FIGHT!! 33

こちらのお話はどうやってつくしの正体が阿賀野さんにばれるのか!

興味はここだと思うんですよね。(^_^;)

別に隠してるわけじゃないんですけどね。

*

ブルルルル。

マナーモードの携帯が胸元の内ポケットから振動を伝える。

「すいません」

内ポケットから取り出した携帯。

着信者に表示された司の文字。

「Darlin じゃ無くなったのね」

私の手元を眺めてた玲子さんが明るくつぶやいた。

「あれは私が設定したわけじゃありませんから」

司に壊された携帯を買い替えてアドレスを入れ直すのに勝手に司が自分で入れたんだから。

データーを新しい携帯に移せなくなるくらいに壊すってどんだけのバカ力なのだろう。

今の私の携帯の中のアドレスは以前より限りなく0に近い。

携帯がかかってくるたびにアドレスに名前を入力する作業は現在進行形。

司に玲子さんに西田さん、それに阿賀野さんが飛び入りで着信を残してる。

事務所で司から携帯がかかってきた時も偶然に玲子さんに見られてた。

「Darlinて・・・代表よね?」

「まあ・・・」

すぐに携帯に出て表示された画面を隠す。

見られたくないときに見られるって本当に恥ずかしい。

「相変わらず仲いいのね」

その言葉の後に速効でDarlinの文字は消滅させた。

背中を丸めて携帯を手のひらで包んで小さな声で携帯に出る。

「どこにいる?」

低めの不機嫌な声。

ドスを利かせて脅すなつーの。

「仕事中だけど」

これが仕事と言えるかどうかは甚だ微妙だ。

「御主人?」

テーブルの上にわずかに身を乗り出した阿賀野さんは私と玲子さんを交互に見つめてる。

コクリとうなずく私の横で、「つくしちゃんのご主人は今でもべたぼれで束縛がすごいのよ」と、玲子さんがにっこりほほ笑む。

玲子さんッ!余計なことを言わないでぇ~。

束縛をどう阿賀野さんが捉えるかそこが気になる。

「すごいんですか?」

「私なら疲れるわね」

私も疲れるときはあります!

言いたい声は私の目の前で考え込む表情を作る阿賀野さんを見て飲み込んだ。

「すぐ戻ってこい」

「なんで?」

「俺が戻れと言ったら戻ればいいだろうがぁ」

朝は機嫌が良かったはずなんだけど・・・。

不機嫌な声は司のイラツキを余すことなく私に伝えてくる。

こんな時は逆らうのは得策じゃない。

「急用?」

「すぐ戻れって」

「暇ができたから呼び出したとかあるかもね?」

「私は暇じゃないんですけど」

「道明寺さんのご亭主って亭主関白なの?」

私と玲子さんの会話に阿賀野さんが割り込んできた。

「亭主関白っていうのかしら?」

ちらりと私を見る玲子さんの瞳は確実に笑ってる。

俺様!我儘!横暴!自分勝手!強引!

いつもならスラスラ出てくる言葉を今日は飲み込む。

「つくしちゃん・・・今日はおとなしくない」

「いつもならスラスラとわがッ」

「わーーーッ」

玲子さんの口を素早く塞いで「強引なだけです」と叫んだ。

「束縛が強くて強引って・・・道明寺さん窮屈で大変じゃないですか!」

「もしかしてご主人て無職なんじゃないの?それで暇を持て余して携帯で道明寺さんの行動を何度も確認してるとか?そしてしかたなく道明寺さんが身を粉にして働いてる・・・」

「DVもある印象が・・・」

阿賀野さんの頭の中で私はどれだけ幸が薄い女性になっていくんだろう。

「私の悩みなんて問題外ですよね」

ドンとテーブルが両方の拳を振り下ろされて音をたてる。

えっ・・・?

あっ?

阿賀野さんは涙目で私を見つめている。

「つくしちゃん・・・あなたのご主人て私の知ってる男性よね・・・」

「当たり前です」

「この人・・・どうしてこんなカン違いできるの?」

耳もとで小さく私にしか聞こえないような声を玲子さんがささやく。

「わかりません!」

静まりかえる店内。

そこまで注目を浴びる大声は出てない。

「キャー」

どこからか聞こえる黄色い声。

それも一つ二つじゃない。

背中から感じる冷ややかな空気。

「俺は忙しんだ」

頭上からドンと降りてきた腕にヒヤッて背中がびくつく。

頭の上から覗き込む瞳とぶつかった。

言葉の冷たさとは裏腹の柔らかい熱を帯びる瞳。

「なんで来るの!」

「お前が来ないからだろうがぁ」

「トラブルに巻き込まれたら困るからな」

「人がいつもトラブってるような言い方はしないでくれる」

「自覚がねェから俺が困る」

「道明寺さん・・・この方・・・」

阿賀野さんがぼっ~となったまま司を見つめて固まっていた。

拍手コメント返礼

なおピン様

ここまでボケられると「もういい!」ってなりそうですよね。

玲子さんもあきれてるし(^_^;)

阿賀野さん、よくいままで平穏無事にいられたって思うんですけど・・・。