春光の遥か 10

連載も少なったところでこのお話を再開です。

総ちゃんの隠し子騒動はひとまず落ち着いたところで次の事件はなんだろう♪

*

「寂しくなったわね」

空になったベビーベットを憂い気味に眺めていた母親がつぶやいた。

俺の子供だと疑われた赤ん坊は俺の留守の間に母子手帳や住民票に写真まで用意周到に添えられて祖母という人物が引き取りに来たらしい。

司を襲った相手とはどうしてもつながらなかった赤ん坊の身元。

子供のサイドからは簡単に預かっていた俺にたどり着くのは理解できる。

ほとんど数日前まで西門総二郎に隠し子の話題はテレビ、雑誌を独占してた。

落ち着きを取り戻したのはつい三日前だ。

俺の疑いもどうにかはれた。

ここまで騒がれたのはいったいなんだったのだろう。

しっくりこない。

「本当の孫が出来るのはいつの事かしら」

ため息交じりに憂いげな母親の表情は続いてる。

俺は子供が欲しいとも思ってないし結婚したいとも思ってない。

まだ25だぞ!

母親の結婚願望に火をつけるのが目的だったとか?

これが一番しっくりくる。

「こちらのお嬢さんなんて家柄も容姿もお似合いよ」

目の前に差し出される開かれた見合い写真。

「母さん、見合いなんてしなくても間に合ってます。いままで何人かの女性と付きあったこともありますから」

写真の中身も見ずに閉じて母親の方に押し戻した。

「胸がときめいたこともありますが付きあったらうざいだけの女性が多くて」

隙を見せればハイエナみたいに狙った獲物は逃がさないって態度で来られれば一気に冷める。

セックスだって愛情がなくても顔と体が好みなら十分イケる。

それ以外の時の女性の必要性は今のところ感じていない。

母親にはそのまま言えない俺の本音。

「司君も結婚したし、あきら君だって婚約したのに・・・」

「折角カッコよく生んでやったんだから総ちゃんもがんばりなさい」

母さん・・・

頑張れと言われてもこればかりはがんばっても結婚できるものじゃないと思いますよ。

自分に合った女性を見つけることの難しさ。

司に牧野。

貝合わせの様にぴたりと合わさる相手を見つけるのは難しいって感じてる。

いくら女性と付きあってもピンとこない俺。

一目で牧野を見つけた司。

俺には一瞬で相手に惚れるってことがどんなことなのか理解できない。

「ジュリアも可愛かったわよね」

「ねぇ、総ちゃんジュリちゃんにいつでも遊びに来る様に言ってくれない?」

ジュリちゃんて、いつからそんなに仲良くなったのか。

「僕がですか?」

「総ちゃんの事だから携帯の番号は聞いてるでしょう?」

それは確かに・・・

でもいつもみたいにナンパな気持ちで聞いたわけじゃない。

赤ん坊と一緒に現れたキャサリンとは連絡がとれる様にしておく必然性があると判断したからだ。

現に携帯番号を俺から聞いていまだにその携帯に連絡を入れてないただ一人の女性。

それにジュリアは俺のこと嫌ってた。

嫌われたまま別れたのは面白くない。

「分かりましたよ」

気が乗らない振りで母親には返事をした。

着物を私服に着換えて佇む大学の校門前。

ジュリアがこの大学に留学してるのは最初に聞いていた。

「やぁ、元気」

携帯を鳴らしてジュリアの声が聞こえる前に口を開く。

「この前はすいませんでした」

少しの沈黙の後に響く声。

警戒気味の声が無性に俺の闘争心に火をつける。

「今どこ?」

「大学ですけど」

「会えない?」

「えっ?」

「今大学に来てるんだけど」

校門をくぐって歩く先に携帯を握って耳に当てたまま立ち止まったジュリアが見える。

軽く手を挙げて合図を送る。

あっ・・・とつぶやく口の形。

そのままゆるゆると耳元から携帯が離れて胸元まで降りている。

「キャー!ウソ!」

「西門さん!」

俺を避けるように数メートル離れた先から上がる声。

数名のクループが出来上がって上がる声。

うれしげな声が上がる中に俺に気づいてもらえるように飛び上がって手を振る女子大生が見える。

これがいつもの女性の反応だよな。

その中でなんでいるの?的な困惑気味の彫りの深い顔立ち。

彼女の日本人にはない美しさはひときわ目を引く。

「静かなところで話せないか?」

ジュリアの前で足を止めた俺に後ろから悲鳴に近い声が聞こえた。

拍手コメント返礼

なおピン様

あはは、私にもジュリアちゃん影薄いんです。

まだ人物像の設定があやふやだからかな?

ここからしっかりとした人物設定が現れると思ったます。

みなさまにウケいられるかどうかでこの後のお話も変わってくる♪