FIGHT!! 44
久し振りに家族団欒の場面をお届け♪
駿君と舞ちゃん翼君の存在を忘れそう。
このお話の始まりが入園式だったことも忘れてしまいそうな気がします。
*はー
気が抜けた。
阿賀野さんから連絡を受けたのは数分前。
携帯を握りしめていた左手の力もため息とともに抜けた。
「ごめんなさ~い。全部あたしの勘違いだったの」
天井を飛び越して宇宙に飛び出しそうな嬉々とした声。
「主人たら私に内緒で結婚式をもう一度挙げるつもりだったんですって」
「花嫁の君は世界で一番輝いていたって言うのよ」
この場合は・・・
「良かったですね」
「うらやましいです」
どちらかを言うべきなのだろうが声が出ない。
つーか私が口を挟む間はほとんどなかった。
「私が頼んだことは忘れてくださいね」
悪気のない声で携帯は途切れる。
駿が英徳にいる間は阿賀野さんと付きあわなくちゃいけないんだよね・・・。
好感をモテないほかのセレブな奥様よりは阿賀野さんは好きなんだけどなぁ。
ヤッパリため息が漏れる。
疲れた顔を一瞬でクスって頬をほころばせてくれるのは無邪気に遊ぶ子供達。
「がんばれ~」
駿のあどけない声が部屋いっぱいに広がった。
ソファーに上ろうと右足を必死に上げてるのは翼。
ズルッ。
一度落ちかけた足を諦めもせずもう一度上にあげた。
ずり下がるのを防ぐように駿の小さな手が駿の靴をささえてるのが見えた。
その横で翼を真似するように舞が左足をソファーの上に乗せようと試みている。
たっぷりと水分を吸ったとわかる少し下にぷっくりと垂れ下がった紙オムツが錘になって邪魔してるのが分かった。
そろそろオムツを替えなきゃね。
嫌がって逃げるんだよなぁ、これが。
「舞、大丈夫?」
首を横に傾けて舞を覗き込むように司譲りのくるくるの髪が動いた。
駿がお兄ちゃんらしく真面目に二人の世話をしてるのが微笑ましくてかわいすぎる。
もう♪
3人とも食べちゃいたいよッ!
歩けるまで一歩手前の双子は全く目が離せなくなった。
ハイハイで破壊の限りを尽くして部屋の中を動き回ってる。
押し倒されたごみ箱。
散乱する丸まった紙。
ごみ箱の中も拾って口にして困るようなものは入れてない。
ごみ箱も今はごみ箱の役目を果たせないのになぜ置いてあるのか。
無駄なものはごみ箱だけじゃないけどね。
大体一番の無駄はこの道明寺邸の広さなんだからッ。
門をくぐっても近づかない玄関。
親子五人で暮らすには3LDKでも十分過ぎる。
清掃会社を入れないと掃除が終らない家が一番無駄な気がする。
普通の暮らしに憧れる。
朝起きたら子供たちが枕の周りを這いずり回ってて、司の顔の上に舞のオムツを付けたおしりがのっかってる光景。
「朝ごはんだよ~」って起こす生活。
牧野家の生活がそのまま。
そんな生活が懐かしくってうらやましい。
司と子供達とではまだ未体験ゾーン。
「あっ!」
思い出に浸っていた私を現実に引き戻す駿の叫び声。
ソファーに上りきれなかった舞の落ちそうな体勢に気が付いて駿が声を上げた。
差し出した両手は左右いっぱいに開いても舞の身体を支えるにはまだ小さすぎる。
私のフォローも間に合わず、持ちこたえられなかった駿の身体がトンと絨毯の上にしりもちをついた。
その上にしっかり舞が乗っかってる。
分厚い高級感あふれる絨毯は贅沢なクッションと言えなくもない。
ちょっと転んだくらいなら怪我もしないってわたしも安心してしまってた。
「わーん~~~」
鳴き声を上げたのはソファーの上に無事にたどり着いたはずの翼。
それを追う様に駿と舞が鳴き声を上げた。
3つの幼い泣き声の合唱
いっぺん泣き出すとそれ以上に騒ぎが大きくなる。
「「「どうかされましたか!!!」」」
屋敷にいる使用人がすべてあつまって来るんだもん。
防音設備もしっかりしてる造りのはずなのに子供の声には敏感な反応を見せる顔がそれぞれに心配そうにやってくる。
「何でもないから」
私の声に答えるように後ろから聞こえた低いククッと漏れた低い笑声。
えっ?
帰ってきてる?
「相変わらずにぎやかだな」
視線がつながった先でゆっくりと目を細めて優しげな表情が見つめてる。
「あっ!パパ」
駿の泣き顔が笑顔に変わって司の足に飛びついた。
涙目の舞は指をくわえてじーっと駿を抱き上げた司を見てる。
翼は泣いたことも忘れてるようにソファーの背もたれ登頂に挑戦を見せ始めた。
それは危ないって。
止めるように抱き上げた私に翼は嫌だと抵抗を見せる。
「もう、危ないの!」
それでも私の腕から逃げ出そうと肩を抑える翼の小さな手のひら。
この頑固さは兄弟の中でもピカイチだって思う。
絨毯の上に座り込んでいた舞が司に両手を差し伸べて、司に抱っこをせがむ動作をみせる。
これ以上にないって両眉が下がった甘い表情を浮かべる司。
オーダーメードのスーツが汚れることなんてお構いなしで絨毯の上に片膝をついて、駿を抱いてる反対の腕ですぐさま舞を抱き上げた。
「今日は遅いんじゃなかったの」
西田に残業を押し付けられたって不服そうに連絡があったのはしっかり覚えてる。
「昼間の時間じゃ足りなかったからな」
「えっ?」
「子供達よりお前を抱きしめたいんだけど」
目の前に迫るのは甘いマスクに浮かぶワイルドな笑み。
「まだ、寝る時間じゃないわよ」
司がほんの少し口角を上げて作るささやかな笑顔にクッときてる単純な私。
心得たようにまだそばにいたお手伝いさん3人が動いて子供達を抱き上げて部屋に私たち二人残された。
この気遣いは・・・困る。
体中の体温が一気に上昇しそうだ。
「教育ができてるな」
部屋から去っていく子供たちを眺めながら、ニンマリとした満足そうな笑み。
私の恥ずかしさなんて全く関知してない態度。
別に教育はしてないからッ!
気を利かせすぎられるのも困る。
「キスしてくれねぇの?」
真直ぐに私に向き直った傲岸不遜がぴったりの憎たらしい表情が鼻先に突き出された。
謙虚さが微塵もないほとんど命令調の声。
「しない」
「ひっ!」
無理やり持ち上げるように大きな掌に掴まれた頬。
グッと向きを変えられた顔に覆いかぶさるような強引さで唇を塞がれた。
こちらは『If』では気の毒な司君にはうらやましい展開を♪
届けられるのか・・・(^_^;)
続きは早めに☆マークでと思ったら催促のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
captain様
そう来なくっちゃってお星さま♪
週末に入る前に準備しないとアップできなくなる(^_^;)
おかゆ様
幼児期っていろんな微笑ましい場面があると思うのですが、遠い昔ですっかり忘れてしまってます。
思い出せ――― とがんばりながら書いております。
yoppy 様
お久しぶりです♪
4人目のご懐妊~
4人と言わずいくらでも♪
つくしちゃんの身体が持つかしら・・・(^_^;)