FIGHT!! 38

このお話も次の段階へ♪

ちょっとその前に一休みのお話です。

*

「なんで、俺が貧乏で、暴力夫なんだッ!」

傷ついたって、ちっとも落ち込んでないむっつりとした顔がつぶやく。

「誤解が解けたからよかったじゃない」

「ちっとも良くねェ!」

ジロリと私に向けられて視線は完全に私を責めている。

「ホント、お前といると飽きないわ」

クスッと笑みを目元に司が浮かべる。

この笑顔に弱いッ。

車から降りて二人で玄関のドアを開ける。

まわりにSPも西田さんもいない状態で二人で帰ってきたのは久しぶりだ。

「お帰りなさいませ」

コツンと音をたてる杖を付く音、そして、渋めの声が私の腰の位置で聞こえてきた。

「タマ、頭下げんな。ただでさえ、身長が低くなってんだからそのうち見えなくなるぞ」

「まだ坊ちゃんには負けません」

ピンと背筋をタマ先輩が伸ばす。

坊ちゃんって・・・

3歳児の駿に追い越されたらそれは漫画だよ。

「あっ!パパ」

タマ先輩の傍にいた駿はパッと明るくなった笑顔を浮かべて司の膝に飛びついた。

「おっ、さすがにこの時間は駿も起きてるか」

司も極上の笑顔で駿に応えて小さな体を抱き上げる。

「司坊ちゃんのこんなお姿が見れるなんて、若奥様のおかげだね」

褒められてるのか、遊ばれてるのか、タマ先輩のニンマリとした顔には答えようがない。

「坊ちゃんて呼ぶなよ」

何時もは尊大な態度の司もタマ先輩の前では太刀打ちできない子供に返る。

「パパ、遊ぼう」

「おっ、何して遊ぶ?」

「お馬さん」

どこの家庭でもありがちな親子の会話を本当にうれしそうに見てるタマ先輩。

「あんな、子煩悩になるとは思わなかったよ」

「本当につくしのおかげだね」

人前では私をたてて若奥様って呼ぶタマ先輩が昔みたいにつくしって呼んでくれる瞬間がうれしい。

「これ、疲れるんだぞ」

四つん這いになった司の背中に跨る駿。

「本物の馬の方が面白いぞ」

「パパの方がいい」

「ひひ~ん」

わざと両手を持ちあげて背中をそらす司。

落ッこちないように司の首筋にしがみつく駿。

にぎやかさに釣られて顔を出した使用人達の意外そうな表情はそのまま笑顔に変わる。

「駿坊ちゃん負けるな」

どこからか上がる声。

「俺の応援は?」

四つん這いに戻った司が頭をもたげる。

どこからも反応なし。

「やっぱ、駿の方が人気があるか」

クスッと零れる声。

司の声に辺りには柔らいだ風が包み込む。

私が初めて道明寺の屋敷に来たとき(無理やり連れ込まれたってのがホント)遺跡の様な寂しさと冷たさを感じた。

数年の時を経て司の横に私とまだ小さい3人の子供達。

小さな幼い声に冷え冷えとした屋敷も明るさと温かみと笑顔が絶えない空間に変わった。

司が小さい頃に感じだ孤独感を子供たちに感じさせないって想いが父親になった司から伝わる。

無駄に広いとこだけが今も昔も変わらない。

「俺の威厳がなくなる」

笑ったままの司が駿を背中から降ろしてもう一度抱き抱えて肩に乗せる。

「肩車だ」

2メートルを超す高さでも天井まではまだ十分に余裕がある。

私の実家なら駿の頭と天井はくっ付いてるに違いない。

「サービスはここまでだ」

照れてるのを隠す様に引き締めた顔がブスッとつぶやく。

低めの声にも使用人たちから笑顔が消えることはない。

「あいつ等には見せられない」

さっきまで一緒にいた花沢類、西門さん、美作さんのことを司は思い出している。

心配しなくても3人とも司の駿に見せる親ばかぶりは知ってると思うけどね。

「今、お前笑ったろう!」

「えっ?」

「だってかわいいんだもん」

押さえようとしても自然と頬がほころんでくる。

「お前も俺じゃなくて駿なのか」

使用人には見せなかった不服そうな感情が司の表に出てきた。

「私がかわいいって思ったのは息子じゃなくパパの方なんだけどね」

歩きを止めてまじまじと私を見つめる司。

二人を追い越して振り返る。

「どうして私が駿の味方すると不機嫌になるのよ」

「駿にも負けるつもりはねェから」

「ママはパパのものだからな」

真面目に駿を見上げて司がつぶやく。

「僕のだもん」

「今は貸してやるよ。いらなくなったら返せよ」

「いらなくならないもん」

「あのねっ、ママは物じゃないからッ!」

幼児と本気で言い合ってるのは道明寺ホールディングス代表。

次元が低すぎ。

でも・・・。

こんな一時が幸せって感じる。

拍手コメント返礼

なおピン様

幸せの1歩手前からHAPPY LIFEの流れはほとんどが家族のお話で構成してたんですよね。

FIGHT!! にはいろんなトラブルも加えてますが根本は家族愛!

久しぶりに司の親ばかぶりを書いてみました♪