秘書西田の坊ちゃん観察日記 41(FIGHT!! 37番外編)

久々の坊ちゃん観察日記♪

やはり西田さんが登場したら必要ですよね。

このお話は『FIGHT!! 37』の番外編になります。

*

「失礼します」

秘書室に現れたのはつくし様の同僚。

甲斐玲子。

時々何らかの情報を交換するのはつくし様の司法研修時代から始まる。

持ちつ持たれつということだろうか。

つくし様の仕事のスケジュールと仕事内容か彼女から私のPCにメールで送られる。

それを織り込んで代表のスケジュールの調整を図る。

最近はそこに駿坊ちゃんの行事まで加わってきた。

それでも以前より代表の仕事能率は各段に跳ね上がっている。

代表本人のTOPのとしての能力と自覚は優れていると私も認めるところだ。

時々タガが外れる場合があるのでそこだけが要注意。

これだからつくし様の状況を把握するのは外せないのだ。

根本にあるのは司様とつくし様の幸せ。

それと・・・社員の平和のため。

私たちは手を組んでいます。

「何か問題でも?」

書類を作成中の手を私は止める。

「問題が起こってるわけじゃないのですが、にぎやかになりそうなので」

つくし様に持ち込まれた相談。

そこから話は始まって、阿賀野という名前には聞き覚えがあった。

代表に調べろと指示を出された英徳での駿様のご学友。

特に問題はなかったはずだが・・・。

「つくしちゃんを道明寺代表の奥様だとは思ってない様なんです」

その意味が理解しかねない。

話を聞けば代表は無職で働かずその上暴力までふるうと誤解を受けている。

10代の頃の代表を思い返せばあながちウソじゃありませんけどね。

どうしてそこまでの誤解が生まれてるのか・・・。

何が起こってもあの二人なら驚きはしませんがこんな誤解があろうとは予想外。

「それにモデル並みに目立つ3人もいらしてましたから」

収集がつかなくなる前にと言いたげな表情を彼女が浮かべる。

私は椅子から立ち上がりデスクから離れて窓際に立つ。

少しの汚れもなく透明なガラス窓。

下を眺めても小さなおもちゃの様に車の流れが見えるだけのもの。

たぶんあのあたりで騒ぎは起きているのだろうか。

「今日はのんびり仕事に集中できると思っていたんですが・・・」

「私もです」

柔らかく表情を変えた彼女に見送られて私は地上へと向かった。

遠くから眺めるような人だかり。

まだそこまで人だかりは多くはない。

そこから頭一つ飛び出た長身が4つ。

阿賀野さん!違う!」

歩道の手前の方から聞こえてきたつくし様の声。

「えっ・・・でも・・・」

「口も悪くて、態度もでかいけど、殴られたことはないですからッ!」

つくし様と向かい合う小柄の女性。

横柄、傲慢、尊大、漢字で表す言葉よりぴったりと当てはまると思ってしまった。

そう言われても機嫌を損ねてない代表が見えた。

そこまで言うか!の不満そうな横顔。

そこに不満はあっても怒りが見えない面白さ。

私の気持ちを代弁するように代表の後ろで3人が吹き出した。

「見た目はあんなだけど私にはやさしい人だから」

カッコいい、美男子、眉目秀麗を表現するなら「見た目はあんなだけど」といわれるはずがない。

冷淡、不機嫌、不愛想このあたりか?

それでも普段は人目を惹きつけるオーラが他人を拒絶する雰囲気をも一蹴する。

「司が優しいのは牧野限定だけどね」

「牧野がいなくなれば俺たちが一番被害を被る」

「牧野それを忘れるな」

「分かってるわよ」

何か言いたげな代表が口をつぐむ連携的プレー。

気心の知れた友がいるというのは財産だ。

そろそろ・・・

すっと代表の背中から声をかける。

私の存在に全く気がついてない代表が「わっ」と苦手な小動物でも見たような驚きの声を上げた。

「なんで、お前がいるんだ!」

いたら困るとでも言いたげな不愉快な声。

慣れてます。

「最上階から代表が騒いでるのが見えましたから」

「老眼になりかけのお前の目で見えるわけないだろう」

今のところ私の目はまだしっかり新聞の文字を読むのにも困ってません。

「老眼は手元のものが見えにくくなる現象です」

遠くを見るのに老眼は関係ないのです。

これ以上しゃべるなとでも言いたげなイラだちを素で表している代表。

いつもの代表だと私の胸の奥で楽しげな気持ちが生まれてくるのだから不思議なものです。

目の前の代表の表情がなんとなく違うことを想像するようにキョドとなってこわばる。

私の老眼疑惑からなにを考えているのか・・・。

どうして俺がここにいるのが分かったって疑問を顔に張り付けてる代表。

私が代表の行動をストーカーしてるとかは思わないでいただきたい。

「冗談です」

口がわずかに開いて気の抜けた表情が私を見つめる。

「つくし様の同僚の甲斐玲子さんが知らせてくれたんですよ」

納得したような表情はそのまま唇をギュゥとかみしめる。

いつものピシャリとした引き締まった表情に代表が戻った。

「西田さん助かりました」

私と代表の間に駆け寄るつくし様は太陽を思わせる温かく明るい笑顔を浮かべる。

「西田さんって・・・マネージャー?」

代表らをモデルと間違えたのは聞いていたが・・・

なぜ私がマネージャー?

仕事的にはそういう面もなくはない。

「マネージャーではなく秘書です」

内ポケットから阿賀野さんに差し出した名刺。

その名刺を小さく声に出しながら読み上げるている。

「道明寺・・・ホールディングス・・・秘書・・・って・・・」

「あっ・・・」

ようやく気が付いたように道明寺本社ビルの壁に刻まれた文字と名刺を見比べていたその顔は見る間に顔色がなくなった。

「え?もしかして・・・」

「もしかしなくても司はこのビルの経営者」

笑を残したまま西門様が答える。

「道明寺って・・・道明寺財閥?」

驚いたままの顔は食い入るようにつくし様を見つめてる。

私の存在価値はここまでで消えているようだ。

ここでようやく道明寺財閥とのつながりは正された。

特売とか安売りの話題が続く。

セレブな5人から聞こえる話は不釣り合いな話。

「節約術と言ってよね」

膨れた顔をつくし様が代表に向けた。

「そんな必要ねえだろうが!」

「無駄をなくすことは必要でしょう」

「それなりの生活をしないから今回の様なカン違いを生むんだろうが」

「こんなこと初めてでしょう!頻繁にあるような言い方しないでくれる」

「俺に迷惑をかけるのは初めてじゃねえだろうがぁ」

「私のこと迷惑って思ってるんだ」

「思ってねェよ」

「ウソッ」

「思ってねえよ。お前に迷惑かけられるの嫌じゃねェし」

「仕事以外ならお前の事しか考えてないから」

言葉を言い返しながら近くなるお二人の距離。

まわりが気を使わない程度での範囲で抱擁をお願いしたい。

そうじゃないと照れたつくし様が代表から逃れようと抵抗しますよ。

仕事以外でも仕事のことに重点を置いていただくと私は助かります。

「それが一番迷惑です」

私に聞かれてたことが恥ずかしいとでも言いたげに慌てたようにつくし様が代表を突き放した。

わずかによろけただけで持ち直したのは代表、さすがです。

しかし、今回は私も貴重な経験をさせていただきました。

「今回の問題は代表の認識度が足らなかったったということです」

代表が嫌がるメディアへの露出。

この出来事が使えそうな気がします。

次なる目標が決まった気がした。

拍手コメント返礼

なおピン様

情報網の整備って必要だと思いません?

きっと「代表がそちらに向った」着信音二回とかで知らせあってたりして~

なんておバカなことも考えております。

これ以上認識度上げなくても~

あんがい坊ちゃんを知らなかった人がいるってことが西田さんなりにショックだったりするかもしれませんよね。