DNA で苦悩する 10

*

「お兄様、憂鬱そうですね」

よそ行きの表情で舞が僕を覗き込む。

そのすました物言いは似合わない。

「おにいちゃん、何むくれてるの」

家族だけならこんなところだろう。

外ではすこぶる上品に装う。

父さんたちはどこかで見たことのある政治家や何処かの会社の重役らしき人たちで人垣ができてしまってる。

「相変わらずの人気者だよね」

「あれは人気とは言わないだろう」

人の雑音が遠くで聞こえる壁に背を持たせて興味のない態度でそれを眺める。

「舞は楽しそうでいいよな」

「だって、勉強しなくていいし、おいしい料理は食べれるし、フルーツもおいしいよ」

それ・・・

どう考えても道明寺財閥の一人娘の反応じゃないぞ。

「ハイ」

空になった皿を舞から渡される僕。

「何か、持ってきてあげる」

持ってきても舞が全部平らげると思うけどな。

苦笑気味に舞の後ろからついて行く。

今日は舞の保護者の方が気楽かもしれない。

「結局、翼の奴逃げたな」

「違うよ、あきパパと一緒に来るって連絡があったから」

舞の左手の皿の上にはローストビーフ、右手の皿にはケーキ。

その組み合わせじゃ胃がもたれそう。

小学校の頃みたいに肉にぱくついて振り向かないだけ少しはオトナになったか?

「牧野そっくりだな」

ククッと笑みを含む声。

「あっ!」

舞の髪の毛をクシャとなでたのは総パパ。

類パパは舞から右手の皿を受け取ってる。

「駿、また背が伸びたな」

にっこりとほほ笑むあきパパの横には葵さんが微笑みを浮かべてる。

「兄貴、暗くないか?」

ニンマリと笑ってるのは翼。

その翼の横に並んでるのは同じような背丈で父さんたちに並んでも見劣りしない目鼻立ちの整った顔立ちが人目を引いている。

美作 佑(タスク)

舞と翼と佑は英徳の中等部に通う同級生。

「おまえと違って落ち着きがあるんだ」

「相変わらず二人でつるんでるんだな」

久し振りに仲がいい僕ら4人がそろった。

一斉に僕らのいる場所がこの会場の中心になって艶やかな雰囲気に変わった。

それは・・・

僕らじゃなく父さんたちまで集まってきたからに他ならない。

F4の華やかさは伝説じゃなく今も健在。

見惚れて頬を染める大人の女性がため息を漏らす。

大人の色気に当たられてないのは母さんと葵さんの2人だけ。

この二人が一番すごい。

*

「駿、高校生活はどうだ?」

「父さんがSPをつけなければもっと楽しくなるずなんだよな」

「学校の中まではつけてなかったぞ」

総パパに言い訳するみたいに父さんがムキになる。

「どこの親が高校生にSPつけるのよ」

こいつ!

母さんの声に三方向から息の合った視線が父さんに注がれた。

それがどうしたって表情で、父さんは完全に開き直って尊大な態度に変わった。

日本経済界をになうTOPの会話がこれって・・・

周りは絶対思ってない。

クラッシクの生演奏が流れる会場。

タキシードの正装に色とりどりのイブニングドレス

招待客は皆それなりに着こなしてる。

でも一番優雅にみえるのは父さんたちで艶やかさはスターのオーラを放つ。

そこだけがスポットライトを浴びて宙に映し出されたような華やかさ。

目立ち過ぎだ。

傍にいると僕らも目立つ。

だから近づかなかったのにッ!!

「駿、逃げても無駄だぞ」

「お前が一人でいても目立つし、興味も持たれる。忘れるなよ」

総パパとあきパパの2人に囲まれた。

確かに・・・

はじめから成人前の若い子がちらちらと僕に視線を投げるのは気が付いている。

父さん譲りの容姿と道明寺の御曹司ってだけで注目されるのは辟易してる。

それはいつものように無視を決め込む。

少しでも相手をするとその子につながる親の目の色が変わるから気が重くなる。

気が付かない振りで素通りが一番な安全策だということに気が付いたのは去年あたりから。

「もったいないぞ。遊ぶなら今!」

総パパとあきパパの武勇伝は知ってる。

遊ぶってことがどんな意味を持つかも。

葵さん一筋の今のあきパパから想像もできないけどね。

「あっ、司と牧野が親ならしょうがないか」

「あいつら、手をつなぐのにも、もたもたしてたからな」

二人の話は父さんたちから聞く昔話とはまた違った面白さがある。

「俺たちの清らかな恋愛をお前らが語るな」

冷ややかに聞こえた声が二人から僕を離した。

「司、おまえが清らかって・・・似合わねェーーーっ」

父さんたちの結びつきって理想だって思える。

小さいころから一緒で・・・。

信頼し合っていて・・・。

自分のこと以上に相手を理解しいて・・・。

今を楽しんでる。

父さんをからかうことが出来るのはきっとこの3人だけだって思う。

父さんたちの緊張が解けて素の表情が見えるこの瞬間が楽しくてしょうがない。

僕と蒼はどこまでの信頼を築くことができるのだろ。

今、一緒に蒼がいれば意外とこのパーティーも楽しめるかもしれない。

隣にいる相手に蒼を浮かべる僕って・・・

パパ達に知られたら笑われそうだ。

やっぱ司の遺伝とか言われて・・・

手に持ったグラスを口にふくんで微苦笑。

なんとなく・・・視線を感じて顔を上げた。

「あ・・・ゆ・・かわ?」

ドキッとなった心臓。

確認するように目を数度指でこすった。

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拍手コメント返礼

captain様

いよいよ鮎川さんの正体が~~~

分るのかな?(^_^;)

今週のVS嵐見ましたよ。

司君居ましたね。(笑)

CMの天パの赤ちゃん抱いてるところは思い切り想像してます。

それを二次につなげる私も相当キテます。

いえいえ。

こちらこそいつも温かいコメントありがとうございます。

おかゆ

美作家の長男が登場するってことは、そうなんですよね・・・。

あきら&葵のお話がそこまで続くという期待ですよね。

飛ばしちゃだめですか?(笑)

子供何人にしましょう。

ひつじ様

ドンぴしゃでした?(笑)

実はどうするか最後の数行まで迷っておりました。(^_^;)