FIGHT!! 42

夏休みも残り1週間ですよ。

ようやくここまで来ました。

頑張ったな。

これも皆様からいただく温かい励ましのコメントと拍手・ランキングのプチのおかげです。

いつもありがとうございます。

このお話もあと少しで最終話となります。

もうしばらくお付き合いを願います。

*

「何やってんだよ」

「おい、急に立ち止まるな」

社員食堂のカウンターに並ぶ列の動きが、いきなり停電して動きを止めたエスカレーターみたいにピタリと止まった。

「イテッ!夢じゃない!」

自分で頬をつねったり、目をこする社員の見つめる先で注目を集める人物は納豆に手を伸ばす。

「納豆食べるんだ・・・」

その声はパンダが笹じゃなくクッキーに手を伸ばしたあり得ない組み合わせを見た驚きがある。

「噂は聞いたことあるけど初めて見た」

「俺も・・・」

数メートルの間隔をあけた後、ゆるゆると料理を選ぶ列は動き出した。

なかなか間隔が縮まらないのは、近寄りがたい雰囲気と、その珍しい姿に見入ってる二つの理由が考えられる。

「代表が結婚したてのころよくあったよね」

「そうそう、奥様をさがしてたって雰囲気で食堂に現れる代表」

「私も代表に必死で探されてみたいって思ったもん」

「そうそう、奥様を見つけた時の表情」

「あんなに熱く見つめられたら熔けるわよね」

「いつもクールな代表が、もうメロメロって感じがたまんなかったわよね」

これだからヤダッたんだ。

背中に感じる視線はどうしようもない恥ずかしさを全身から放逐できなくなっている。

「空いてるな」

気にもかけない呑気な声は、楽しげに頭の上から響いてきた。

「それは司のせいだと思う」

周りをキョロッと眺めて、社員と視線が合うたびに、済まなそうに頭を軽く下げるしかできずにいる。

「なにやってんだ?」

「社員の人びっくりしてるから・・・」

「初めてじゃないだろう」

「初めて見たって驚いてる表情の人もいるわよ」

「気にするな」

気にしてほしいのは司だよ。

言っても無理だと分かってるけど、この神経の図太さはどうも私には理解できない。

なぜか社員のトレーにならぶ料理が司のとダブっている。

「俺、納豆ダメなんだよ~」

トレーの上を眺めて嘆く若い社員。

司の手に取ったものが、サンプルのごとく自然に手が出たんだって理解できた。

昼ごはんまでこんな影響力があるって凄い能力だ。

一緒に社員食堂に来るって本当に久しぶりだ。

慣れていたつもりでも接待とは違う緊張感があることには違いない。

手を伸ばせば互いの料理に箸が付けられる距離。

こんな身近な距離で向き合って食べることって滅多にない。

「この紙切れのようなのってなに?」

ヒョイと私の皿に司の箸が延びてきた。

「切り干し大根、大根を細く切って天日干ししたものを料理してあるの」

「大根って、こうなるんだ」

チラリと司の視線が私の足元に落ちる。

「私の足と比べないでよね」

そこまで太くないからッ!

社員食堂には未だに司が疑問に思う料理が並ぶ。

それがどうも面白いらしい。

「行儀が悪くない?」

「手づかみで食べるよりいいだろう」

「舞や翼と同等にならないでよね」

しっかり箸で食べてると強調するように箸を数度開いて見せた司がそのまま自分の皿を通り越して私の皿から

メインデッシュのから揚げを掴んで口に放り込んだ。

「あッ!」

思わず上がった声。

残り1個だったのに・・・。

「そんな、悲しそうな顔するな、ほら」

司は自分の皿からトンカツを一切れ箸でつかんで私の口元まで運んできた。

「遠慮するな」

遠慮って言うより、周りから見つめられる『エ――――ッ』て、表情が気になってんの!

「ほら」

口元に強制的に押し付けられる衣の感触。

ここまでされたら拒否することもできず大きく口を開いて飲み込んだ。

「すげー 一口で食べた・・・」

ケラケラと機嫌のいい笑いが目の前に浮かぶ。

「本当に今日はどうしたのよ」

「なにが?」

「突然社員食堂に連れてきて」

「悪かったか?」

「お前と一緒の時間を長く過ごしたかったから」

「えっ?」

「会社を抜け出すよりここで食べた方が移動時間がいらない分ゆっくりできるしな」

「触れ合える距離で食事をするってあんまりないだろう」

スッと司の手のひら動いてテーブルの上に置いていた私の手のひらを包み込んだ。

逃げ出そうとした動きは簡単にそれを抑制して離れない。

いつものクールな表情が柔らかく動いて優しく穏やかに変わる。

そして口元に浮かぶ笑顔が眩しい。

「キャー」

「撮れた?」

「撮れた♪」

「わ~送って」

「待ち受けだね」

ウッ・・・

きっと今日一日でこの社員食堂の一コマが会社中に送信される。

だからやなのよッ!

私の知らないところで知らない女性が司の写真を待ち受けにして携帯が鳴るたびにそれを眺めるって、気分のいいものじゃない。

嫉妬してる。

そう言ったら有頂天に喜びそうな司が浮かぶ。

言えるかっ!

「なんか、機嫌が悪くねぇか?」

気が付いてるぞとでも言いたげな悪戯な表情を司が浮かべてわたしを見ていた。

最近司君つくしを手玉とってるような気がします。

つくしに翻弄されて右往左往する司が好きだったはずなんですけど・・・(^_^;)

オトナナ司がいいって方も多いんですよね。

どっちでいこう(^_^;)

楽しめそうだと思ったら応援のプチもよろしくお願いします。

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拍手コメント返礼

なおピン様

確かに終わりがなかなかないって言うのが本音です(^_^;)

駿君の入園からどんどんお話が膨れ上がってしまってますからね(笑)

いったん終わっても英徳でのつくしの奮闘記の御話は続きますのでご心配なく。

題名を新しくして小学校、中学校と3人の子育てとともに成長するつかつくをお届けできたらと思ってます。

パンダのくだりウケてもらえてうれしいです。

どの動物にするか悩んだんですよね。

サルにするか猛獣にするか・・・

出てきたのが笹を必死で食べてるパンだの絵とクッキーを持ってるパンダでした。

?を頭に付けたパンダが柵の向こうを振り返る構図が浮かんで消えなかったんですよね。

みかん様

道明寺司の恋愛指南書。

書けと言われても本人には書けないでしょうね。

ここはひとつ西田さんが執筆。

西田さんは観察日記が忙しかったか(^_^;)