PHANTOM 30(完)
絶体絶命!
この状況の夫婦に、この四文字熟語を使えるのはこの二人だけじゃないでしょうか?
追い込んだウサギをおいしく料理できるかどうかは猛獣の腕次第ってことでお楽しみください。
料理するのは猛獣じゃなくて調教師のほうだったりして・・・(;^ω^)
投げ出した身体の反動でベッドのスプリングがわずかに跳ねる。
その身体のそばに乱暴に腰を下ろした。
つくしから目を離したのは最初のその一瞬。
腰を回して華奢な身体を挟むように両手をベッドに付いた。
見下ろして見つめ合う瞳。
不安の色を宿した瞳の奥が怒ったような拗ねたような強い意志を秘めた色に変わった。
伸びてきた手のひらがそっと俺の頬に触れる。
そのまま牧野の顔が近づいて唇に柔らかい感触が触れた。
チュッと鳴った音はそのまま唇を甘え噛みしてはなれる。
突然のつくしからのキスは意表をつかれた驚きと甘酸っぱい感触を胸の奥に植え付けてくれる。
俺の心の中にくすぶった毒気が一気に抜かれて牧野からの攻撃にフリーズした。
「今度はなに?」
「私の話を聞いてないよね?」
諭すような口ぶりは西田だけでたくさん。
実際お前が松岡に封筒を受け取ったのを俺は見てる。
「私、道明寺が嫌がるようなこと絶対しないよ。
怒らせることはあってもね」
余裕な表情でクスッとした笑みをつくしが見せる。
嫌がるも怒らせるも同等じゃねぇのかよ。
「チケットに公平は関係ないからね。
道明寺を誘うつもりで手に入れたものなんだけど」
え?
俺?
つくしが俺を誘うって、今、言ったよな?
「そんなに驚くことかな?」
不満そうにつぶやく唇。
「一緒に行ってくれるよね?」
つくしの指先が俺の顔のラインに沿って触れて手のひらが頬を包んだ。
自然と重なる視線。
瞳の中に映る俺の顔は今どうしようもなく途方に暮れてる。
つくしが俺以外のやつを誘うと思ったのは俺の勘違いでこいつは最初から俺を誘うつもりで・・・
自分の勘違いに呆れながら細胞が一気に小躍りしてる。
ただ一つわかってるのは不愉快でも愉快でもどっちにしろつくしを抱きしめたくてしょうがないって事実。
欲しいのは情熱。
全力をつくしてただ一人だけに注ぐ激しい感情。
きっとつくしから俺を求めれば俺は理性をなくして本能のままにつき進んでしまうに違いない。
あんな軽いキス一つで今も理性は持っていかれそうだ。
情熱が欲望に変わる瞬間はこいつの前では激流に流される木の葉よりももろい。
「最初から、そういえばいいだろう」
「だって、内緒にして当日に驚かそうと思ってんだもん。
西田さんにも協力してもらって道明寺のスケジュールも開けてもらって、完璧だったはずなのに・・・」
俺を責める口調と拗ねた瞳が俺を捉える。
甘えてるようにしか思えない感覚は体中の細胞を活性化させる様だ。
「離婚届とか、ラブレターとか、公平を誘ってるとか、どうすればそんな勘違いできるのかな」
ダメだっ。
俺を責めるこいつを見ててもすげー可愛くてしょうがねぇ。
半身ずらしたまま重ねる身体。
そのまま輪郭に添って回した腕。
指先をつくしの髪の中に滑りこませてそっと抱き寄せた。
「お前のことになると最近、どうも調子が出ねぇんだよ。
お前が俺と別れられるはずなんてねぇのにな」
胸元に感じるつくしの息遣い。
指先が頭を撫でるたびに絡みつく黒髪の感触。
髪の毛の一本さえも愛ししくて前髪に落とす唇。
「わかんないよ。
変な勘違いばかりされると冷めちゃうかもしれないし」
天邪鬼な声はそのまま胸元をくすぐって柔らかい感触を肌に残す。
「俺以上にお前を夢中にさせる男はいないから冷めねぇよ」
とに、なんで、俺はお前が離婚届持ってるとかほかの男を誘うとか馬鹿な勘違いしたんだろうな。
今の俺なら笑い飛ばして気にも留めないって思う。
「まあ、今回は謝る。
俺が悪かった」
こいつには素直に謝れる自分がおかしくてしょうがない。
頭を上げて見下ろしたその下で驚いたよう目を瞠ったつくしの表情がそのおかしさに倍増させてくれる。
つくしの頬に添えた指先。
顎を支えて軽く上に角度をつけて塞ぐ唇。
散る花びらが唇に舞い落ちるよなふんわりと軽く触れただけの唇。
ただ軽く唇が触れただけでじんとした痺れが背中を走る。
だからいつもすぐに追い込まれちまう。
「んっ・・・」
鼻から抜ける甘い吐息。
小さく息を飲む柔らかい唇に角度を変えながら唇を重ねた。
もう二度とこんなふざけた勘違いはしない。
お前の誘い。
お前とのデート。
楽しみにしてる。
その前に・・・
今は・・・
お前を抱いて、愛して、味合いつくしたい。
拍手コメント返礼
りり 様
終わってみればどちらに進むかはこの二人次第というような話だった気がします。(;^ω^)
アーティーチョーク 様
このチケット使うことはできたのでしょうか?
チケットどっかに落としたってオチがあったりして・・・(;^ω^)