FIGHT!! 43
呑気に二人で社員食堂でべたついてる場合じゃありませんよ~
茶々入れるほどの事件も今から投入する余裕はありませんけどね。
*「楽しい昼食だったようですね」
つくしと別れて戻った最上階執務室。
部屋に入った俺の真正面で皮肉ってる能面な顔。
暗闇で観たらこの俺だって心臓に悪い。
「時間には戻ってきたんだから問題ねえだろう」
突然予定をすっぽかしてなにを言うみたいな目つき。
「あいつが、甲斐とこそこそと何かやっていたから気になっただけだ」
別にしなくてもいい言い訳をしゃべらされてる。
「会社中のパソコンにメールが送信されてます」
ご丁寧にプリントアウトしたLサイズの写真を西田から見せられた。
自分でも照れくさくなるよな柔らかな笑みを浮かべる横顔。
熱い視線を送ってるのは目の前で社食を頬張るつくしのはず。
でもその姿はしっかりレンズの中から外されてる。
「会議中もこんな温厚な表情を見せていただだいたらピリピリとした余計な緊張感が生まれなくて済みそうですよね」
一呼吸置いたところで「練習しますか?」と西田が呟く。
確かに予定してた業者との昼食会をすっぽかした俺が悪い。
でも俺じゃなくてもほかの奴で対応がきく程度の相手だったはずだ。
西田は俺が素直に非を認めることを望んでるわけじゃなく妥協と譲歩強いる。
侮れない最強の秘書。
「今日は帰りが遅くなります」
ほらな。
しっかり仕事を入れている。
俺がつくしと過ごした時間の代わりに数時間の拘束を強いる。
妥協と譲歩する余地も残ってねぇよな。
「わかった」
不満げにな俺の声に西田が満足してる感情がしっかり口元に読み取れる。
西田の筋肉の痙攣程度の小さな変化も読み取れる俺って・・・。
実をいえばつくしより西田といる方が長い付き合いの成果か?
そんな成果は欲しくないけどな。
俺のプロマイド的な笑顔の写真を西田がスーツの内ポケットにしまうのが見えた。
「おい、それどうするんだ?」
「代表の写真ですか?」
とぼけた顔がムカつく。
「お前が持ってても意味ないだろう」
俺の問いに答える代りに西田が内ポケットから写真を取り出してジッと見つめてる。
なにを考えてるのかわからない真面目な顔が視点を少しも外さず見てる俺の写真。
へんな気分つーか・・・
西田に限ってそっちの趣味はないよな?
こんなドクンと心臓がなみ打つ焦りは初めてだ。
背中にツッーと流れる汗。
視線をゆっくりと俺に向けた西田にビクッとなった。
「代表がつくし様とケンカしたときにつくし様に見せる使用法」
何時もの予定を読み上げるような高揚のない声。
は?
西田には似合わない冗談じゃねぇの?
「見せてもどうにもならないだろう」
西田の代わりに俺の感情が声を荒げてる。
「代表にこんな表情をさせるのはつくし様しかいません。私からこの写真をつくし様に渡したらつくし様のケンカのテンションも下がりそうじゃないですか」
見せられたら俺の方もすげ~恥ずかしくなるかもしれない。
それはよせ。
言葉の代わりに嫌だと西田を凝視。
大体最近は会社でつくしと言い合いはしてねェだろうがぁぁぁぁ。
「そうですね」
そうですねって急に考え込むな。
俺はそれに自分の考えてることを声にしてねぇぞ。
「代表よりとつくし様の明るい笑顔の写真の方が効果はありそうだ」
おいッ!
あいつの写真もあるのかよ。
対面する俺は削除されて俺だけに向けてるはずの甘ったるい表情。
クスッと照れてる表情。
ぷくっと膨れて弾ける様に笑うあいつ。
感情のままにくるくると変わる表情は出会ったころと変わらない輝きを放つ。
ほかの奴に見せられるか!
「今回は緩んでる代表の写真しかなくて残念です」
ゆっくりと下げた頭をもとの位置に戻しながらくるりと西田が身体をまわす。
コツコツと響く足音は満足げに聞こえてくる。
パタンと音をたてて閉まるドア。
ククッと背中で笑う西田を見た気がした。
楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
玲蘭様
アメバーでもこちらでも宜しくお願いします。
captain様
司と西田さんのやり取りはずいぶんとドラマからも離れてますが、日本版だとこんな関係もありそうな気がしてしまいます。
幸せをシミジミと感じているのは西田さんだったりして(*^_^*)
おかゆ様
司目線の西田さんも結構な面白さがあると思っています。
つくしの視線からいったらまた別の面白さも加わるのでしょうか?
なにを考えてるかわからないところが西田さんの味なんですよね。