Happiness 8
忙しいからって結婚式を葵にまかせっきりにあきらがするとは思えませんけどね。
どうなるのかこの結婚式。
やっぱりF4プロデュース?
司に参加させるとめちゃくちゃになりそうな気がするのは私だけでしょうか?(^_^;)
*「どうしたの!!!」
喜ぶかと思った表情は俺を見て隕石が落ちてきたような驚きへと変わる。
「一之瀬さん書類を持っていくだけって言ってたのに!
って・・・ここどこよッ!!!」
「なんであきらがいるのッ!!」
久しぶりに会った彼氏に見せる態度じゃなくて動揺が隠せずにいる恋人。
「一之瀬にだまされたんじゃないのか?」
「一之瀬さんが私に嘘つく必要はないと思う・・・あっ!まさか!」
真面目に考え込む葵に笑いをこらえられなくなった俺。
「プッ!」
「俺がお前を驚かせたくて一之瀬に口止めさせた」
出張先に葵を来させるように一ノ瀬に手配をさせたのは3日前。
深夜に日本を発った葵は今朝の陽ざしに照らされて立っている。
ニットのシャツにコートを腕に持つ葵の横を髪も肌の色も違う外国人が半袖の薄いシャツで通り過ぎる。
真夏の南国の空の下には違和感たっぷりの葵。
「どこに行くか知らないうちにジェットに乗せられたんだから」
膨れた頬は不機嫌そうにそうつぶやいた。
「うれしくないの?」
内心は驚かれるより喜びを爆発させて俺に抱き着く葵を想像してた。
「うれしいのはうれしいけれど・・・どう見たって私だけ降り立つ場所を間違ってるような恰好!!」
「外国に連れてこられるなんて思ってもないからなんの準備しかしてないわよ」
まだ肌寒い日本から常夏の南国リゾートにわけもわからず連れてこられた葵の肩にはショルダーバックが一つ。
確かに迎えに来たのが俺じゃなかったら葵は卒倒してたはずだ。
悪戯が過ぎたか。
汗ばむ気候に不釣り合いな冬の装いの日本人は葵一人。
「確かにワイルド」
そう言って葵の腕をとる俺は機嫌のいい笑みが口元から消えずにいる。
取引先の社長と落ち合う約束が延びてできた貴重な時間。
日本に帰るより葵を呼び寄せた方が都合がいいと考えた俺に一之瀬はスンなりオフを認めてくれた。
「なかなか休めない社長に私からの一足早い御結婚のプレゼントですわ」
「オフの日程をプレゼントできるのは私だけだと自負しております」
軽やかに携帯の向こうで呟く一之瀬の語尾に♪マークがついてる気がしてしまった。
これからも俺は一ノ瀬には頭が上がりそうもない。
「行こう」
握った手のひらは素直に俺の手のひらを握り返す。
少し汗をかいてる葵の掌。
触れあうのは二週間ぶりだ。
「数日俺は休暇だから一緒にお前と楽しみたくって呼び寄せた」
「内緒にしなくても良かったじゃない」
少し愚痴った顔は空港を出て晴れ渡った青く澄み渡った空とまばゆい陽ざしに感化されるように明るくなる。
異国の風を感じるように大きく息を吸う葵。
もうすっかり機嫌は直ったようだ。
久しぶりに会った彼氏に不機嫌な態度をとる理由はないはずだ。
「なんだか見られてるね」
「それは葵の格好のせいだろう」
道行く人が振り返ってみてるのが俺にもわかる。
俺と視線の合った若い女性の熱いまなざし。
以前なら軽く笑みを返すところ。
全くその気の起きない俺は葵にべたぼれ。
「こんなところでもモテないでよね」
俺の手の中から離れたほっそりとした指先は俺の腕に絡まって身体を密着させる。
葵が俺を責めてるような感じじゃない。
その態度は私のものって主張されてるようで俺を喜ばす。
ほんのりと高揚した頬で俺を見上げる葵。
甘酸っぱい感情が体中を支配する。
アスファルトの道路で白い輝きを放つ長い車。
そのドアの横で制服に白い手袋をした運転手がゆっくりと後部席のドアを開く。
「もしかして、これに乗るの?」
「初めてじゃないだろう」
「それはそうなんだけど、いつもの車より大きくない?」
「こんな車に乗れるような恰好はしてないし・・・」
遠慮がちに呟く葵は自分の既製のニットとラフな装いながらも有名ブランドの装いの俺とを比べてる。
そんな心配をする葵が無性に面白い俺。
「いいから、乗って」
戸惑ったままの葵を車に押し込んでその横に乗り込む。
クーラーの効いた車内。
天井に埋め込まれたライト。
「すごっ!ミニバーまである」
きょろきょろと落ち着かない視線が車内をぐるりと動いてる。
夜空の星を全部集めてプレゼントされたような表情を見せたのは牧野と同じ反応。
ミニバーから取り出すシャンパン。
葵の目の前に並べたグラスにシャンパンを注ぐ。
少しピンクがかった液体に緩やかに泡が立ち上がる。
「喉、乾いたろ」
「確かにからから」
渡したクラスを一気に葵がのどに流し込む。
「おいしい」
ジュースみたいに軽く飲める代物じゃない。
赤くなった頬。
「酔うなよ」
呟きながらもう一度シャンパンを葵の空になったグラスに注ぐ。
「酔う前に服を何とかしないとな」
「なにも持ってきてないから下着とかも・・・」
真っ赤になった口ごもるような小さな声が「キャッ」と声をたてる。
車がカーブを曲がった瞬間にグラスからこぼれそうになる液体をかばおうとして葵の重心が揺れた。
その拍子に俺の腕の中にすっぽりと入り込む葵。
久しぶりに感じる肌の温もり柔らかさ。
「ごめん、・・・」
俺を見上げた葵に引き寄せられるようにキスを落とす。
上質のアルコールの味と香りを残す唇。
誘われるままに口内に滑り込む舌先。
何時もより強引で優しいキス。
ぬるい舌が絡まって秘めやかな音がした。
拍手コメント返礼
b-moka様
ありがとうございます。
こちらは大雨の被害はないですが、水害がひどいところありますね。
7年前の台風被害と思い出します。
家も浸かりましたが新車が浸かって廃車になっちゃったんですよね。
本当に天災はどうしようもないですね。
あきらと葵ちゃんはバカンスが楽しめるのか。
楽しむだけで終ったらつかつくに申し訳ない気もします。(^_^;)