ドッカン !! 4

モテモテでその上好意を寄せるのはいい男♪

本当にうらやましいのですがつくしちゃん。

これでいいのか?

いいんだろうなぁ(^_^;)

好きだと思う愛情が半分になればどれだけ楽になるのだろう。

「変な、虫がつかないように盾になってやるよ」

そう言ったのはつくしのためって言うよりも自分のためだ。

しょうがないって口では言いながら結局はこいつに構わずにはいられない。

無邪気に笑ってる表情にどうしようもなく魅かれてる。

彼女の周りは春の陽だまりの様に温かく、心の中まで明るく照らしてくれる。

物怖じしない真直ぐな瞳。

感情を隠すことなくくるくると変わる表情。

助けられていたのは俺の方かもしれない。

嫌なことがあってもすぐにつくしの傍では笑っていたような気がする。

大学の頃と変わらないつくしに再会できて喜んでしまってる。

ていうか、少しは変われ。

そうすれば俺も・・・

そんなに簡単に忘れられるのなら俺も苦労はしない。

目の前に現れたつくしは無邪気なままで擦れてなくて、どう見ても人妻には見えなくて。

ここでは一番年下ってこともあるが、どう見ても就職活動中の真面目な学生にしか見えない。

相変わらずの童顔は未だにセーラー服が似合いそうだ。

結局講義室に戻った後もつくしと並んですごして、そして今、向かい合って昼食を摂る。

「おいしい」

「いままでおいしい物をたくさん食べてたんじゃないのか?道明寺なら一流料理人も雇っているんだろう」

「あっ!ここで道明寺って名前を簡単にださないでくれる」

ご飯茶碗を片手に俺の鼻先に顔を突き出してキョロキョロと周りを気にする視線をつくしが送る。

キョドットしたつくしの表情を楽しんでる。

こういうとこがかわいいって思うんだよな。

「私には箸一つで食べる食事の方が合ってるの」

不満げに口をとがらせながらも箸は止まることなく動いてる。

「安心していいんじゃないか、誰も道明寺つくしだとは思いもよらないだろ」

500円の定食をおいしいと食べてるつくしはどう見てもレブの奥様には見えないと思う。

「あっーまた道明寺って言った」

箸を握ったままの拳がトンとテーブルに音をたてる。

「ごめん」

謝りながらもどうしようもなく口元が緩む。

「笑わないでくれる」

不機嫌そうにつくしがつぶやくのを見てもまた笑ってしまってる。

「ここいいかしら?」

つくしの横に座って食事のトレーを置いた女性。

首からかけたネームプレートには萩原の文字が読める。

「女性は少ないからよろしくね。牧野さん」

「あっ、よろしく」

「結構若いわよね?」

「肌もきれいだし、つるつるだし、おしゃれに興味ないの?」

「えっ?」

目の前のつくしは困ったような表情を作ってる。

チャラ男の次は女性らしさを強調してる女性。

目立たないつもりのつくしは結構な人目を引いてる気がした。

「もとは良さそうだから磨けば光るって思うんだけど・・・」

つくしの顎を持ち上げて右左に顔を回して食い入るようにつくしは見つめられている。

「私、女性がおしゃれに疎いのは美に対する冒涜だと思うのよね」

化粧ばっちり、ネールもしっかりと施して磨かれた指先の爪。

つくしが10倍は化粧に時間をかけてると俺も思う。

「私、こんなの我慢できないのよね」

「あっ!!」

眼鏡を取られたつくしは、俺に眼鏡を取られた時よりも狼狽してる。

「コンタクトがぜったいいわよ」

「返してください」

すんなりと取り戻した眼鏡はつくしの顔に戻る。

「私は今はこのままで・・・」

消え入りそうな声で背中を猫みたいに丸めてつくしが小さくなった。

いまさら隠れようとしても隠れようがないって俺は思う。

「あなたも、彼氏なら彼女がかわいい方がいいでしょう?」

「今でもかわいいって思ってますけど」

つくしの彼氏のふりをするって決めた俺はそれらしい態度をとる。

「彼氏って・・・」

俺と付きあうふりをするって自分から頼み込んだはずのつくしが驚いてどうする!!

「付き合ってるんでしょ?」

「・・・それは・・・でもどうして?」

不安げに俺を見上げるつくし。

確かに朝から今までつくしと俺は一緒にいるが、だからってすぐに恋人同士に見える甘さがあるとは思えない。

「ほら、さっき、見ちゃったのよね」

「・・・」

なに見たって目ん玉が引っくり返るような表情をつくしが浮かべてる。

ここは誤解させたままの方が最初の目論み通りでいいとタカをくくっていた俺もドクンと心音が一つなった。

さっきって・・・

まさか・・・

周りに人がいないことは確かめたはずだった。

自動販売機の陰でいちゃついてたでしょ」

「キスするならもっと人のいないところでしてよね」

「キスって・・・」

俺を見つめるつくしの顔からサーッと血の気が引いたのが見えた。