトして持っておく」

肌身離さず持つとかあり?

「あいつらに見せたら面白いかもな」

あいつ等ってもしかして花沢類に西門さんに美作さん・・・だよね・・・。

牧野はどうしようもなく俺のことを愛してるらしいなんて自慢げに話す道明寺が浮かぶ。

スクリーンセーバーに設定しておくか」

さっきまでメールを一方的に送りつけて黙ったままだったあいつは、楽しげな声で一気にしゃべりだす。

プリントアウトもPCの画面にメールが貼り付けられるのもヤダーーーーーッ。

「消す」

自分の席から道明寺のデスクに飛び移る勢いで身体を浮き上がらせた。

「よせ!」

「消して!」

「離せ!」

マウスの取り合い。

道明寺の手が私の腕を掴んで膝の上に座らせれても続く攻防。

「パソコンが壊れるぞ」

「壊れても大したことじゃないでしょう」

「・・・」

動きを止めた道明寺がまじまじと私を見つめてる。

「ななななによっ!」

「牧野・・・お前・・・」

「プッー」

私の上半身を押さえつけたままの道明寺が私の頭の上で吹き出したのが分かった。

「いつもの俺たちの立場と入れ替わってねェ?」

「えっ?」

「物を壊すのは俺の方かと思ってたけどな」

それをお前が必死で止めるのを俺は楽しんでるんだとクスクスと笑声を漏らしてる。

私の肩に額を押さえつけたまま道明寺の笑い声の振動が服の上からも肌に響く。

「そんなに笑わないでよ」

「やっぱ、お前が好きだわ」

私の腕を抑え込んでいた道明寺の腕は下から腕に動いて胸元で優しく交差する。

「このメールが俺の宝物だ。誰にも消させない」

私の頬に触れた唇が柔らかく形を変えてそうつぶやいた。

「道明寺ホールディングス代表にしては安過ぎる宝物だね」

道明寺の手のひらに重ねる私の手のひら。

温もりがそのまま身体を包み込んでいく。

道明寺の何気ない言葉がなによりも私を幸せにしてくれる。

この一時が私の宝物だって思えた。

拍手コメント返礼

Gods&Death様

御疲れ様です。

お忙しい中のコメントうれしいです。

「スキ」って司もなかなか言わないですよね。

声には出させませんでしたけど、何気に催促する顔を想像するとニンマリとなりそうで、楽しんじゃってました。

b-moka

梅雨の晴れ間って貴重ですよね。

今日はもう天気が崩れそうです。

これがいつまでも続くはずがない・・・

そう期待してしまう倶楽部の方は多くて(^_^;)

そうなったらまとめに入ってるのに終わらなくなります(笑)

ここは涙を飲んで最終話をアップさせてくださ~い。

びー***様

遅くなりましたがお誕生日おめでとうございます。

旦那様からのプレゼントいいですね。

我が家はもうすぐ旦那の誕生日が近づいてます。

なに贈ろう(^_^;)

こっこ 様

一番好きと言っていただきうれしいです。