DNA で苦悩する 1

このお話に対する期待感が半端なくて、プレッシャーを感じています。

ぼちぼちと行こうかなと思ってましたが、ここまではUPしておきますね。

駿君高校入学式の番外編を別館でUPしました。

『牧野家は道明寺で苦悩する』も別館でUP

*

「よっ」

席に座ってる僕に人懐こそうな笑顔で話しかけてきたのは校門で「おはよう」と声をかけてきたやつ。

一緒のクラスだったんだ。

なんの気負いもなく遠慮もない態度が好意的に僕の心の中に入ってきた。

「俺のこと覚えてない?」

こんなとこで知り合いに会えるって思ってもいない僕は一瞬ドキリとした。

僕に見覚えがあるっていうことは僕が道明寺司の息子って分ってる可能性もある。

それは僕の望んでる期待感が早くも夢と砕け散るって事だ。

「昔、一緒に花火をしたろう。君んちのおじいちゃんの家でさ」

牧野のおじいさんの家に行ったのはもうずいぶん前だ。

小学1年の夏休みに泊まった出来事は未だに鮮明に覚えてる。

ジャグジーじゃない狭いお風呂。

人の多さで泳ぐとすぐに人にぶつかって流れていたプール。

その時の浮き輪を付けたおじいちゃんをトドみたいだと笑った進おじさん。

小さな庭でバケツの上で花火をした夏の夜。

確かにその時、隣の家に僕と同じくらいの兄妹がいたっけ。

「蒼・・・君?」

「すぐ駿君だって分かったよ」

僕ってそんなに変わってないか?

成長するごとにますます父さんに似てきたって言われてるけど。

それが嫌でクセっ毛を隠すために短くした髪。

ますます上品になった。

類パパに似てる雰囲気があるって言った母さんを父さんは不機嫌そうににらんでいたんだよなぁ。

あれは僕のせいじゃない。

「高校で再会できるなんて運命だね」

すっと差し出した手を握り返して握手した。

時限のチャイムで席に慌てて戻った蒼君は真面目な顔で机の上の教科書を開く。

少し顔をあげて視線が合った僕に親しみのこもった笑いを蒼君は浮かべてた。

家も隣同士の僕たちはそんなに時間をおかずに蒼、駿と呼び合う仲になっていた。

意外なことに蒼は僕の両親のことについては何も気が付いてなかった。

クラスの自己紹介でも道明寺 駿という名前に反応を見せる同級生もいなくて、周りの僕を見る目も普通のそれと変わらない。

経済紙には出ずぱりの父さんも一般の高校生には興味をもたれにくいってことだ。

会社経営者の子息が多い英徳での知名度の高さが異常だったってことか。

教室での会話の大半が昨晩のテレビや芸能人の噂話。

ブランドものや海外の別荘の自慢話が飛び交わないのは楽でいい。

ただ・・・

ヤッパリ・・・

英徳と同じ現象に悩まされている。

「どの子?」

「ほら」

「キャー」

教室の窓やドアから覗きこむ姿が見える。

「おい、駿、今日は上級生も来てるぞ」

教室でおばあちゃんの作ってくれた弁当を食べてる昼休み。

学校で過ごす時間が経過するたびに見物人が増えていく。

「入学1か月で駿のことを知らない生徒はいないってどうよ」

入学式での新入生代表の答辞。

これがやばかった。

極力目立たない様にって思ってんだけど、断れなかったのは感激にむせぶおじいちゃんとおばあちゃん。

「頭がいいのはママの血を引いてるのね」

この場合僕の知能は父さんの方でないのかは微妙に気になる。

英徳高校に外部から入学できるものはそんなにいない。

親の力じゃなければ成績優秀って証明してるようなものだ。

それが自慢だったっていうのがおばあちゃんの口癖。

「一年生代表 道明寺駿」

そう読み上げた時の緊張感は半端じゃなかった。

バレタラどうするその一点だけの恐怖だったんだだけど。

頭を下げて壇上から降りるときに感じた視線はそのまま教室の外に引き継がれてしまってる。

「迷惑なだけだよ」

「贅沢な奴」

「良ければ代わってやるぞ」

「代われるもんなら代わってやるよ。でもな俺はお前メッセンジャーの扱いって知ってるか?」

僕が受け取らないって知ってから頼まれても手紙を蒼が受け取らない事は知っている。

「嫉妬してるから」

「意地悪。性格わるい」

そんな陰口をたたかれても動じない蒼。

だから信用できるって思ってる。

「アッ、卵焼き食べてる」

箸を動かすたびに聞こえる実況中継。

流石に食欲は無くなるが、弁当を残すとおばあちゃんは口に合わなかった?って悲しそうな顔をするし、残すなって母さんのもったいないって表情も浮かぶ。

「ウインナーになりたい~ って声が聞こえてきそう」

そう言った蒼は僕の弁当箱からウインナーを一つつまんで口の中に放り込んでニンマリ笑った。

「部活は入らないのか?」

「やりたいものないしな」

「駿が部活はじめたら練習に支障が出そうだし、確かに放課後は別なことに使った方が利口かもな」

「僕はやりたいことがある」

「何やるの?」

「バイト」

僕の返答に蒼は意外そうな表情を浮かべた。

覚えてらっしゃるでしょうか?

『駿君の家族日記』でちょこっと登場した牧野家の隣人。

蒼君と凛ちゃん。

この二人が駿君にどう絡んでくるかがお話のカギとなる予定です。

楽しめそうだと思ったら応援のプチもよろしくお願いします。

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拍手コメント返礼

Gods&Death様

そちらは台風の影響はいかがでしたか?

こちらは未だに雨が時折強いかな。

入学式の御話はちょこっと別館でUPしてます。

蒼君の容姿かぁ・・・

それはいずれまた♪

ちゃむ様

思ってました?

うれしいな。

そうなんですよね。

名前いろいろ考えてましたもの。

でもまだ苗字がなかったような気がします。

中途半端ですよね。(笑)

妹ちゃんはどんなタイプに成長してるのか?

意外なイメージを考えてるんですけどね。

b-moka

覚えてるとお返事いただいたの今日は5人目です♪

うれしいですね。

三者面談・・・

駿君は司には来てほしくないでしょうね。

目立つだろうな。

ゆう様

ありがとうございます。

どんなバイトをさせるか悩んでるんですよね。

やらせてみたいバイトって有ります?

ご希望があればリクエストお待ちしています。

あさみ様

花火をしたりかき氷の場面も書いた記憶があります。

もっと夏休みを牧野家で過ごしたとしたらどうなってたんでしょうね。

ひと夏の思い出の話もいっぱい盛り込みたかった気がしますが、もう遅いかな(^_^;)