やさしいkiss

私の脳を刺激してくれるコメント楽しませてもらってます。

いろんなところで新しいお話が蓄積されていきます。

うれしいようなやばいような・・・(^_^;)

今日は久々に短編を一つお届け。

やっぱり『つかつくだ♪』と、楽しんでもらえるといいんですけど。

ち**様♪ キスですよ~(笑)

ソラノカナタ 49 のその後のお話です。

*

「つくし様がおいでになってます」

帰宅した俺が屋敷に足を一歩踏み入れた途端に、もっとも重大事項だと言いたげにセバスチャンがそう告げた。

告げたセバスチャンのやけに嬉しそうな顔。

うれしいでしょうと俺の感情を先読みしてる満足げなセバスチャンの笑み。

素直に見せるかッと唇を引き締める。

もちろんセバスチャンは純粋な日本人で本名じゃない。

律儀な我が家の執事。

本名 丸山孝三郎だぞ。

牧野の執事のイメージはアルプスの少女ハイジの執事ということらしい。

「最近は 黒執事ってかっこいい執事もセバスチャンなんだよね」

名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家の執事セバスチャン・ミカエリス

説明されても興味なし。

牧野が丸山をどう呼ぼうが大した影響はない。

「セバスチャンさん」なんて牧野に呼ばれてる丸山もまんざらでもなく喜んでる節がある。

「つくし様がいらっしゃるなら、私は何でもします」

我が家の使用人たちが崇拝気味の牧野。

牧野がいてテンションが上がるのは俺だけではない。

こいつらの顔も明るいんだよなぁ。

コツコツと前に進める足も自然とテンポが上がる。

牧野の家なら数歩ですむ。

こんな時はだだっ広い屋敷が無駄に思えてくる。

「牧野」

部屋に入って愛しいやつの名を呼ぶ。

俺の声だけが響くへや。

返事なし。

本当に牧野がいるのか?

丸山の奴が俺を騙した?

そんな自分の身が危なくなるようなことこの屋敷の使用人がするはずない。

テーブルの椅子の座る人影。

「いるんならすぐ返事しろよ」

俺が近づいても身動き一つしない牧野。

寝てる・・・。

本当にどこでも寝れるやつ。

ヨダレたらすなよ。

右手にはペンをもったままの状態。

俺を待ってる間に大学の勉強をしてたのかって体勢だ。

テーブルの上にうつぶせているままの牧野。

横に首を動かした顔がむにゃって口を動かす。

無邪気な安心しきってる無防備な寝顔。

牧野の寝顔を見ているのも嫌いじゃない。

額にかかる髪に触れてた指先はそのまま頬に触れる。

牧野の温もりがそのまま愛しい感情を細胞から呼び覚ます。

どうしようもねェなと苦笑気味の俺。

牧野が下敷きにしてる紙の上に赤く書かれた文字。

『キス』

キスって・・・もちろんそれは俺に対してのはず。

キスしてほしいっておねだりか?

俺以外に牧野がキスしたいって思う相手はいるはずもない。

この前のスキのメールより自筆でラブレターとか書いて俺に渡すつもりだったとか?

俺がすげ~喜ぶのが分かってる牧野からのサプライズ。

プレゼントされる記念日ってなにかあったか?

誕生日はまだ。

付き合った日?

どこから付きあったことになる。

俺が殴られた日・・・記念日にするのは最悪、日にちなんて覚えちゃない。

はじめてキスした日・・・偶然唇がぶつかっただけ、柔らかい感触は覚えてるがあんなのキスの数にはいらねェよな。

初めてのデート・・・牧野と喧嘩した。

どれも日にちなんて覚えてはいない。

はじめて2人で朝を迎えたって確か・・・3年前の今日じゃなかったか?

牧野も今日はそのつもりで俺に会いに来て、この手紙を俺に渡すつもりだとか?

たぶんそうだ。

絶対そうだと確信。

今日は朝まで帰らないとか、一緒にいたいと照れながら甘えてくる牧野を想像。

確率は低いが期待せずにはいられない。

キスが手始めでそのままの流れっておいしいぞぉぉぉぉぉ!

「牧野」

肩に置く手にも力が入って牧野の身体をユラユラと揺らす。

目覚めて俺に気が付いた牧野が慌てて手紙を身体で覆って隠す仕草を想像しながら声をかけている俺。

「起きろ。帰って来たぞ」

「あっ・・・おかえり・・・私寝ちゃってた?」

目をこすりながら牧野は頭をもたげる。

「ヨダレたれてたぞ」

「えっ!」

慌てたように口元をぬぐう仕草を牧野が見せる。

「垂らしてないじゃん」

照れながらもムッとした視線を俺に向ける牧野。

「何やってたんだ」

俺にラブレター書いてたのは確認済みだ。

ほころびそうになる頬に力を入れてテーブルの上の紙に手を伸ばす。

ここでダメ!とか、見ないで!とか抵抗の声が上がるは・・・ず・・・。

抵抗なし。

スムーズ過ぎるくらいにスキと(そうじゃなかったキス)書かれた紙は俺の目の前に姿を見せた。

『道明寺、いつも素直じゃなくてごめん』

とか・・・

『早くお嫁さんにしてください』

とか・・・

書いてない!!!!!

甘い言葉は何もなく視線が捉えたキスの文字。

キス・・・ 120円 

値段取るのか?俺が牧野に払うにしても安いだろうがぁ。

牧野が俺のキスに払う金額?

つーかタダでいくらでもするけど・・・。

6って数字が横に書かれてる。

6回じゃ足らねえだろう。

もう一つ右にゼロを付けろよ。

緩んできた頬が文字を読んでいくたびに固まってきた。

エビにイカ?

かぼちゃ、茄子・・・。

キスにこれら関係あり?

キスの前に食べるなとか?

餃子とか焼肉ならわかるけど。

「取らないでよね」

「これ・・・キス・・・」

キスから頭が離れない。

「天ぷらが食べたいなって思って、献立と予算を考えたんだよね」

天ぷら・・・

天ぷらって油で揚げるやつか?

食い物・・・。

キスのリストより食べ物のリストの方が牧野らしい。

力の抜けた指先から白い紙はユラユラとテーブルの上に落ちる。

「道明寺は何が好き?」

紙を手に取った牧野が悪気のない微笑みを浮かべてる。

「好きって・・・・キス」

じゃねェよッ!

「ヘンな期待持たせるなッ!」

「期待って何よ!」

「お前がキスとか書いてるから、キスしたいて強請ってるのかと期待するだろうが」

「期待する方がおかしいでしょう」

どさっと勢いよく立ち上がった牧野がすぐ俺の目の前に迫る。

ほんのりと染まる頬。

照れくささを誤魔化す様に強がる口元。

せがまれなくても、おねだりされなくても手を伸ばせばいつでも抱きしめてキスをする。

遠慮なく強要出来る関係のはず。

牧野を抱きしめるために腰に腕を回して抱き寄せた。

「キス違いだから」

「したくねェの?」

黙ったまま閉じられた唇。

戸惑いがそのまま浮かんだ瞳。

ギュッと牧野の指先が俺のシャツの袖を掴む。

返事の代わりに閉じられた瞼。

牧野の息遣いを感じながら誘われるままに唇を落とした。

今回はドS倶楽部のお邪魔はいらずに収めましたが・・・

司のむこうずねを蹴って出ていくつくしが良かったような気もしますが・・・。

ち**様!司の勘違いはこのように納めてみましたよ♪

珍しい結末。